おばあちゃんのにわ

  • 偕成社
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本棚登録 : 218
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (41ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784034253908

作品紹介・あらすじ

数々の賞を受賞した名作『ぼくは川のように話す』のコンビによる心温まる絵本。著者であるカナダの詩人、ジョーダン・スコットの祖母との思い出がもとになっています。ポーランドからの移民で、あまり英語がうまくしゃべれないおばあちゃんと「ぼく」は、身ぶりや手ぶりで、そして、さわったり、笑ったりして、いいたいことを伝えあいます。言葉にたよらない二人の親密さを描くシドニー・スミスの情感あふれる絵が、懐かしい記憶を呼びさまして胸を打ちます。

ぼくのおばあちゃんは、もとはニワトリ小屋だった家にすんでいる。毎朝、お父さんの車でおばあちゃんの家にいくと、おばあちゃんは庭でとれた野菜をつかって、朝ごはんをつくってくれる。長いあいだ食べものがなくてこまったことがあるおばあちゃんは、ぼくが食べこぼしたオートミールをひろいあげると、それにキスして、ぼくのおわんにもどす。
雨の日には、おばあちゃんはゆっくり道を歩く。それはミミズをつかまえるため。ぼくたちは、つかまえたミミズをおばあちゃんが野菜を育てている庭にはなつ。いつも、二人でそうしていた。おばあちゃんがあの家を出るまでは……。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、以前読んだ、父と息子の温かいやり取りが印象的な「ぼくは川のように話す」と同じ、カナダの詩人ジョーダン・スコットと、画家シドニー・スミスによる、スコットの祖母との思い出を元にした絵本です。

     内容は、素朴でささやかなものでありながら、後からジワジワと胸の奥にポッと温かな火を灯すような、「ぼく」と「おばあちゃん」との、これまでの関係から築き上げてきたであろう、その信頼性の高さを感じさせる描写に胸を打たれたのは、スミスの絵による、まるで映画を観ているようなドラマティックな展開や、そこでの思いを絵で伝えるために、様々な視点から切り取ったカット割りもあるのだと思う。

     それは、まだ夜明け前の暗い中を車に乗り込もうとする、ぼくと父の扉絵から既に物語の世界に引き込まれ、奥付を経た後の物語が始まる見開きでは、子どもが描いたような絵に驚いたが、それは次の見開きで、車の中でぼくが眺めていた、おばあちゃんに渡す為に二人の絆を描いた、ぼくの絵であることが分かり、こうした細かい点からも、ぼくのおばあちゃんに対する思いが、ひしひしと伝わってくる。

     また、スミスの描写で特に印象深いのは、他の方々も書かれているが、光の表現の美しさであり、それは二人を神々しく照らす表紙の絵や、窓を通しておばあちゃんの家のキッチンを明るく柔らかく照らす絵に加えて、雨の場面の、滲むように反射して映し出される水たまりの映像に宿る淡い光までと、様々であり、そのいずれもが、まるで温度も一緒に感じさせるような確かな温もりを持って、読み手にも伝わってくる、そんな臨場感の凄さを感じさせる。

     そうした凄さは、おばあちゃんの家の中の描写にも感じられて、元はニワトリ小屋だったそうだが、そんな雰囲気は微塵も感じさせず、キッチンの場面の絵だけでも、おばあちゃんの日々の生活の様子がありありと目に浮かんでくるような、たくさんの物で満たされた、それら一つ一つを、まるで実際の写真を見ながら忠実に描いたような臨場感の中、朝日に照らされたおばあちゃんが、料理をしながら鼻歌を歌っている光景には、確かな実在感を伴っているようであった。


     二人の間には、ほとんど会話らしい会話はなく(あっても、ぼくが質問するときくらい)、それはポーランド出身のおばあちゃんが、あまり英語を喋れないからでもあるのだが、言葉が無くとも確かに心が通い合う様子を実感できたのは、その何気ないしぐさであったり、より確かなのは、おばあちゃんがぼくのほっぺたに触れたりといった、お互いの温もりを伝えあい、お互いの存在を感じあうことなのだと思い、やがてはそれが、二人で共同作業をすることが好きになることへと繋がっていく、そこでの二人の柔らかい微笑みには、もはや言葉など無くとも確かに感じ合える、慈愛を纏った光に包まれたような神々しさが漂っていたのであった。

     しかし、そうした思い出は、おばあちゃんがぼくの家に来る前のことであり、おばあちゃんの家があったところには、今は大きなビルが建っていた。


     物語の終盤を読んでいたら、ジャン=フランソワ・セネシャルの絵本、『ぼく、いいたいことがあるの』を思い出し、家族間に於いて、何かを継承するという話は聞くけれど、それは無意識にやりたくなるような、心からの思いがあってこそのものだと思い、では、何故やりたくなるのかといえば、それはやはり好きだからなのだと私は思い、そうすることで忘れたくない思いの強さには、その人が、いかにかけがえのない大切な存在であったのかを、ありありと映し出しながらも、それが相手にも伝わるというのは、きっとこの上ない幸せなのであろうことを、終盤の本当に文章が無くなった、一連の流れからも感じられて、そこには二人のこれまでの絆と、これからの絆を、ゆったりとありのままに描いており、また、ありのままであるからこそ、その偽りのない、お互いの確かな感情の表れに胸を打たれるのであろう。

  • Jordan Scott
    https://www.jordanscottwrites.com/

    Sydney Smith
    https://www.sydneydraws.ca/

    翻訳者の部屋から
    https://haradamasaru.hatenablog.com/

    おばあちゃんのにわ | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784034253908

    • 猫丸(nyancomaru)さん

      クリーンヒット『おばあちゃんのにわ』 | 教文館ナルニア国
      https://onl.sc/aEbeNhg

      クリーンヒット『おばあちゃんのにわ』 | 教文館ナルニア国
      https://onl.sc/aEbeNhg
      2023/07/03
  • おばあちゃんと孫のお話。
    おばあちゃんはポーランドに生まれ
    僕とは言葉があまり通じない。
    二人の間には言葉はないけれど
    絵本からぬくもりがつたわってくる。

    一人暮らしのおばあちゃんのところに
    朝、預けられて過ごしていた時のこと・・・。
    おばあちゃんに学校におくってもらい
    迎えに来てもらっていたこと。
    雨の日のみみずとり、
    畑を大事にしていたおばあちゃん。
    ごはんをこぼした時のようすなど。
    いたるところに
    おばあちゃんの手のぬくもりが感じられる。

    今はおばあちゃんの家はない
    ぼくの家に住んでいる。
    ぼくの隣の部屋でねている。
    毎朝オートミールとリンゴを持っていく。
    おばあちゃんがしていたように
    落ちたリンゴを拾ってキスをしてお皿にもどす。
    ミニトマトを植えた鉢。
    ミミズをとって土に入れよう。

    言葉はなくてもおばあちゃんの愛情が
    生き方が。引き継がれていることを
    感じられるあったかい絵本でした。

    雨の中ミミズをとりに行った
    男の子を窓から見ている
    おばあちゃんの横顔がとても愛にあふれている。
    素敵な絵。

  • ババ(ポーランド語でおばあちゃん)と孫の男の子の思い出。戦争で苦労したババ。1つ1つの動き、特にミミズの部分が印象的。漂う哀しさや寂しさの中でも、彼にちゃんと引き継がれているのが素敵。

  • あるラジオ番組を聴いてこの絵本を知った。作者ジョーダン・スコットのポーランド移民だったおばあちゃんとの子供の頃の想い出を、シドニー・スミスが光を効果的に使い、作家の心象風景の断片を切り取って力強く描いている。

    英語のタイトルは『My Baba’s Garden』、babaとはポーランド語でおばあちゃんという意味だそう。おばあちゃんはあまり英語が得意ではなく、身ぶり手ぶりで伝えあったとか。人が心を通わせ合うのに言葉はそんなに重要ではないのかも。そのような体験を持つ作者が後年詩人という職業就いたのは何だか感慨深い。

    この絵本に関心をもった理由は、挿し絵の素晴らしさは勿論、おばあちゃんがポーランド移民と聞いて。先に読んだポーランド人作家オルガ・トカルチュクの『昼の家、夜の家』の不思議な世界に魅了され、絵本の中にもその魅了されたものを見つけたかったからだと思う。
    トカルチュクの絵本『迷子の魂』の挿し絵も素敵だけど、シドニー・スミスの絵が訴えかけてくる力強さは半端ない。ほとんどは図書館で借りて読むが、本書に限っては書店でひと目見て躊躇なく購入。自分の中で『昼の家…』の不思議な世界と、おばあちゃんの作った小さな世界が繋がったと感じたため。
     
    スミスの文章がない絵本『おはなをあげる』という作品も必見!

  • 自然な光と、優しい色合いが良くて、じっと絵だけ見てていたくなった。

    文字数は多くなく、書かれている内容も難しくない。

    しかし、どうしてババが食べ物や、暮らしを大切にしているのか、ぼくの家に来てからのぼくとのやりとりなどを含め、その裏はとても深い話だ。

  • おばあちゃんとぼくの、言葉を介さない、穏やかで温かい時間が伝わってくるよう。
    素敵な絵本だった

  • テーマ 啓蟄 で読み聞かせ 中学生にも◯

  • まるで写真のようなのに、全然そうじゃない不思議な絵。すごく好きな絵。

  • おばあちゃんとの静かでやさしい思い出。
    シドニー・スミスの絵の光の表現がとても素敵。

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著者プロフィール

1978年生まれ。カナダの詩人。
2018年、これまでの業績に対してThe Latner Writers’ Trust Poetry Prizeを受賞。シドニー・スミスとともに、『ぼくは川のように話す』によりシュナイダー・ファミリーブック賞、ボストングローブ・ホーンブック賞を受賞。

「2023年 『おばあちゃんのにわ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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