ヒルベルという子がいた (偕成社文庫 2093)

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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035509301

感想・レビュー・書評

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  • 河合隼雄全対話の7巻目(物語と子どもの心)の中の 「河合さん と ヘルトリングの対談」を読んで「ヒルベルという子がいた」を読みたくなりました。
    字が大きいので2時間ぐらいで読めます。読んでみると、なかなか奥が深い物語でした。
    ヒルベルは高望みしずぎたのでは?、自分の置かれた環境を甘受し、周りの空気を読んで行動すれば、それなりに生活できたはずです。
    はずなのですが、私の、自分の人生を振り替えってみると、現状に甘んじて生きるのはなかなかむずかしかった、どうしても向上心?とかの名のもとに失敗を修復しようとしてリベンジしてしまっていたし、そうすると、また、ちがう高度な失敗がおこって、それが繰り返されていた、それが私の人生だったかもしれません、いや、実にそうでした。
    だれでもそうですが、ある程度の幸福では我慢するのはみじめで、劣等な人生に思えてきます、そうです、競争に勝つことが目標なんです。
    しかし、私はヒルベルくんに言いたい「君は、得をする生き方を進むのが当たり前だと思っているかもしれないが、そうじゃないのかもしれないよ。だって、思い出すと、君の不幸は他人と比較してしまうところからはじまっていないかい?」
    これは自分自身への後悔の念からの言葉でもあります。

    この2002年改訂版には、河合さんの解説が付属しています。これは飛ぶ教室1983冬号に掲載されたもので、「子どもの本を読む」1985にも載っています。

  • ヒルベルには、ほんきで心配してくれる人が、だれもいなかった。そして、ほとんど施設や病院でばかり、くらさなければならなかった。いっしょに遊んでくれる子どもは、ひとりもいなかったし、信用してくれる人もいなかった。だからヒルベルは病気だったんだよ。

    なんと切ない話でしょう。

    ヘルトリングさんは「子どもにわが家を!」とおっしゃっいます。「わが家」とは、子どもがいざというときに逃げこめるところ、そして心底くつろげるところ、つまりアット・ホームな場所のこと。

    私たちはみんな自分のことで精一杯。
    でも、なんとか、「わが家」に出会えない子どものいない社会にしたい。

  • 河合隼雄氏の読後感想もはさまれており、考えさせられる本でした。ヒルベルのような子がいる、ことを考えるだけでよい、と河合氏も書いておられるが・・・。

  • 「ヒルベルは出産の時脳に受けた傷のためか、時折、原因不明の頭痛や発作を起こし、言葉もうまく話せません。父親は行方不明で、母親はたまにヒルベルの暮らす施設を訪れてくれるけれど、一緒に暮らそうとは言ってくれません。ヒルベルは母親を待ち焦がれ、家庭がほしいと思っています。
     施設の子どもたちの中でも、ヒルベルはちょっと浮いた存在で、頭が悪いと思われています。でも、ヒルベルは自分なりに頭を働かせていて、お医者さんに養子にもらってもらおうと病気のフリをしてみたりします。
     ヒルベルの孤独に気付いてくれる人はいるのでしょうか・・、ハンディキャップを持つ子どもの喜びや恐れを、周囲の大人のとまどいや不安とともに描き出した物語。」
    (『大人のための児童文学講座』ひこ・田中著 より)

  • ほぼ、半世紀前の児童文学である。
    読み始め、すぐ、世界観に入り、歩き始めた。
    静謐ながら、子供向けと思われる、容易い文章、
    翻訳の才能が試される・・素晴らしい。

    当初はナチス非難の文学だと思ったが、どうやら違い
    今では「発達障害」というカテゴリに分類される少年が主役・・周りの価値観に縛られ、理解者が少ない,さしずめ「生きにくい時間」を過ごした少年の【ある一コマ、切り取った時間】が語られていく。

    付録冊子に開設ともいえる文が掲載されている~今は亡き河合隼雄氏のその文章内容は、まさに正鵠を射ているスイバらしい、それでいて全くギラギラしない・・心にすとんと来る内容だった。

    ヒルベル少年は~
     わざと親切そうにふるまう人たちを嫌い、それをはっきりと態度で示した。
    彼を嫌い、追い詰めようとするエディットを魔女と呼び、どもりながらもある人物に訴え、それを改革した。
    音楽家クンツさんがいかに彼を縛ろうとあがいてもヒルベルには歌に合唱も伴奏もいらなかった。
    彼の頭刃物を覚えるのに向いておらず 沢山のことを「ならい覚えた」生きていくのに必要な事だったから…・ある日、彼は彷徨い出ていき、捕まり、病院へ入れられ、そのあとは誰も知らない。。。。

    人生で2人の先生だけがくぁいがり、理解し。。それも消えた。

  • 読みやすかった。
    障害や持病を持っていて病院の中や施設で暮らしている子の物語で、それでも人間に生えて不得手があるように必ず得意とする分野があるから馬鹿にしてはいけないと感じた

  • なぜこの本を読むことになったのだろう?
    今後はきっかけを記録する必要あり。

    児童文学なので一気に読む。
    こういう子、どこにもいつの時代にもいる、いると思いながら読み進め結末には寂しい余韻が・・・
    10歳以上の読書好きな子供には勧めて良い本。

  • ヒルベルは今なら自閉症?アスペルガー?
    ヒルベルはどうなったんだろう…。
    でも私たちはヒルベルという子がいたことを
    もっと知って、そしてもっと考えるべきだと思う。

    という、本だった。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:943.7||H
    資料ID:95160958

    河合隼雄氏の著作の中で紹介されていた本です。人間の弱さ、不条理など…いろいろ考えさせられる重いお話です。
    (生化学研究室 大塚正人先生推薦)

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