ペニーの日記読んじゃだめ (チア・ブックス 3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036311309

感想・レビュー・書評

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  • 日記形式なので、はじめの方はペニーというオーストラリアの10歳の女の子がフルスロットルで自分の思いのたけをまくしたてるかのような展開。
    ペニーは競走馬が大好き。だから趣味はサラブレッドの写真入りカードと蹄鉄を集めること。馬にさわれるのなら、馬草や馬糞で服が汚れても平気。逆にフリル付きのワンピースを着るなんて絶対に嫌。そんなペニーの日記では、馬がそれぞれどこが違って、それぞれどこが素晴らしいかを書くとき、一番筆が走る。

    ここまで読んだら、たいていの人はこう思うのでは?「なんで10歳の女の子なのに、そんなに馬が好きなの?」
    でも私のようなかなり前の(元)子どもだった大人でも、自分が10歳くらいのころを思い出せば、ある1つのことが明白になる。-その「なんでそれが好きなの?」と何人もの人から何回も聞かれること自体がうんざりするほど嫌だったってことを。つまり、単純なことだけど、「よけいなことを聞くな。言うな」に尽きる。

    ちなみにペニーは別に自分の趣味を隠すつもりはない。だから自慢のコレクションである馬のカードが見たければ解説付きでいくらでも見せてあげるし、日記に写真を貼りたくて好きになったカメラの話もいくらでもしたい。でも大人やクラスメイト(たいていは学校や近所ではいい人やいい子で通っている)はペニーが夢中で話を進めると途中で遮ってそれ以上聞こうとしないではないか?よけいなことは言うくせに、こっちの話は聞こうとしないなんて、いくら10歳の子ども相手だとしても、最悪だよ。

    また、自分の好きなものが他人に受け入れられないことがペニーのように重なると、自分もそれにならう形で、他人についてしっかりと良し悪しを見極める前に、第一印象で自分の許容範囲内から閉め出してしまう。それも各人の経験に照らせば、異論はないはず。
    ペニーは特に年よりが嫌いだった。だって学校から訪問した老人ホームでは、どこが良いのか全然わからない“the sound of music”の曲の小学生の合唱を、集団で聞き入って喜んでいるから。

    ある日、クラスのみんなで慰問した老人ホームで、ペニーは隙をついてみんなから抜け出し、1人で庭へ出た。そこで木陰で椅子に1人で座っている高齢女性を目にする。
    はじめは「ゲッ」と思った。だって大嫌いな年よりと外でも出会うなんて!でもこうも思い浮かんだ-なんでこの人は1人で庭に出ているのかな?ほかの年よりは中で合唱をおとなしく聞いているのに-。

    なにかがペニーのアンテナに引っかかり、そしてなんとなく話かけた。そのおばあさんの名前はベタニーといった。ペニーが彼女に「ホームのお年よりのために学校からたくさんプレゼントを持ってきたのよ」と言った。「それなのになんで外にいるの?」というのを暗に言い含めて。するとベタニーさんはこう言った-ほしいものはただ1つ。夫の誕生日を2人で祝うことだ-と。
    ペニーは想定外のその答えを聞いて自分のことを思い出した。前に飼っていたボタンインコが死んで、その楽しかった思い出がいつまでも心に留まっていることを。こんなふうに10歳と80才過ぎの2人のやり取りは一見ちぐはぐ。だけども核となる部分は同じだったのか、2人の心はお互いに接近していく。

    そしてペニーはある心地よさに気づいた-ベタニーさんの答えは私の思いとは合っていないかもしれない。けれど、彼女は私の話をちゃんと聞いてくれて、しかもそれに対して批評や批判をしない-。
    だからペニーも同じようにベタニーさんの話に耳を傾けた。そうするうちにペニーはベタニーさんを単なる老人から、共通の考え方をもつ仲間へと(そして自ら進んで我が道を歩む同志へと)次第に見方を変化させていく。

    冒頭でペニーがフルスロットルでまくしたてるかのような展開と書いたけど、ベタニーさんと出会ってからは、自分の趣味の中身自体は変らないけれど、相手へ押しつけるような今までの言い方から、相手といっしょに楽しもうとするように伝え方が変化していく。
    だから2人の掛け合いは読んでいてとても楽しく、読者の心を温めてくれる。例えるならば、ペニーをマイナス、ベタニーさんをマイナスとして、2人を掛け合わせてプラスになったようだ。

    だからはじめの方のペニーの突っ走りぶりだけを読んでこの本を評価するのは正確ではない。レコード盤を想像してほしい。A面だけでなくB面も聞かないとアルバムとしての真の良さがわからない。それと同じだ。

  • 「あたし馬のカードあつめてるの。だって馬が大好きなんだもん。350枚もあるのよ!でもこのカードを喜んでみてくれる友だちはたったひとり。」
    (『キラキラ子どもブックガイド』玉川大学出版部より)

    ・馬好きで男の子みたいな10歳の女の子ペニー。女の子の集団になじめない。
    ・老人ホームでのボランティアなんて退屈で老人は気持ち悪い と思っていたペニーだが、老人ホームのベタニーさんというおばあさんに出会ってから興味をもって接するようになる。

  • ブックトーク「気持ち(お年寄り)」

  •  クラスで老人ホームに慰問に行くことになったけど、変わり者のペニーは全然気乗りがしなかった。
     当日ペニーは、一人抜け出してサボっていると、同じようにサボっているおばあさんに出会った。
     どうやら気が合いそうな感じ。

  • かなり風変りで奇抜な女の子がベタニーさんとの出会いで起こす行動に心温まります。

  • ちょっと変わった女の子のペニーが、老人ホームのベタニーさんと友達になり、成長していく。吹き出しながら、読みました。面白かった!!

  • ペニーもおばあさんのイーディスも自分をしっかり持った素敵な人たちだ。自分が好きだと思うことや大切なことは大事にしているし、それが間違っていると思った時にはちゃんと認めて改めることができる。自分の感性を大事にしなくちゃね。

  • 小児科の待合室で手に取って、夢中になりました。さっそく家に帰って購入。胸がスカッとして、そのあとほんわり温かくなる。ペニーのような感覚で生きていけたら、楽しいだろうな。大好きな本。

  • 92点。愛すべき主人公。心温まる物語。
    ひさしぶりに声を出して笑った。
    これは絶対子どもたちにすすめたい。

    馬の写真や、ペニーの日記の描写等、おすすめする題材には事欠かないはず。

    なまいきになってくる四年生くらいがターゲットか。

  • ペニーは大の馬好きで、ピンクのワンピースなんて気持ち悪くて着ない!、年よりなんて退屈なだけ!と言い放つ女の子。そんな彼女が老人ホームで出会ったベタニーおばあちゃんを通して色んな事を感じ、考え、自分ができる精一杯のことをしていく。
     言葉で教え諭すことは大切なことでしょうけれど、それよりも素敵なことは、人と人との出会いから感じ取る、学び取ることなのかもしれませんね。

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