元禄の雪 (白狐魔記)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037446208

感想・レビュー・書評

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  • 時は、徳川五代将軍綱吉の時世。
    赤穂藩主浅野匠守が、江戸城松の廊下で、高家吉良上野介への遺恨で刃傷沙汰をおこしてしまう。赤穂藩はとりつぶし、職を失った浪人侍が主君の仇を討たんとする実話が背景。
    白弧魔丸は、浅野家家来の大高源吾と知り合ったことで、仇討劇を最後まで見届けることとなる。
    赤穂事件の内容は、キツネが絡むことでやや違ってくるため、忠臣蔵ファンが読むと、感想がまた違ってくると思われる。
    今回の『元禄の雪』は、これまでのものと比べ、白弧魔丸が人間の中にすんなり入りこんでいるような感じがした。
    まだ術もろくに使えない、幼さ危なっかしさが残っていた最初のころの白弧魔丸のほうが、かわいらしくて好きだったが、もうベテラン化け狐になったということだろうか・・・

  • やっぱり好きだなぁ、白狐魔記。  前作で「白狐大仙(びゃっこだいせん)」な~んていう大層なお名前を白駒山の仙人から授かった白狐魔丸だったけど、やっぱりそんな立派過ぎる名前よりも白狐魔丸の方がしっくりきます。  これは白狐魔丸が持っているある種の素直さ、可愛らしさ、まっ直ぐさによるところが大きいのではないかしら??

    今作は表紙からしても、タイトルからしても赤穂事件を扱っているのは読む前から明らかだったけれど、太平の元禄時代に江戸城から漂ってくるという邪気に関して言えば KiKi がイメージしていたものとは大きく異なっていました。  読む前にはこの邪気は吉良上野介と浅野内匠頭との間のスッタモンダによるものかと想像していたんだけど、太平の世ゆえの、そして徳川家独裁体制の中での大名家と幕府との間のパワー・バランスみたいなものに端を発している邪気という発想は KiKi にとってはちょっと意表をついていたのと同時に、読んでみて説得力のあるものでした。

    白狐魔丸が人間社会を徘徊する際に化けるのは多くの場合が「白犬」か「人間の商人」というのは以前のシリーズからお馴染みだったけれど、今作は「生類憐みの令発令中」という状況下での「犬姿」なので、そこから出てくる物語にも説得力があり、安心して楽しめるサイドストーリーが多かったようにも感じました。

    前作で白駒山の仙人様がご帰還あそばされたことにより、雅姫(つねひめ)の存在感は薄くなってしまうのかなぁ?と心配していたんだけど、結局せっかくご帰還なったものの1人でフラリと旅に出てばかりいる仙人様よりも、本人曰く「白狐魔丸とは格が違う狐」である雅姫の活躍ぶりは相変わらずでした。  もっともこのやたらと目立つ雅姫がいったいどんな風にして、白狐魔丸同様の(いやそれ以上の)霊験あらたかなお狐様になられたのか?に関しては、今作でも全く語られなかったんですよね~。  このシリーズの中のどこかでそのあたりの「雅姫はいかにして今の雅姫になったのか?」が語られることはあるんでしょうか??(笑)

    浅野内匠頭の初登場シーンはちょっと意表をつくものでした。  もともと KiKi 自身は浅野内匠頭という人物に関してあまり好印象を持っていなかったし、今風に言えば「切れやすいタイプ」の人だったんじゃなかろうかと思っていたようなところはあったんだけど、こうもあっさりとそのイメージ通りの人物で描かれちゃうと、それはそれで唖然としてしまいました。  でも、白狐魔丸のセリフじゃないけれど、どんな事情があったにしろ殿中で刃傷事件を起こし、後のこと(領国のこと、お家のこと、そして家臣団のこと)をまったく考えていないようなお殿様はダメだよなぁ・・・・・。 

    さて、時代は元禄まで下ってきちゃったわけだけど、次はどの時代へ行くんでしょうか??  逆に言えば現代まで残された時代もそうそう多くはなくなってきちゃったわけで、そこに一抹の寂しさを感じます。  と同時に、武士の時代をず~っと訪ね歩いてきた白狐魔丸が現代の日本人を目にしたら、どんな感想を持つのかに無性に興味がかきたてられます。

  • 戦国の世でなくとも、人の死は常にそこにあるのですね。
    今回のキーワードは、生類憐みの令と忠臣蔵です。
    前回の『天草の霧』もそうでしたが、自分が既に知っていた物語と「真実」が少し異なるところに、胸がドキリとしました。
    時代はどんどん今に近づいてますね。次は「いつ」なんでしょう…?!
    白狐魔記サイコーです!

  • 何故、この人の言葉はこれほど心に残るのだろう。決して感動を誘うような場面でなくても、ちょっとしたつぶやきのような言葉であっても、しっかりと地に根を張っているような、どっしりとした安心感がある。実感があって、そこから言葉が出ている、という感じ。

  • 2012年11月18日〜同日

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著者プロフィール

1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。1986年、『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞受賞、同作でデビュー。1988年、『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞受賞。2013年、『ルドルフとスノーホワイト』で野間児童文芸賞受賞。「どうわがいっぱい」シリーズの作品に、「もぐら」シリーズ、「ペンギン」シリーズなどがある。

「2022年 『がっこうのおばけずかん シールブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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