後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823669

作品紹介・あらすじ

真珠湾攻撃の裏で起きていた、敗北。
41年12月以降、中国戦線では何が起きていたのか?
気鋭の中国史研究者が空白の戦史を埋める!

日本人は、日中戦争を未だ知らない。
1937年の盧溝橋事件、南京事件や38年の重慶爆撃までは有名だ。
しかし、41年12月の太平洋戦争開戦後、中国戦線で日本軍はどのような作戦を展開していたのかは、対米戦の陰に隠れ、意外な程に知られていない。
主要作戦に従軍し続けた名古屋第三師団の軌跡から、泥沼の戦となった中国戦線の実像を描く! 空白の戦史を埋める、新たな日中戦争史。
■1941年12月、手痛い敗北を期した第二次長沙作戦
■731部隊の細菌戦となった戦場、浙カン作戦
■一方的な勝利となった江南殲滅作戦。その中で起きたもう一つの虐殺・廠窖事件の実相
■毒ガス戦と中国版スターリングラード攻防戦となった常徳作戦
■補給なき泥沼の戦いとなった一号作戦(大陸打通作戦)

中国戦線は太平洋戦争に引きずり込まれていた!

【目次】
はじめに
第一章 最初の敗北――第二次長沙作戦   
第一節 因縁の長沙
第二節 日中両軍の作戦部隊の戦力比較
第三節「天炉」の中へ
第四節 長沙攻略戦
第五節 長沙突入と敗走

第二章 細菌戦の戦場――浙カン作戦
第一節 大本営のプライドをかけた戦い
第二節 敵味方を苦しめた細菌戦

第三章 暴虐の戦場――江南殲滅作戦と廠窖事件
第一節 殲滅作戦
第二節 「太平洋戦争期で最大の虐殺」はあったか

第四章 毒ガス戦の前線――常徳作戦
第一節 明確な戦略なき作戦
第二節 第六戦区主力との戦い
第三節 常徳城の占領

第五章 補給なき泥沼の戦い――一号作戦(大陸打通作戦)
第一節 一号作戦
第二節 湘桂作戦

おわりに
参考文献一覧

感想・レビュー・書評

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  • 本作の主演を務める第3師団は名古屋愛知の郷土師団!
    支那派遣軍第11軍の主力(←断言だ!)として国府軍とゴリゴリの殴り合いの果てに中国西南深部にまで侵攻し重慶直撃を窺った名古屋鎮台起源のオリジナル6ぞ!
    センターこそ熊本や仙台に譲っちゃうことが多かった地味メンだけど、本作で描かれる中国戦域では、伸び伸びとセンターを担い実力を発揮してる♪
    郷土部隊の大陸を縦横無尽に駆け巡り、躍動するロケーションの雄大に圧倒される思いで、
    昭和の御代の我等が父祖の闘争は、
    ユーラシア大陸と太平洋インド洋を股にかけ、地球の覇権を争い死闘する大戦争で、
    列強同士の総力をあげた黙示録的な激突は、戦争の悲惨とは別にココロオドル冒険譚なのに、
    令和の昨今に、小島の1つ2つで国土ガー戦略ガー固有ガーと叫んでエキサイトする我々の、
    呆れるほどにスケールダウンなショボさに改めて絶望し、
    祖国の退嬰と衰退を座視したボンクラな自分にも、
    けっこう絶望したって話は、本書読破の副作用ってやつなので、
    君とボクのここだけの秘密ね(-_-;)

  • 米英との太平洋戦争開始後の中国戦線は、オマケ扱いされて著作や研究の蓄積が少ないらしい。本書はそうしたベールに包まれた後期日中戦争を解き明かそうとする。
    戦争の全体感を記述するよりは、中国戦線に一貫して派兵されていた名古屋第三師団の動きを追っている。事実を追求するためには仕方がないが一般読者からすると全体の動きや国民党や共産党の展開もあればバランスが良かったかもしれない。
    本書でも纏められているが、日中戦争は当初より戦略目的の曖昧な戦争であったこともあり、米国による本土爆撃が行われると中国戦線は全体の付属として場当たり的な対応が多くなる。
    また、第二次長沙作戦では現場責任者の独断によって本来大本営の作戦にない長沙侵攻が行われ、結果準備不足で敗北するも当該人物が「偉い人」であったため何のお咎めもなかったのは、今の日本の組織にもあり得る話で示唆的であった。

  • 中国での戦争がどのような結果であったかについて戦闘場面だけの敗戦の状況を説明したものであった。
     その間の人びとの虐殺は僅かに記載してあるがほとんどは、戦記のものであった。
     ただし、いままで全く説明されていない中国での後期の戦いを説明した意義は大きいのかもしれない。
     一般向けなので、卒論研究レベルではないが知っておくことは悪くない。

  • 題材も書きっぷりも優れている

  • 東2法経図・6F開架:210.74A/H71k//K

  • 本書にあるとおり、太平洋戦争中の中国戦線についての情報はあまりに乏しい。その意味で、本書は、日中戦争に新たなスポットライトを当てることとなり、とても興味深い内容であった。他方、名古屋の第三師団の参加作戦を中心に記述されていることから、具体的ではあるものの、この時期の日中戦争全体を俯瞰するものではない。この点については、通史的なものを更に期待したい。
    本書に取り上げられたような作戦・戦闘は、部分的にはかなりの勝利を収めているようであるが、弾薬と兵力を損耗し、これらをすぐに補強できる中国国民党軍との戦争を考えると分が悪く、戦略的な勝利には結びついていないように思われる。もちろん、連合国と多正面作戦を開始したこと自体、無理があるのだが。

  • ”後期の日中戦争”どころか”日中戦争”自体
    しっかりと理解できていない人も多いのでは?
    もちろん自分もその一人。
    「陸軍は中国大陸では最後まで優勢だった~」的論を
    聞くこともある。

    ”太平洋戦争下の中国戦線”としての”後期日中戦争”、
    興味深い内容でした。

  •  名古屋第三師団の戦況に絞っているため包括的ではないが、現地の様子はよく分かる。
     この時期の日中戦争の作戦の大半が太平洋戦争、対英米戦の影響を受けていることが分かる。ただ個別には、そんなことで作戦を決めたのか、という記述もある。第二次長沙作戦は、第一次作戦での撤収が中国側の逆宣伝に利用されたという阿南第11軍司令官の不満のため。常徳作戦は、中国戦線の拡大に繋がるにも拘らず、大本営が認めたのは支那派遣軍の士気維持のため。
     細菌や毒ガスは、自軍の散布で日本軍自身にも被害が出ている。もちろん中国の軍と民間人への被害はそれ以上だろうし、廠窖事件など、被害の規模に議論はあれど他の暴虐もあったのだろう。

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著者プロフィール

1978年、愛知県生まれ。愛知学院大学文学部准教授。2012年、愛知大学大学院中国研究科博士後期課程修了。博士(中国研究)。専門は中国近現代史、日中戦争史、中国傀儡政権史。単著に『「華中特務工作」秘蔵写真帖』(彩流社、2011年)、『日中和平工作の記録』(彩流社、2013年)、『語り継ぐ戦争』(えにし書房、2014年)、『冀東政権と日中関係』(汲古書院、2017年)、『牟田口廉也』(星海社、2019年)、『傀儡政権』(KADOKAWA、2019年)、『後期日中戦争』(KADOKAWA、2021年)などがある。

「2022年 『増補新版 通州事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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