戦国武将、虚像と実像 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040824000

作品紹介・あらすじ

妄説、打破!
信長は戦前まで人気がなかった。秀吉は人たらしでなく邪悪だった!?
時代ごとに人物像は変化していた。最新研究による実像に加え、虚像の変遷から日本人の歴史認識の特徴まで解析した画期的論考!

画期的に見える人物像も、100年前の焼き直しにすぎないものが多い。
織田信長は革命児、豊臣秀吉は人たらしで徳川家康は狸親父。明智光秀は常識人で、斎藤道三は革新者、石田三成は君側の奸で、真田信繁は名軍師。
このようなイメージは、わずか数十年前にできたものが実は多い。
彼らの虚像と実像を通して、江戸、明治、大正、昭和と、時代ごとの価値観まで浮き彫りにする!

■光秀=「温厚な常識人」は一つのベストセラーがつくった。
■油売りでも革新者でもなかった道三
■信長は将軍も天皇も尊重していた 
■秀吉の評価ポイントは勤王と海外進出 
■江戸時代にも三成肯定論はあった
■幸村は「軍師」ではなく「現場指揮官」だった
■司馬遼太郎の家康論は徳富蘇峰の受け売り!?
■歴史小説・ドラマの源流は“蘇峰史観”にあり! 
■「野心家・光秀」はなぜ定着しなかったのか?
■信長の「勤王」は「革命」だった? 
■徳川政権への不満が生んだ秀吉人気 
■三成忠臣/奸臣論が見落としてきたもの 
■超人化していった真田幸村
■賞賛されていた家康の謀略

【目次】
はじめに
第一章 明智光秀――常識人だったのか?
第二章 斎藤道三――「美濃のマムシ」は本当か?
第三章 織田信長――革命児だったのか?
第四章 豊臣秀吉――人たらしだったのか?
第五章 石田三成――君側の奸だったのか?
第六章 真田信繁――名軍師だったのか?
第七章 徳川家康――狸親父だったのか?
終  章 大衆的歴史観の変遷
あとがき
参考文献

感想・レビュー・書評

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  • 著名な戦国武将の実像は、どのように変遷していったかを探る。
    第一章 明智光秀ー常識人だったのか?
    第二章 斎藤道三ー「美濃のマムシ」は本当か?
    第三章 織田信長ー革命児だったのか?
    第四章 豊臣秀吉ー人たらしだったのか?
    第五章 石田三成ー君側の奸だったのか?
    第六章 真田信繫ー名軍師だったのか?
    第七章 徳川家康ー狸親父だったのか?
    終章 大衆的歴史観の変遷
    主要参考文献有り。
    例えば、明智光秀。同時代人の史料では、野心。
    江戸時代は、俗書の創作や儒学者による、怨恨説や常識人。
    明治時代からは、野望説や突発的犯行説。
    昭和時代の戦後には、司馬遼太郎の作品と大河ドラマ化で
    温厚な常識人と、その姿は変遷を繰り返した。
    その時代の思想、儒学や朱子学、天道思想、
    明治維新等の時勢と戦時下の軍国主義、日本社会の価値観の変化、
    そして、大衆文化で様々な創作がもてはやされたことでの
    庶民への影響によって人物像は左右されてきた。
    特に、江戸時代は徳川史観中心だったのが、明治維新で脱却し、
    多くの人物たちの評価が一変している。
    また、明治時代の徳富蘇峰『近世日本国民史』、歴史学者の著作、
    司馬遼太郎を中心にした時代小説の創作が、如何に、
    その人物像に影響を与えたかを克明に探り解き明かしてもいる。
    だが、実像が分かる史料自体が皆無、又は乏しいのが、実情。
    但し、これからだって斎藤道三のように新しい史料が
    発見されることも、無きにあらず。期待してしまう。
    反面、創作者としては、魅力的な題材の人物だということ。
    だから読む側としては、あくまでも創作。私としては、
    想像して創作した人物の物語として愉しんでいますけどね。

  • 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、石田三成、斎藤道三、真田幸村。
    革新的な考えの織田信長は、戦前は、皇室や権威を敬う人物
    人たらしの秀吉は、戦前までは、朝鮮出兵により日本の国威発動に寄与した人物
    石田三成は、今でこそ忠義の人などと、言われるが江戸時代は、家康に逆らい、天下を簒奪しようとした奸臣

    などと時代によって、それぞれの人物像が変わっていく。
    等身大の人物像に迫ることも大切だと思いますが、織田信長が天下統一に最も近い人物。石田三成が徳川家康と戦い敗れ去った歴史という事実が、今の歴史に繋がっている。
    そこに至るまでは、様々な人物像があっていいと思うし、自分が理想とする行き方は大切だと思う。

    道三は油売りではなかったという事実が出てきても、道三という人物の評価が大きく変わることはないと思うし、美濃の英雄には変わりないのではないでしょうか。

    戦争に繋がった歴史はあるけど、過去の過ちがあるのなら、それも人物像の中に組み込んで、より理想とする人物像を作り上げていけばよいのではとも思いました。

  • 道三、信長、信繁はかなりかわったなあと感じます。ドラマ、小説の影響大です。ただ、専門家は史実だけでいいし、一般的には史実とフィクションがあるのは当たり前だと思います。

  • 虚像は理解できるが、実像となると新資料が発見されるたびに変わっていくこと、時の権力者への忖度が実像を歪めると言うことがわかる良い本だと思った。

  • 戦国武将たちが歴史的にどう評価されてきたのか、その変遷を辿った一冊。

  • 司馬遼太郎の描く小説は、山岡荘八とか他の歴史作家が描くものに比べたら、すごく客観的で思い入れがあまりなく、その分公平な視点で書かれていて面白いなあと思っていたのだが、それを史実として読んではいなかったように思う。しかしこの本を読んでみると、やはり一定程度、史実として読んでいたんだなところ気付かされた。
    結局のところ同じ、家康や信長、秀吉や明智光秀などの評価はその時代時代の価値観によって左右されるとのことなのだけれど、ではつまり、生きる時代によってどう捉えるかは皆んなの自由なのだから、実像と虚像という視点は持たない方が良いんじゃないかなと思った。

  • 私たちが印象を抱いている歴史上の人物に対する印象が、いかにその時代の時勢に影響を受けるものであるかを改めて認識しながら、興味深く読みました。
    上記の視点は、どんな本を読む場合も、意識しておくべきだと思います。

    惜しむらくは、最新の研究結果による人物評の記載がもっと知りたかったです。

  • 戦国武将、とあるものの織豊期以降の人物がメイン。近世以降、軍記や説話集、文芸の実例を参照しながら人物像の変遷過程を追い、形成された虚像と実像を比較していく内容。いわゆる司馬史観の源泉やその意味・問題点も理解しやすい。

  • はじめに
    第一章 明智光秀――常識人だったのか?
    第二章 斎藤道三――「美濃のマムシ」は本当か?
    第三章 織田信長――革命児だったのか?
    第四章 豊臣秀吉――人たらしだったのか?
    第五章 石田三成――君側の奸だったのか?
    第六章 真田信繁――名軍師だったのか?
    第七章 徳川家康――狸親父だったのか?
    終  章 大衆的歴史観の変遷
    あとがき
    参考文献

  • メモ
    政権の自己保身のための学問統制、外圧などで生じるナショナリズムや、俗流演劇・文学が大衆歴史観に大きな影響を与えた。

    妄想戦記やトンデモ本に、学者はいちいち反論・否定しないことから、歴史的真実と思い込むひと多数。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター助教
著書・論文:『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中央公論新社、2016年)、「永享九年の『大乱』 関東永享の乱の始期をめぐって」(植田真平編『足利持氏』シリーズ・中世関東武士の研究第二〇巻、戎光祥出版、2016年、初出2013年)、「足利安王・春王の日光山逃避伝説の生成過程」(倉本一宏編『説話研究を拓く 説話文学と歴史史料の間に』思文閣出版、2019年)など。

「2019年 『平和の世は来るか 太平記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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