TRIP TRAP トリップ・トラップ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.47
  • (14)
  • (24)
  • (37)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 454
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041006610

作品紹介・あらすじ

中学校にも行かず半監禁状態の同棲生活。高校は中退しヤクザに怯えながらもナンパ男を利用して楽しむ沼津への無銭旅行。結婚後、夫への依存と育児に苦しみながら愛情と諦念の間を揺れ動くパリ、ハワイ、イタリアへの旅。そしてふと生きることに立ち止まり、急に訪れる江ノ島への日帰り旅行。少女から女、そして母となりやはり女へ。転がる石のようなマユがたどる6つの旅の物語。第27回織田作之助賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 圧倒されました。

  • めんどくさい。そして、それにもかかわらず、心を動かされる小説です。
    特に前半の主人公はめんどくさい。一部は読み手である私にも通ずるような気もしながら、主人公のほうがずっと面倒で、ただそこに、人に対しても物に対しても事に対しても私よりよっぽど自由で、いつも自分の斜め上あたりに冷静でやる気のない(つまり何にも縛られていない)自分をもつ主人公を見出して、私はこんな生活も心の乱高下も嫌だけどどこか羨ましくもなる。
    そして何度も生まれ変わりながら、何かを捨てて捨てて捨てて、たぶん同時に何かも得ているんだけど、どっちかというと得るより捨てていく主人公の姿のほうに、羨ましさとともに妙な安らぎみたいな感情で胸がうずめられるような気分になりました。私も女である以上、人生に苦しい段階があろうと甘い段階があろうと、捨て去り脱皮し生きていくのかもしれない、と。

  • 女女していますね。

    払ってもいい金額:500円

  • ”多分彼らは、幼稚で愚かな者に対する哀れみに近い愛情によって、そういう目でわたしを見ているのだろう。でも、あと三年で有無を言わさず自分が消滅すると知っている私の気持ちが、いくつ歳を重ねても今の自分の延長線上を辿って成長していくだけの男に分かってたまるかと思った。女は人生の中で何度も、完全な別物に生まれ変わる。”

  • 久しぶりに金原ひとみ読んだら、前よりもずっととっつきやすかった。
    作風なのか私の変化なのかはわからないけど。
    「マユ」という不良少女の成長?と変化を描く連作短編。
    面白い、っていうか、「あぁわかるわ……」っていうことが多くて、女ってこんなに生きづらいいきものなのか、そうだな、ってつきつけられた感じ。「女の成長を描く」とかそんな美しいもんじゃねーなって思う。
    マユはただ生きてるだけ。その生き様ってだけで、成長とか変化とかそういうポジティブなものだけじゃないっていうか。折々出てくる夫の描写が「よくある夫」で吐き気がする。こっちの身体的精神的しんどさなんて微塵もわかってねーなコイツ、っていう。
    そういう意味では依存したり泣き喚いたり怒り狂ったりするマユに親近感を覚えた。
    印象に残ってるのは「私は侮られようとしている」っていう15才のマユの言葉。
    そういうことやるよね。解ってやってるんだよね。そうそうそうなんだよ、っていう。そのほうが相手(男)はわかりやすく接してくるし、利害関係で付き合いやすい。それって本当は全然健康的じゃないし、自分の価値を落とすことなんだけど、そういう風に振る舞うことで凌いでいる女は多いだろうな…と思った。

  • 金原ひとみの書く「わたし」に圧倒される。もうわたしわたしわたしわたしでこの人の世界にはわたししかない。わたしとわたしのことを好きといってくれる男。たまにわたしの子供。それも結局わたし。なんかもうほんとうに凄い。ここまで清々しくわたしなら、もうわたしだけでいいじゃん、なんにも迷うことも心配することもないよ、って感じだけれども、わたしがわたしだからこそ、イライラしまくってるわけで。なんだか「わたし」がゲシュタルト崩壊しそうだけれども、そのくらい「わたし」が全開だったし全面に出ていた。ちょっとアンバランスさも感じて(ただの自分大好き女の小説ではない)、この人もなにかと色々いきるの大変そうだな、と思った。

  • 旅は時々、自分時間と自分のいる空間の殻を破ってくれる。「女の過程」「沼津」では帰る場所のないままの旅だったが、母となり帰る場所に制約される現実を受け入れていく。

     金原ひとみの作品があまり好きになれないのは、動物的感覚の強さかもしれない。危うい均衡さでズブズブと堕落しながらも、最後はつま先で踏ん張ってしまうような、そんな感覚がある。
     「女の過程内」の「可愛い」という言葉に含んだ軽蔑のニアンスにはニヤリとしてしまった。便利な「可愛い」と言う言葉の多様性を見せてくれた。
     期待していた「沼津」が拍子抜けした。沼津は潮の香りが強烈な町だよ。ただこの作中で、四人がサークルになって手をつなぐ4次元旅行の体験遊びが、祈りにもにた精神状態から現実にもどり、一番旅らしく思った。
     社会に迎合しない強さが不気味で、読了後、不快感になってしまうのかもしれない。
     

  • 普通に真面目に学生時代を過ごし、
    普通に結婚し、子を育ててる自分からみると、
    なんだコイツは…
    が感想。
    子供の頃に変に大人びていて、大人になったら変に子供じみていて。
    フワフワ、地に足がついてなくてイライラ。
    そんな気持ちにさせる、文章力は流石。

  • "私たちは、サラダスピナーの中に放り込まれた菜っ葉のように
    ぐるぐると回され、遠心力で壁にへばりつき、
    運命という力に抗えないまま身動きが取れなくなっているようだ。"





    刹那主義、破滅願望、男性依存、作家。


    著者の作品に共通するいつもの「私」

    今作の「私」も「Hawaii de Aloha」の中盤から一度落ちる。
    しかし「フリウリ」の彼女はマユに戻っていて、
    むしろ彼女は「母性」を身につけている。
    「夏旅」の「私」もTRIPすることもになく旅行から戻ってきており、
    「マユ」のままで終わる。
    ドロドロとしたものを抱えて終わることが多い著者だが、
    今作の終わりは割と意外。


    ”大抵、人と人との関係は、相手が伝えようとすることを悪意からであったり
    保身からであったり、理由は色々あるだろうけど、誤解してみせたり、
    勘ぐってみたり、ねじ曲げて捉えたり、他の話にすり替えたりして、
    結局相手の伝えたい事は分かっていても分からない振りをしたり、
    本当に伝えたい事とは別の事を主張してみたり、
    そういう回りくどい事をするばかりで結局話も関係も何一つ進まない”

  • 祝文庫化。「成長」とか「旅立ち」と言う言葉に弱いかも、、、

    角川書店のPR
    「ハワイ、パリ、江ノ島……6つの旅で傷つきながら輝いていく女たち。凝縮された時と場所ゆえに浮かび上がってくる興奮と焦燥。終わりがあるゆえに迫って来る喜びと寂しさ。鋭利な筆致が女性の成長と旅立ちを描く。」

    TRIP TRAP トリップ・トラップ|金原ひとみ
    http://www.kadokawa.co.jp/sp/200912-06/

全36件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金原ひとみの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
金原 ひとみ
湊 かなえ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×