ウール 下 (角川文庫)

制作 : 雨海 弘美 
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041010167

作品紹介・あらすじ

世界滅亡後、地下144階建てのサイロ。このサイロには何か途方もない秘密がある――。機械工から保安官へと任命された直後、陰謀にはめられたジュリエット。扉を開け、外に出た彼女の見たものは!

感想・レビュー・書評

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  • “サイロ”…冬の間の食料、凶作時の非常食などを目的とした保存庫

    世界が何らかの理由で壊れてしまったあとに残った“サイロの中の種”とは人間
    目に見える物、耳に聞こえる音、五感で感じられることがすべての狭い世界のなか、「外に出たい」の一言が犯罪となる社会がこの物語の設定

    汚染された大気の世界で、地上ゼロ階・地下144階もの巨大建築物の「サイロ」内では、人類の存続に必要な環境循環を持続可能とする設計がなされている。
    各階をつなぐ螺旋階段は、まるで永遠に同じ状態を続ける社会の象徴のよう……。

    いつまでも海ばかりで目的地もなく漂い続ける「ノアの箱舟」のような状態の中、「維持する」ことだけを目的とした社会では、「希望」を持つことが罪となる。
    恋愛、結婚、出産すら計画的に管理される「階層」社会。
    そこで暮らす人間の心を操るものはなに?
    それでいて、カフェテリアのスクリーンに「外」を映し出しているのはなぜ?

    物語はいきなり度肝を抜くエピソードで始まり、上下巻終わるまで怒涛の展開で埋め尽くされている。
    主人公ジュリエットは、文字通り「息をつく間もない」ピンチに翻弄され挫けそうになるも、前に進む。
    その姿はブルース・ウィルスも驚く逞しさで、思わずエールを送ってしまう。

    「なぜこうなったか」は次作「SHIFT」で、
    「このあとどうなったか」は次々作「DUST」で、明らかになるそう。

    楽しみです。

  • 下巻は一気読みでした。
    上巻の前半もたつくのが少し残念。
    でもジュリエットがサイロを脱出してからは怒涛の展開、貪るように読みました。
    あとがきを読んで納得、あの大森望先生が絶賛しているじゃありませんか!
    コニーウィリスの傑作大長編「オールクリア」から「ブラックアウト」を訳したあの!大森望先生ですよ!
    なるほど同じくストーリーテラーで細かい描写満載の本作は大森氏のおメガネに叶ったのでしょう。
    まだまだ続くそうですし。全部で6冊?
    うわ〜、楽しみ!

  • いろんなことがありすぎて気持ちが追いつかない。上巻に引き続き、狂言回しキャラが続々と死んでいく。。それだけこの世界が厳しいってことなのだけど、ジュリエットのタフさには驚かされた。
    ルーカスはもうちょっと骨のある奴だと思ってたのに、思考停止して流されてばかりでがっかり。ジュリエットのこと想ってるんだったら、もうちょっと役に立つことしろよ!と思ってしまった。
    バーナードが後継者を決めるくだりがあっさりしすぎていて、なんでそんなに信用できるの?と気になった。前から目をかけていたんだろうと脳内補完。
    ジュリエットの最初の恋が秘密だった理由も気になる。続編で明かされたりするんだろうか。それとも単に昔から自由に何かをしたかっただけなのか。
    ソロと子供たちが心配すぎる。水が抜けたら機械が錆びるのにどう対処するんだろう。メンテできる人がいなかったら排水したところで意味がないような…。
    AppleTVで実写化されているようなので見てみたい。特に螺旋階段がどれくらいの幅で各階何段くらいあるのかがうまくイメージできなかったので、映像で補完したいな。

  • おもしろかった。下巻はテンポがよく、サバイバルあり戦闘ありのディストピア映画を見ている感じ。場面が切り替わりながらキャラ立ちした登場人物たちが活躍する姿に、ページをめくる手が止まらなかった。
    電気や無線など、わりとローテクな技術が活躍しているのが印象的だ。
    この上下巻では明かされなかったサイロの謎がいろいろと残った。これは続編「シフト」への誘導かな。

  • 再読。複数の登場人物の様子が同時進行で語られるが、どれも手に汗握る展開で目が離せない。47のラストにはゾクッとした。仄めかされる過去の経緯のスケールの大きさにゾクゾクした。

  • 印象的だった部分2点。
    「ここも昔はそうだったよ。めちゃくちゃだったときは」ソロが故郷のサイロに戻るジュリエットを手伝っている時に言ったジョーク。一瞬ハテナになって、今も十分めちゃくちゃだよ。ってツッコミたくなる、ほんと力が抜ける優しいジョーク。
    真っ当じゃない世界で生きるよりましなのだろうか。
    多くの犠牲が生まれ、間違ったことをしてしまったのではと考えるジュリエットを救う一言でもあったと思う。

    "けれどもエリースは満面の笑みでソロを見上げた。前歯が1本抜け、まだ新しい歯は生えていない。"
    幼い子が転んで泣くか泣かないか葛藤している瞬間がある。泣くことも選択できたはずだけど、泣かずに笑うことを選択したエリース。幼い子でも強く生きることを選択して実践している。強く生きるかは自ら選択することができるんだとハッとする一文だった。

  • 「ヒュー・ハウイー」のSF作品『ウール(原題:Wool:Parts 1-5)』を読みました。

    先日、『猿の惑星』を読んで、SFもイイなぁ… と思い、買っちゃったんですよね。

    -----story-------------
    全米大ベストセラー。
    ネット発の超新星、空前の話題作!

    〈上〉
    世界が終末を迎え、人類は地下144階建てのサイロで、限りある資源を再利用しながら暮らしていた。
    カフェテリアのスクリーンに映る、荒涼とした外の世界。
    出られるのは、レンズを磨く「清掃」の時のみ。
    だが「清掃」に出された者が、生きて戻ることはなかった。
    機械工の「ジュリエット」が、外の世界に足を踏み出すまでは―。
    世界を熱狂させたネット発の超大作、崩壊後の世界を生き抜く闘いをヴィヴィッドに描く!

    〈下〉
    地表は有毒ガスに覆われ、人類は地下144階建てのサイロに暮らしていた。
    このサイロに何か途方もない秘密がある―。
    機械工から保安官へと任命された直後、陰謀にはめられた「ジュリエット」。
    「清掃」の刑を科され、外に出た彼女が見たのは、思いもかけない世界の真の姿だった!
    彼女を慕う「ルーカス」は、サイロの秘密の核心に迫るが、同時に反乱が勃発。
    極限の環境を生き延びることはできるのか!?
    ノンストップ巨編!
    Kindle Bookレビューズ・ベスト・インディーズ・ブック・オブ2012受賞。
    -----------------------

    2011年に『第一部 ホルストン』が電子書籍として出版され、その評判がフェイスブックやツイッター、カスタマレビュー等のインターネットの口コミを通じて広まり、相次いで続篇が電子書籍化された作品らしいですね。

    本書は、2012年に電子書籍化された『第五部 縒り合わせる』までの5篇を収録した作品です。

     ■第一部 ホルストン
     ■第二部 編み目を決める
     ■第三部 編みはじめる
     ■第四部 ほころび
     ■第五部 縒り合わせる
     ■解説 大森望


    久しぶりに面白いなぁ… と心をときめかせながら読むことのできたSF作品でしたね。

    場面の切り替えが多いのですが、それが独特のリズム感を生んでいるし、読み進むにつれて新しい事実が徐々に判明して行き、どんどん先を読みたくなる展開… 映画化が意識されているんじゃないかと感じるくらい、スピード感に溢れ、愉しく読める作品でした。


    文明が滅んだ後の世界を描く作品ということで、個人的に興味を惹かれるジャンル(いわゆる、SFのサブジャンルにあたる終末もの、ポストアカリスプもの)だったこともありますが、現実感のある設定や魅力ある登場人物が物語の質を高めていますね、、、

    特に『第二部 編み目を決める』以降、ヒロインとなる「ジュリエット(ジュールス)・ニコルズ」はタフで技術力のある魅力的な女性として描かれていますね… 映画ウケしそうですね。


    さて本作ですが、、、

    ○時は数百年後の未来。
    ○地球は荒廃し、空気が汚染されているので人類は細々と地下(サイロ)で暮らしている。
    ○地上に出るのは、屋外を映し出すカメラのレンズを磨くときのみだ。
    ○その「清掃人」に選ばれるのは、地下世界の法律に背いた者。
    ○そういう犯罪者、反逆者が防護服を着て地上に出され、外に突き出ているレンズを磨くのである。
    ○そのとき持たされるのは毛織(ウール)の布で、これがタイトルの由来の一つになっている。
    ○問題は、その「清掃人」がいまだかつて一人も帰ってこない。

    という、この物語の大枠を知っただけでも、ワクワクしてきません?

    そして、

    ○サイロと呼ばれる地下世界は144階建てである。
    ○言論や思想が厳密に統制されている。
    ○資源が限られているので暮らしにくい日々にみんな耐えている。
    ○市長が絶大な権限を持っている。

    という、この社会(世界)のディテールが語られた後、

    ○保安官「ホルストン」と、その妻「アリソン」は、何を求めて地上へ出て、何を見たのか?
     (意図的に「清掃人」に選ばれる?)
    ○ヒロインの保安官「ジュリエット」が逮捕され、彼女が「清掃」の刑に処せられるが、地上に出た「ジュリエット」を待っていたものは何か?
    ○「ジュリエット」が丘を越えてたどり着いたサイロ17号に生存者はいるのか?彼女はサイロ18号に戻れるのか?
    ○「ジュリエット」が丘を越えたことがきっかけとなり、真実の一部を知った仲間達が反乱を起こそうとするが、その運命は?

    と物語が展開していきます。


    クライマックスでは、保安官「ピーター・ビリングス」の機転もあり、サイロ18号を実質的に支配していた「バーナード・ホランド」は抹殺されるけど、、、

    「ジュリエット」と恋人「ルーカス・カイル」の運命はどうなる?

    サイロ17号に残された「ソロ(ジミー)」たちはどうなる?

    中途半端な感じでエンディングを迎えたと思ったら… 本作品には続篇があるとのこと。

    『シフト』、『ダスト』と続く三部作のようですね。

    『シフト』では『ウール』の過去… 人類滅亡以前の2049年に始まる前日譚で、『ダスト』は本作『ウール』の直接の続篇として、本書の結末の直後から幕を明け、「ジュリエット」たちの、その後が描かれるとのこと、、、

    これは読みたいですねぇ… 愉しみです。




    以下、主な登場人物です。


    「ホルストン」
     サイロの保安官

    「アリソン」
     ホルストンの妻

    「マーンズ」
     副保安官

    「マリー・ジャンズ」
     市長

    「ジュリエット(ジュールス)・ニコルズ」
     機械部に所属、のち保安官に

    「ピーター・ニコルズ」
     ジュリエットの父

    「バーナード・ホランド」
     IT部責任者

    「ウィルソン」
     裁判官

    「ディーガン・ノックス」
     機械部のリーダー

    「ルーカス・カイル」
     IT部作業員

    「スコッティ」
     元機械部、IT部所属

    「シャーリー」
     機械部、ジュリエットの親友

    「マーク」
     機械部、シャーリーの夫

    「ウォーカー」
     機械部、電気技師

    「コートニー」
     機械部

    「マクレーン」
     資材部のリーダー

    「ソロ(ジミー)」
     サイロ17号の住人

    「ピーター・ビリングス」
     保安官

  • 2021.9.30
    設定はいいんだけど、爽快感が物足りなかったです。自分にとって肝心な所が書かれてないというか…う〜ん、不完全燃焼。

  • 上巻はサイロの仕組みなどを読み解く感じで、あまり感情移入できないままなかなか進まず、、だったが、上巻後半から物語が動き出し、下巻は一気に読めた。(上巻で挫折しそうな方は耐えて読んで、、)サイロというアイデアが面白く、映像化されたらそれも観たいと思った。しばらく積読している間に、続編の2作も文庫化されたようだけど、読まずにここで完結でもいいかなあ。

  • 核戦争後の世界。サイロのくらしは、自然災害対策としておもしろいかも。

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著者プロフィール

1975年生まれ。ヨットの船長を8年間勤めた後、結婚を機に陸に上がって小説執筆を開始。”Molly Fyde”シリーズで好評を博し、本作”Wool”シリーズではオムニバス版がアマゾンのSF小説部門でベストセラー1位を記録する快挙となった。フロリダ在住。

「2017年 『サンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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