危険ドラッグ 半グレの闇稼業 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023785

作品紹介・あらすじ

発売1カ月で使用者15人が死亡した「ハートショット」など、劇薬化する危険ドラッグ。なぜ蔓延したのか? 撲滅は可能か? 世界的な薬物事情や公的機関の対策、製造・販売者への直接取材から、その全容に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 危険ドラッグ台風(ハートショットによる酩酊事故)が吹き荒れた2014年以来厚労省は平成27年麻薬対策課関係予算を2億5千万から一気に11億円と5倍近い予算要求を出し、本格的に危険ドラッグ乱用防止を強化させている。デザイナードラッグを数多く生み出したことで知られるアレクサンダー・シュルギン博士(MDMAやエクスタシーなど数百種類のデザイナードラッグと称される向精神薬を合成し、それらの効能を自分でテストした幻覚剤の研究者である。)が88歳で昨年亡くなったようであるが。危険ドラッグは暴力団のシノギではなく、もっぱら半グレ集団が仕切るもの。半グレ系は多少トッポイ程度の資質と犯罪的な行為をためらわない気質であり、いわゆるヤンキー気質である。危険ドラッグ従来型のヘロインや覚せい剤のように入手ルートがほぼ暴力団関係者であって、効能なども明らかになっているものと違い、心身に及ぼす危険性など全く謎であり、薬事法に指定薬物とされるたび法の目をくぐり化学構造を変え、ネットによって売りさばかれ、また組織化されない半グレどもによってバラまかれている。その結果1400種類以上もの指定薬物となっており、取締運用さえ困難な状態。とはいえ、アメリカやヨーロッパでは40~50%の人に薬物経験ががると言われる。これに対して日本は4%であるということだ。しかし、日本には専門機関が行政には薬物に関する社会的システムの問題を考えたり、薬物問題をトータルに、どう社会問題や病理問題として常に取り扱っていくかという機関がない。民間薬物依存症者更生施設ダルクの本を読んだ際もこの点の脆弱さを指摘されていたが、依存症は病気であり犯罪者扱いして切り捨てるだけではどうかとは思うのだがそもそも手を出したら最後なんだ。結局、幼少期から薬物の恐ろしさを啓蒙活動することこそが大切であると思う。【閲覧注意】画像を学校で流してもいいんじゃないかと思うほどだ。危険ドラッグを売る側は正確な安全性を確認することもなく、低レベルの危険度である、と喧伝するが、安全性を評価できない業者の詭弁に騙されないリテラシーに重点を置くことで被害拡大を防止するべきである。

  • 溝口敦『危険ドラッグ 半グレの闇稼業』(角川新書、2015年)は危険ドラッグの実態に迫った書籍である。危険ドラッグの製造販売業者に注目し、危険ドラッグと同じく社会問題になった半グレを結び付けた点に意義がある。
    依存性薬物は大きな社会問題である。危険ドラッグは高高度依存性有害薬物である。一度二度の火遊びで終わらすつもりでも、ズルズルと廃人になるまで続けることになる。卑しく下劣で不健全なものである。
    ミュージシャンのピエール瀧氏が2019年3月12日に麻薬取締法違反容疑で逮捕された事件はマスメディアの報道が白熱している。薬物使用事件ばかりが大きなニュースになることは気になる。供給者の蛇口を摘発しなければ、定期的な捜査当局の点数稼ぎで終わってしまうだろう。この点で供給側に迫った本書の意義は大きい。
    危険ドラッグ製造販売者は無責任である。危険ドラッグ使用者の健康がどのように損なわれるかも把握せずに製造販売されている。究極の「売ったら売りっぱなし」である。薬物の恐ろしさや依存症の強さなどは過大なくらいに伝える必要がある。「薬物やりますか、人間やめますか」のようなインパクトある警告が必要である。法律違反や刑罰で踏み止ませることは健全ではない。廃人になるくらいの脅しは意味がある。
    近時は依存症を病気と位置づけ、治療を頑張っている人への配慮を求める論調がある。『相棒』のシャブ山シャブ子批判は典型である。しかし、依存症患者を生まないことは優先課題である。依存症に配慮して表現をマイルドにしてしまうと、薬物への警鐘やハードルが下がってしまう。薬物を二度と使わないことより、薬物を一度も使わない方が簡単で効果的である。
    危険ドラッグという言葉は合法ドラッグや脱法ドラッグでは曖昧になりかねない危険性を強調するために生まれた。そこは意味があるが、ドラッグという言葉のカジュアルさが依然として問題に感じる。ドラッグストアという言葉があるようにドラッグは医薬品と依存性薬物の両方に使われる。英語では前者はpharmacyが使われる。ドラッグの言葉の氾濫が薬物犯罪のハードルを低くしている面がある。
    暴力団ではなく、半グレが製造販売を担っている点が危険ドラッグの安全性無視を増大させている。半グレに比べれば暴力団には、まだ真っ当さがあった。一方で半グレは暴力団と比べて警察権力に弱いところがある。その点から危険薬物の包括指定や厳罰化によって危険ドラッグ蔓延の克服の可能性を見出す。
    しかし、これは必ずしも歓迎できるとは限らない。半グレが暴力団と比べて卑怯で情けない点にチンコロ体質がある。半グレと警察の癒着や半グレ自身の逆恨みによる他人を陥れることが増える危険がある。

  • 東2法経図・6F開架:368.8A/Mi93k//K

  • こんなにお手軽に危険ドラッグがあって,種類もあるとはびっくりです.

  • 供給サイドの論理を基に危険ドラッグの全貌を明らかにしようというもの。危険ドラッグは単価が低く暴力団はほとんど参入していない。経営する者はたいてい全身が裏DVD屋、アダルトショップ、大人の玩具屋など、人種としては半グレかカタギ。儲かると思えば飛びつき、問題が起こればすぐに転業していくような場当たり的輩である。製造物責任への自覚はなく罪悪感も乏しい。恐れるのは前の製品より効かないことであって決して安全性ではない。加えてたいていの販売業者は責任を回避するため、その薬物が体内に摂取する物であるとは決して言わない。したがって一日当たり、一回当たりの用法や用量、摂取回数なども記されてはいない。警察や麻取の捜索を恐れるため、可能な限り手がかりを与えないという制約の中で危険ドラッグは店頭に並べられているのである。皮肉なことに覚せい剤や大麻といった違法薬物は長期間乱用されてきた歴史から危険情報がある程度知られているが、いたちごっこの中で新製品を生み出し続ける危険ドラッグは症例もなく何が起こるかわからない。普通の薬であればとてつもない研究費と年月を費やし作られるのに、危険ドラッグはいい加減な薬学知識をもって中国の製薬メーカーに発注されるだけ。げに恐ろしきことかな。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。ジャーナリスト。1942年、東京都に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、フリーに。著書には『暴力団』(新潮新書)、『血と抗争 山口組三代目』『山口組四代目 荒らぶる獅子』『武闘派 三代目山口組若頭』『ドキュメント 五代目山口組』『山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント2008~2015』などの山口組ドキュメントシリーズ、『食肉の帝王』(以上、講談社+α文庫)、『詐欺の帝王』(文春新書)、『パチンコ「30兆円の闇」』(小学館文庫)などがある。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞を受賞した。

「2023年 『喰うか喰われるか 私の山口組体験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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