料理番 名残りの雪 包丁人侍事件帖 (7) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041024287

作品紹介・あらすじ

江戸城台所人の鮎川惣介は、持ち前の嗅覚を頼りに、数々の難事件を解決してきた。ある日、幼馴染みの添番、片桐隼人とともに訪れたなじみの蕎麦屋で、酒に溺れ前後不覚になった旗本、二宮一矢に出会う。二宮が酒をやめる代わりに、惣介が腹回りを一尺減らすという約束をしてしまい、不本意ながら食事制限を始める。一方、大奥の厠で赤子の骸が見つかった。内密に事が運ばれていたものの、惣介はまたも、事件に巻き込まれ――。

感想・レビュー・書評

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  • 嗅覚に優れた江戸城台所人・鮎川惣助と大奥添番・片桐隼人の幼馴染コンビが様々な事件に遭遇するシリーズ第七作。

    昨日読み終えた西條奈加さんの「曲亭の家」での馬琴が強烈だっただけに、このシリーズでの馬琴と読み比べようと思ったのだが今回は登場なし。ついでに言えば大鷹源吾の登場もなし。

    今回の事件は二つ。
    まずは大奥の下用所(廁)から赤子の遺体が見付かった事件。毎度お馴染み大奥のゴタゴタの話かと思えば犯人は町人上がりの娘。知らぬうちに身籠り知らぬうちに産んでしまったという娘の未熟さゆえの言い分に、娘が大奥を下がることで一旦は収まったかのようだったが。

    章題の通りの『嫌な女』だった。
    なんともやりきれないが、惣助の予想通り真相は闇の中…という結末なのだろう。こうして庇った結果、また新たな犠牲者が出ることにならなければ良いのだが。惣助が放った一言が隼人を思いやると同時に『嫌な女』への皮肉をぶつけたことが唯一のスッキリだろうか。

    もう一つはアルコール中毒の旗本・二宮一矢との出会い。泥酔した彼を隼人と共に屋敷へ送り届けたことをきっかけに、一矢が禁酒をする代わりに惣助は腹回りを一尺(約30cm)減らすことを約束させられてしまう。
    こうして惣助のダイエット作戦が始まる…と思いきや、その場の雰囲気で約束しただけで本意ではなかった。家族の前では食事を減らしてもこっそり盗み食いをする。当然腹回りは減らない。
    一方の一矢も禁酒どころかまたしても泥酔してしまう。一矢が酒に溺れる訳が分からなければ禁酒も無理なようだ。

    知恵袋の馬琴も荒事担当の大鷹源吾もいない分、惣助と隼人の頑張りが目立った今作品だった。
    一矢が酒を酔うために飲むのではなく楽しめるように料理を教えたり、酒を飲む時間の代わりに惣助の息子・小一郎に一矢が得意な弓術を教えさせたり。
    隼人も赤子事件では往復八里(約32キロ)の道を一日で駆けたり探偵役として犯人を追い詰めたり、一矢の決意を見守るために法度を犯して〈大的上覧〉が行われる城中に潜り込んだり(勿論惣助もお付き合い)と忙しい。

    惣助が表向きだけダイエット中に夢の中で腹の虫に怒られるシーンは面白かった。
    シリーズとしては長女・鈴菜がだんだん武家の娘らしくなっていく姿が感慨深い。惣助が悪い虫が付かないかと心配するのも分かる。しかし外面はともかく中身はまだまだ未熟なやんちゃ娘のままで安心した。
    隼人の親バカ振りはますます暴走中。双子のうち娘の初つかまり立ちを見逃しては『一生の不覚』と嘆き、同じ日に双子が二人とも立ったと言っては赤飯持参で惣助に報告する。赤ちゃん言葉も板についてすっかり溺愛パパだ。

    このシリーズは後味が苦い事件が多い。この作品も第一話こそやりきれなかったが、一矢についてはホッとする結末だった。彼の命懸けの行動で救われた。長らくそばで苦しい日々を過ごしてきた弟・継矢も報われた気がする。
    他の作品では悪者に描かれ勝ちな将軍・家斉がおおらかで優しいキャラクターに描かれているのも良い。

    これで<包丁人侍事件帖>シリーズは一旦一区切り。<新包丁人侍事件帖>シリーズへと続く。
    以下にシリーズ作品名を上げておきます。参考まで。
    ①将軍の料理番
    ②大奥と料理番
    ③料理番子守り唄
    ④月夜の料理番
    ⑤料理番春の絆
    ⑥くらやみ坂の料理番
    ⑦料理番名残りの雪(本作)
    レビュー一覧は以下へ↓
    https://booklog.jp/users/fuku2828?keyword=%E5%8C%85%E4%B8%81%E4%BA%BA%E4%BE%8D&display=front

  • 江戸城御広敷御膳所で将軍家斉の食事を作る、ぽっちゃり系の御家人・鮎川惣介(あゆかわ そうすけ)と、その幼馴染で大奥の添番(そえばん)(警護)を務める、シュッとした御家人・片桐隼人(かたぎり はやと)が事件を解決するシリーズ第7弾。
    今回は、優れた弓の腕を持ちながら、酒で身を持ち崩しそうになっている若い旗本と、いよいよ生活習慣病の危機か、という惣介のウエスト周りをどうにかしなくてはならない、というストーリーを軸に、例によって、大奥で怪しい事件が起きる。

    第一話 嫌な女
    大奥の厠で赤子の骸が見つかる。
    「嫌な女」レベルではない。
    以前出てきた「池袋の女」顔負けのサイコパスでは?
    ある意味無邪気だった池袋に対して、こちらは策も弄するし周りの後ろ盾もある。
    末恐ろしい。

    第二話 二本の矢
    若い旗本兄弟のために奔走する惣介と隼人が素晴らしい。
    隼人は、子ができてからコミカルな部分も出てきたが、他人に対する情のかけ方も変わった気がする。
    そしていつもながら、上様が名君なのである。

  • 江戸城の御広敷御膳所台所人という11代将軍家斉の食事を作る御家人が主人公である。
    名は、鮎川宗介。お腹周りが、気になるのだが、、、食べることが大好き。
    その友人片桐隼人は、大奥の管理警護をする御家人。
    大奥の厠で、見つかった赤子は、、、、骸になっていたにも関わらず、臭いが無かったのは何故なのか、、、、という事にたどり着き、、、それは、人形であると、、、、そうなれば、どうして、人形を、、、

    赤子をかどわかし、古参の女中頭に毒を盛ったのに、吉野堂の虫も、母親も、丸く収めて、娘に迄咎が、及ばないようになるのには、、、少し、後味が、悪い話である

    第2話の 「二本の矢」は、酒に溺れて前後不覚の旗本 二宮一矢。
    断酒と、腹回りを細めるのと、、、、二宮と鮎川は約束するのだが、、、、
    二宮に料理を教える事で、酒の事から、頭を切り離すことに、、、、

    鮎川と、幼馴染の片桐のなんともいえぬ、歯に衣を着せぬ言い方が、微笑ましいのと、家斉の寛容な采配に、最後の話は、なんだかほんわかした話で、終わった。

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著者プロフィール

三重県伊勢市生まれ。愛知教育大学教育学部教職科心理学教室卒業。高校時代より古典と日本史が好きで、特に江戸に興味を持つ。日本推理作家協会会員。三重県文化賞文化新人賞受賞。主な著作に「包丁人侍事件帖」シリーズほか、「大江戸いきもの草紙」シリーズや『芝の天吉捕物帳』『冷飯喰い 小熊十兵衛 開運指南』がある。

「2019年 『料理番 旅立ちの季節 新・包丁人侍事件帖(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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