ありがとう、さようなら (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.87
  • (55)
  • (98)
  • (64)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 1354
感想 : 94
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041026397

作品紹介・あらすじ

作家・瀬尾まいこのもう一つの顔。それは中学校の「せんせい」でした。

本屋大賞ノミネート作家、瀬尾まいこのデビュー直後から3年半の日常をつづるほのぼのエッセイ。
給食で苦手な料理と格闘したり、生徒たちからの厳しいおしゃれチェックをなんとか切り抜けたと思えば、生徒会のやる気に感化されたり、合唱コンクールで胸がいっぱいになったり……。
奮闘する瀬尾せんせいと生徒たちのあたたかくてにぎやかな日常の合間に見える、それぞれの成長。「ありがとう」と「さようなら」がめまぐるしく襲ってくる学校という場所で過ごす日々は、瀬尾さんの作品世界すべてにつながる愛にあふれていた。
解説/北村浩子

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  瀬尾まいこさん、中学校教師と作家の「二足の草鞋」時代のエッセイ第二弾です。

     担任目線で観察した学校生活や生徒のあれこれが盛り沢山です。一見些細なことでも、何気ない日常から切り取った生徒との思い出には、限りなく愛情が溢れています。
     気になる子に対しても、よさを探し見つけて丸ごと認めようとし、子どもの言動から何かしら学ぶ姿勢があり、教師としての資質もバッチリですね。
     加えて、中学生のもつ未来へのエネルギーや可能性を信じて止まない様子からは、生徒との関係性のよさと共に、保護者の理解と信頼を得ているのも当然と思えます。

     ほぼ2〜3ページで1話という、日記あるいは学級通信のような印象で、軽〜くスルスル読み進められます。
     先生という職業、最近は多忙化が叫ばれブラック扱いですが、安心してください! 本書には深刻な話は一切ありません! 軽やかに書いているのが逆に凄いです。一貫して共通する瀬尾まいこさんの人柄が滲み出ているエッセイで、日常の、小さくても大切なことに気づかせてくれる一冊でした。

     教員の成り手不足の話も聞こえてきますが、瀬尾さんに憧れて教員を目指す人が増えてもいいような気がしますが、どうでしょう? 文科省も中高生への必読書指定してみては? と、余計な提案で終えるんですか! 悪しからず。

  • 瀬尾まいこさんによる京都での中学校教員と作家の2足の草鞋時代(2003〜2007)のエッセイ。瀬尾さんの小説はまだ3冊しか読んだことがないが、このようなバックグラウンドを持つからこそ生まれる登場人物やストーリーなのだなと納得がいった気がした。

    エッセイには教員としての中学校生活の様子が綴られている。思春期まっただなかの中学生の受け持ちは、大変なことも確実に多いはずだが、瀬尾さんのエッセイからは楽しさしか感じられず、この仕事が心底好きで、学生たちのことも愛おしくて仕方ないのだなと感じた。生徒たちからもとても慕われており、生徒思いの良い先生であることが窺える。エッセイだが、読後感は瀬尾さんの小説を読み終わった時のような温かい気持ちになった。

  • 学校である様々なこと大変なことを心底わかっている。その上で、「瀬尾まいこ」というフィルターを通すと、透明で、温かく、優しいものとして書いてしまえる。作者の稀有な才能だと思う。中学教師と作家の二足のわらじですごい。才能って不思議なものだとも思う。中学校の文化について初めて知ることばかりだったけど、いつか、自分の青春もこんなことだったのかなと思い出されるだろうなと思う。日常から素敵なことを見いだせる感性がほしいと感じた一冊だった。

  • 瀬尾さんが、現場にいながら執筆したというエッセイ。中学時代が懐かしくなる。中学生は難しい時期だと思うが、かわいく優しく頼もしい姿を見つけて表現されていて心温まる一冊だった。


    ★大人になると、逃げ道がいっぱいあって、すぐどうにかしようと考えてしまう。もっと中学生みたく、さらりと約束を守らないとな。

    ★でも、眠ることと食べること毎日簡単に手に入れることができる。毎日いろんなことがあって、悩みはみるみる溜まる。だけど、寝ることと食べることさえちゃんとしていれば、私の身体はまた働きたくなってしまう。

    ★だめな生徒なんて実際の学校の場にはいない。方法はどうであれ、窮屈で大変な学校と言う場で毎日を送っている姿は、すごい。そんな中で成長していく様子はキラキラしている。そんな生徒たちと毎日一緒にいられる仕事は、やっぱりすばらしい。

  • 担当の生徒を温かなまなざしで見つめつつ
    それを面白く、和やかに表現していて
    面白かったし、うるっとくる場面もあったし、
    自分の中学生時代を思い出し
    懐かしい気持ちにもなった。

    特に「N君のこと」「些細な親切」というエッセイは
    多くの読者の背中を押し、勇気づけてくれる作品だろう。
    暖かな気持ちになれた。

    振り返ってみると、中学校時代は楽しかったな
    いい先生にめぐり合い、多感な時期で
    今でも大好きな芸術作品にも多く触れた

  • デビュー直後の兼業作家であった瀬尾さんが、中学校教師としての出来事を綴ったエッセイ。
    いやエッセイというより日誌のような、学級通信ような、すごく身近であたたかな眼差しを感じられる内容と文章だった。電子書籍でさくっと読了。

    給食の鯖に苦しめられたり、てる子の出産をサプライズしたり、試験監督中に涙ぐんだり、修学旅行での失態を隠蔽したり、多忙ながらも奮闘する新米先生の学校生活はとても楽しそう。
    生徒たちに「はやく彼氏つくりな」とせっつかれる
    このときの瀬尾さんは20代後半〜30代ということで、まさにどんぴしゃで今の私と同じ年齢だ。
    だけど読みながら、思わず姿を重ねてしまうのは中学生当時の自分。文化祭、合唱コンクール、修学旅行、毎日の授業風景、他愛もない会話。
    やっぱり中学2,3年生のときのクラスは特別だったし、嫌なことも行きたくないと思ったことも数え切れないほどあるけれど、それでも青春や思春期に想いを馳せるときはいつも一番鮮やかに蘇ってくる。
    「ありがとう、さようなら」を繰り返しながら、あのときの担任の先生もきっと、こんな眼差しで私たちのことをみてくれていたんだろうな。

  • ポジティブな著者の姿勢から元気をもらえるエッセイでした。確かに実際は苦しい出来事も多い仕事なのでしょうが、それを前向きに捉えて行動することが素晴らしく、この様な先生の元で学校生活を送れる子どもたちを羨ましく思いました。次は教師を辞めた後で振り返って書いたエッセイを読んでみたいと思いました。

  • エッセイとしてはほのぼのとした良い読み物だと思いますが、あくまでも妹尾まいこさんのファンに嬉しい作品かなと感じました。
    瀬尾さんの作品と知らずに、中学校の日常とそこでの気持ちを描いただけとも取れる本書を手にしたら果たして引き込まれるかどうか。著者の魅力を発見できるだろうか。
    瀬尾さんの作品が好きで著者をよく知りたい、という方にお勧めの本ではないでしょうか。

  • まったりしたものが読みたくて。
    瀬尾先生、小説家デビューした後もしばらく先生を続けていたんだ。しかもリアルタイムで学校生活のことをエッセイにしてたんだなぁ。

    これを読むと、先生側の視点で学校や生徒を見ることができる。
    生徒の立場から見ると、自分の周りの子と、ちょっと離れた場所に先生がいる感覚だけど、先生から見ると思ってたより生徒ひとりひとりのことが見えていたのかもしれないと思った。
    だからこそ先生の役割は大切で、人生の先輩として生徒を導く必要がある。客観的にクラス全体が見えているのは、先生しかいないから。

    瀬尾先生の文章からはいつも、飄々としているというか独特のマイペースさが感じられる。先生だから偉そうとか、逆に謙遜する感じもなく、私は私、という自然体なスタンスが良い。実際はどんな先生だったんだろう。
    読んでいると本音も見えてくる。先生にはなりたかったけど学生時代は途中から学校が嫌いだったこと、教師の新人研修が嫌だったこと、自分ならやりたくないと思う学校行事があること、等。

    先生から見たら、変わらない毎日に駅伝大会などの行事が刺激的なことや、大人しい生徒達と比べると自分にちょっかいをかけてくる目立つ生徒が気になるんだろうな〜ということも感じ取れた。

    自分の学生時代を振り返ると、小中高は二度と体験したくないと断言できるほど不自由さを感じていた。気の合わない子とも仲良くせざるを得ないし、理不尽なことを言ったり独裁的に支配する先生に我慢していたし、学校には家とはまるで別人の自分がいた。
    もちろん楽しいこともあったし良い先生もいた。中3や高3は特にクラスの雰囲気に一体感が増す。大学生にもなると授業も選択制でだいぶ楽になる。それでも、学校という閉鎖空間には戻りたくない。

    でもこのエッセイを読んで、生徒のことが好きでかわいがっていて、時には生徒の目線にも立てる先生もいるんだなと分かった。先生もまだまだ成長中なんだと。

    生徒がリアルタイムに包み隠さず書いたエッセイも読んでみたい。毎日よく挫けずに早起きして登校しているし、勉強しているし、嫌な行事もこなすし、合う合わない関係なく生徒や先生と上手くやっていく。今考えたらすごいことで、やり遂げた自分を全力で褒めてあげたい(笑)

    私が大人になって分かったこと、悟ったことを学生の自分に伝えてあげたいし、生徒や先生色んな人がこのエッセイを読んだらいいのになと思う。

    20190625

  • 弱小野球部の人数が揃い、ようやく試合に出られた時のキャプテンの話が1番好きなエピソードかな。心がじんわり温かくなった。

全94件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×