まんがでわかるまんがの歴史

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047972

作品紹介・あらすじ

独自の発達を遂げた日本のまんがは、一体いつ、どうやって生まれたのか?豊富な資料を駆使し戦中、戦前まで遡って日本まんがのルーツを紐解くサブカルチャー研究コミック。まんがを読んでまんがを知ろう!

感想・レビュー・書評

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  • まんが原作者・評論家による日本まんがの歴史を、まんが家がまんが化したもの。
    いわば、まんがを学ぶための「学習まんが」である。
    現著者がネコのキャラクターと一緒に講義する形式で、取っ付きやすく敷居は下げてあるが、骨格となるのはかなり骨太な評論であり、核となる視点がいくつかある。
    まんが化されているために、百聞は一見に如かず的にわかりやすいのが美点である。

    最初に「キャラクター」について論じた後、江戸期・明治期をざっとおさらいし、大正アヴァンギャルドを経て、昭和へと進む。
    まずは、ミッキーをはじめとするディズニーのキャラクターが「パーツ」で構成されていることに着目する。戦中・戦後の漫画家はこうしたキャラクターの描き方を取り込んだ。巨人・手塚治虫は自分の漫画を「画」ではなく、パターンに則った「記号」の組み合わせだと考えていたという挿話が興味深い。近現代の日本のまんがでは、これに成長するという「身体性」と心を持つという「内面性」が加味される。
    そこに至るまでにどのような背景があったかというのが骨子となる。

    のちに「のらくろ」で知られる田河水泡は、実は前衛美術家であったという。「のらくろ」誕生からシリーズ終了までの流れをキャラクターの視点から読み解いていく。
    次の大きな流れは、戦争がまんがにもたらした影響である。戦時下の思想統制は、子供向けのものに関しても「空想」を排除し、「科学」的な創作物を強制した。その結果どうなったかといえば「物語」が消えていってしまったわけである。実は「学習まんが」の起源もここらあたりにあるようだ。表現が規制されていく中で、できる限りで抵抗を試みた漫画家もいるわけだが、その戦いは地を這うようなわかりにくいものにならざるを得なかった。
    戦後の巨匠といえばやはり手塚治虫である。手塚のストーリーが大きな物語に翻弄される「個」を描いているという論旨は慧眼だろう。物語の構成だけでなく、映画の撮り方を参考にするなど手法に関してもさまざまな試みを行っており、それらがすべて成功したわけではもちろんないが、新しいものに挑戦し続けるその姿勢がやはり巨人であったというところか。

    流れとしては1970年代あたりまでを追っている。その後に関してはまだまだ考察が必要ということだろう。
    少女まんがに関してなどはもっとさまざまな視点から議論することができそうだし、本書で扱われた各論に関しても異論はありそうだ。
    とはいえ、まんがはときどき読むけれどそれほどは詳しくない程度の門外漢にしてみると、まんがの歴史というテーマの奥の広がりが感じられ、刺激的で楽しく読める1冊だった。

  • 想像していた内容と全く違った。

    手塚治虫以降現代までの漫画の歴史をダイジェスト的に漫画でやわらかく説明するものを想像していたが、手塚以前を中心にした漫画の歴史を学ぶための「学習漫画」だった。

    小学校の頃、よく学習漫画を読んで、漫画と違ってつまんないなと思っていたが、この学習漫画は面白かった。

    この学習漫画が取り扱うのは戦時中の話が大部分。
    戦時の影響を漫画はどのように受けて、最終的に手塚治虫を代表するストーリーマンが生まれたか、が非常にロジカルに書かれている。

    まず、あまり知らなかった戦争中の漫画の時代背景を理解できることに興奮した。
    ディズニーの影響、戦時中の日本の思想取締の影響、大正時代の芸術の影響。のらくろの原作者の田川水泡が対象時代の前衛アーティストだったなんてのも知らなかった。

    日本初のアニメからの手塚が受けた影響、その手塚からトキワ荘グループや劇画グループが受けた影響。いままで点として知っていた情報が線でつながっていく快感がこの本にはあります。

    しかし「おたく」の研究力はすさまじい。

  • 大塚英志による日本マンガの歴史をまんがで解説した本。
    大塚説では、現在の日本マンガの起源は鳥獣戯画ではなく、ミッキーマウスと、少女マンガについてはミュシャとしているところが非常に興味深い。それらを原典の画像も引用しながら説得力のある論理で説明しているので、非常に納得感が高い。マンガ好きには必読の書である。80年代以降のマンガについての考察をする続巻を強く期待する。

  • 大塚英志さんの書いたものは、大政翼賛会についての本で読んだことがある。日本の風俗を含めた、マンガの歴史についてくわしい。

    本著では江戸時代の鳥獣戯画をはじめ、脈々と流れる日本のマンガの歴史について書かれている。手塚治虫がウォールト・ディズニーの描くミッキーマウスをもとに、アバターを生み出したという見解を打ち出す。

    確かに手塚治虫さんの描いたマンガで、顔の表情をどのように表すかという基本が生まれたように感じる。

    ただあとがきの「半端な右の人」という表現。とても印象が悪い。日常でそれを感じた出来事があったとしても、書くべきなのか。書籍には残っていくし、読後の後味が悪い。

  • 考察が深くて楽しい。かなりボリューミーだが、これでも話を手塚に絞ったことでこの程度に収まった感じで、全然語り尽くされてはいない。
    個人的には、「桃太郎海の神兵」における動物たちの無個性化を指摘した箇所ににハッとさせられた。

  • 2018/05/27読了


    大学の講義で使いそうな書籍であった、、

  •  「学習まんが」の体裁による日本近代漫画史(明治期~1970年代)講義。「ミッキーの書式」→「戦時下の漫画」→「アトムの命題」という枠組は、著者の既出の著作で繰り返し述べられており、目新しさはないが、それだけに「大塚漫画史論」を1冊で通読できる簡便性がある。現代日本の漫画表現の源流として、戦前輸入されたディズニー作品と、総力戦体制下の文化政策、そして何よりも「戦争体験」に決定的な影響を見出し、「鳥獣戯画」以来の「伝統」をアプリオリに肯定する俗流日本文化論的な見方を論破している。漫画を取り巻く社会状況を重視しており、漫画に限定されない文化史論としても読める。問題は、著者の大塚自身がキャラクターとして終始登場することで、その微妙に「偉そうな」造形や時々にじむ説教調・アジテーション調(立場は正反対だが小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』みたいな)のせいで、アカデミックな内容が正しく理解されない危険性があるのが惜しまれる。

  • 最初は鳥獣戯画~手塚~現代程度のことが書いているのだろうと思い軽く詠んでみたけど、全然本格的に漫画の歴史がかかれている。漫画における時代背景、戦時中のプロパガンダ、ファシズム下の思想、歴史の中で漫画がどういう役割を持ちどうやって表現を広げてきたかが詳しく書いている。手塚漫画が好きな人、漫画が好きな人は是非読んで欲しい。現代における漫画はどう時代に流れて行くのか30年後に見たときどうなるのか考えが深くなる本でした。

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著者プロフィール

漫画家。キャラクターデザイナー。代表作は劇場アニメ化もされた「ヨヨ・ネネシリーズ」、『三つ目の夢二』、『多重人格探偵サイコ』のチビキャラ版『多重人格探偵サイチョコ』など。

「2019年 『カイと怪獣のタネ ③』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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