週末カミング (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 315
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041048276

作品紹介・あらすじ

30代で独身、恋愛、結婚に縁がなく、平日は生活のためにひたすら働いている女たちの何気ない日常がこまやかな感性とともに描かれている。だからこそ、、週末のどこかへの旅が特別になる。
ひょんな事故から乗り合わせることになったドライブ――日常からふっと「週末」ぐらいの距離感で抜け出したその先にあるもの――。

「野性時代」「デジタル野生時代」に掲載した短編に、「モンキービジネス」に掲載、英語版にも載っている「海沿いの道」、「わたしがいなかった街で」につながる「ハルツームにわたしはない」も収録した全8篇。どれも週末にまつわる話です。(著者オフィシャルサイトより)

感想・レビュー・書評

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  • 初読みの作家さんの、週末をテーマにした短編集。主人公は20代後半〜30代の女性がメイン。どれも一見「普通」の週末だが、その普通さが良い。普通さをリアルに文章で表現できるのだからすごいなと思う。住宅街に立ち並ぶ家々の描写や食べ物の描写などもうまいと思った。舞台は東京か関西で、具体的な地名駅名も出て来る。例えば、結婚式2次会のあった池袋から友人の友人の誕生会のお好み焼き屋のある下北沢に電車で移動したり、友人らと姫路城を見にいくためドライブに出かけ道の駅に立ち寄ったり。主人公は、登山グッズのショップで働いてる人だったり、国立大学の受験生だったり、一人暮らしの家で風邪をひいて一人で年越しする働く女性だったり様々。色々な人が過ごす「普通」の週末の話は、それぞれの日常が尊いものなんだなぁという、前向きな気持ちにしてくれた。

  • 短編集。特別な予定があったり、いつも通り働いていたり、様々な週末を過ごす8篇。
    さりげない描写が、はっきりとしない自分の感覚や記憶のようなものを刺激してくる。

    「ハッピーでニュー」
    正月の人通りの少ない商店街の描写で、冷たい空気に鼻がすん、となる感じを思い出した。

    「蛙王子とハリウッド」
    ほぼ初対面の相手との距離感、興味。この興味がリアルだと思う。
    もう会うこともないであろう相手との交流は日常と地続きなのに、日常に戻る途中ですでに遠い気がした。

    「地上のパーティー」
    世の中には色々な人がいて、それぞれ違っている者たちが同じ空間で過ごしていても特に何も思わないけれど、こうやって見るとカオスだ。
    改めて意識すると面白いな。

  • 『ハルツームにわたしはいない』が一番よかった。一番柴崎友香らしい。いつものテーマでいつもの書き口ではあるのだが、短編になったぶん旨味がギュッと凝縮してはっきりしたような印象。
    私がいつ、どこで生まれ、いま、ここで生きているのは何故なのか。その素朴な疑問を実生活の中で問いかけ続ける。無理に形而上学や哲学の範囲に持っていかず、あくまで実生活の中で問いかける姿勢にとても親近感を感じる。何事も等身大なのが柴崎作品のいいところ。

  • 週末にゆっくり読みたくなる本。
    何気ない日常を切り取ったストーリーだけど、どの作品もなんだかほっこりする。
    通勤中に読んでしまったので、また忘れた頃に週末にゆっくりと読み直したい。

  • いろんな人の何気ない週末を覗き見しているような短編集。
    週末、私も成り行きでもう少し動いてみようかな。

  • 解説で瀧井朝代が言うように、確かにどの作品にも「生の一回性」を意識する瞬間がある。
    だからこそいまここにいる自分、自分がいないどこかやいつかに思いを馳せる。
    場所。時間。記憶。取り返せない過去。他人になれない自分。
    それらを「無理なく思う」のが柴崎友香の作風なのだろう。
    大雑把に言えば作中で行われているのは、歩く。話す。それだけ。
    それだけで思考が広がり、「深まりそう」になる。
    深く考え込む一歩手前でまた、歩く。話す。豊かだ。

    ■ハッピーでニュー
    ■蛙王子とハリウッド
    ■つばめの日
    ■なみゅぎまの日
    ■海沿いの道
    ■地上のパーティー
    ■ここからは遠い場所
    ■ハルツームにわたしはいない
    ■あとがき。文庫版あとがき。解説は瀧井朝世。

  • その懐の深さが、私は泣きたくなるくらい好きだ。
    あとがき、瀧井朝世氏の解説も含め良かった。
    ハルツームの話好きだな〜。会社で昼休みに読み進めていたが、いつもほっこり幸せ気分になっていた。

  • そういえば、友達の友達とか、その場で会ったよく知らない人と出会う話が多い。もう二度と会わないかもしれない人の話を聞くのは楽しい

  • いくつもの、色んな人の週末を記録した短編集。
    柴崎さんは、登場人物に絶妙な距離をおいた視点でいつも文章を書いてるように感じる。私にとって、こんなに描写から様子を脳内によく描けるものはなかなか無い。

    瀧井さんの解説が本当に言いたいことを代弁してくれてる。普通に生活するという一回性の連続に対して自覚的であることで、なんにもない日常、つまり人生の肯定につながる。
    言いたいことはまだまだあるけど、たまに読み返したいなと、思う。

  • 悪い意味で想像していたストーリーからかけ離れてた。

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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