ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス

著者 :
  • KADOKAWA
3.62
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054734

作品紹介・あらすじ

 「われわれがそれ(角栄潰し)をやった」。K長官が漏らした真意とは!?
「自主外交」で角栄はアメリカに潰された。
国際ジャーナリストが15年に及ぶ取材で掴んだ、数多くの決定的新事実!!

田中角栄はなぜ逮捕されたのか? その理由は「角栄の外交」に隠されていた。
アメリカは「日中国交正常化」などの「角栄の外交」をひどく嫌っていたのだ。
その後発覚した、戦後最悪の国際的疑獄となったロッキード事件。そこでアメリカは、密かに角栄の訴追を可能にする「ある細工」をした。
外交の対立も、角栄訴追に関わる秘密も、米機密文書には記されていたが、日米の根幹に絡む『巨悪』の深い闇は文書が公開されず、解明されなかった。

本書は「陰謀説」の真偽を徹底検証し、初めて証拠を挙げて解明する!
ロッキード事件の全容は、上記のように長らく解明されてこなかった。
結果、数多くの陰謀説が流布する事となる。「誤配説」、「ニクソンの陰謀」、「三木の陰謀」、「資源外交説」、「Kの陰謀」……。
米国立公文書館、ニクソン・フォード両大統領図書館、CIA、日本側資料、日米関係者らを取材・調査。
インテリジェンスの機微を知り尽くした国際ジャーナリストが15年に及ぶ取材から、初めて真の「巨悪」の正体を描き、巨悪の訴追が阻まれた理由に迫る!!
なぜ、首相の犯罪は繰り返されるのか? その構造までが浮かび上がる――。


【目次】

まえがき
田中がアメリカに嫌われた真の理由を明らかにする/Tanaka文書の経緯を逐一追う/巨悪の正体/陰謀説の真贋

第一部 追い詰められる角栄
序 章
第一章 発覚の真相
第二章 三木の怨念と執念
第三章 ロッキード事件はなぜ浮上した
第四章 キッシンジャーの「秘密兵器」
第五章 角栄の運命を決めた日
第六章 L資料の秘密

第二部 なぜ田中を葬ったのか
序 章
第一章 日中国交正常化に困惑した米国
第二章 北方領土で米ソが密約
第三章 田中文書を渡した真意

第三部 巨悪の正体
序章
第一章 児玉の先に広がる闇
第二章 日米安保体制を揺るがす

感想・レビュー・書評

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  • 分厚くてかなり読み応えがありますが、真相が理解できました。

  • 『ロッキード疑獄』を中心に据えた戦後日本とアメリカの政治の裏舞台を見事に調べ上げた作品。

    “ロッキード疑獄”をその事件に閉じて書かれたものではなく、その背景となるあの時代のアメリカ、日本、そして冷戦体制下で見据えたアメリカの姿が描かれている。
     それは、自由、民主主義を表面にかざしてわれわれ戦後日本人に憧れを感じさせた憧れのアメリカの裏に潜む『巨悪』を十分に伝えるものでもあった。  
     
     日本の政界においても同様で、佐藤栄作→田中角栄→(三木武夫)→福田赳夫→(大平正芳)→中曽根康弘と続く自民党政権の中でも脈々と受け継がれていたのだ。
     
     田中は、アメリカに嫌われていた。(米政権のコントロールが効かなかったから)
     
     インテリジェンス出身のキッシンジャーの狡猾さと性格の歪み具合。

     児玉誉士夫のことをもっとリアルにしりたくなった。出生や世に出て身をなした経歴は書かれてはいるが彼自身のリアルな言動は闇に包まれた部分が深く大きい。なぜ、ロッキード社は21億円もの金をポンと渡すことにしたのか、そんな大金をどうしたのか?

     中曽根の児玉誉士夫との昵懇さと、正義派の三木武夫のもとで幹事長を務めながら、『裏で揉み消し』工作を図っていたしたたかさが、表の言動と裏腹に中曽根政治姿勢の不気味さを感じさせられる。

     岸信介をはじてめ戦後囚われた戦争犯罪者たちが、アメリカの政策変換で見事に復活し、『反共の砦としての日本』作りのためにアメリカに操られながら、国民の血税をかっさらっていく姿が恐ろしく描かれている。


     
     

  • 15年の長期取材による本書。数々の公文書等を丹念に調べておられ、説得力があった。
    重苦しい気持ちになった。
    「ロッキード事件なんて昔の話をなんで私は読むのか」と思ったが、「昔の出来事」と、そこで途切れているわけではない。当たり前か。
    これはアメリカと日本の政府、自民党、政治家、今も続いていることなのだろう。アホみたいに、アホみたいな戦闘機を大量に買わされて多額の支払いをかかえる今の日本。
    自民党政府が続く限り仕方がない。反米の政治家はアメリカによって潰される。アメリカの国益にかなう政治家しか勝てない。まあ、そうでない政治家を立たせる、選挙の力で、というところまでも今の日本国民はできていない。いつまでもこのままでいいのか。こんなことでいいのか。

  • 調査報道の佳作。星四つ⭐️

  • よく調査をしていると思うが、全体として読みにくく、疲れた。

  • 熟練の国際ジャーナリストがロッキード事件について15年かけて洗い直した作品。以下の大きく5つの陰謀説を中心に米国で公開されている資料にも丹念にあたってその真贋の検証を中心に展開されている。
    1.ロッキード社の秘密資料(ピーナッツの領収書とか)が偶然誤って議会に配送されて事件が発覚した。
    2.ニクソンが自分の意に沿わない田中角栄を嵌めた。
    3.三木武夫が政敵である田中角栄を葬るために強引に追求を行った。
    4.田中角栄が資源外交で米国から睨まれて嵌められた。
    5.キッシンジャーが意に沿わない田中角栄を嵌めた。
    こうして書くといくつか重なっているように見えるが…興味深かったのはこの米国そのもの、またはニクソンかキッシンジャーの虎の尾を踏んで嵌められた、というのは伝聞というか噂話をもっともらしく田原総一朗が広めたものらしくそれだけでも彼がジャーナリストを名乗る資格が無いことが分かる。実際にはニクソンやキッシンジャーが意に沿わない田中角栄を嫌っていたことは事実のようだがかなり厳しく対応を検討していて陰謀と言えるようなことではなかった、ということがよく分かる。当時経営不振に陥っていたロッキード社が地元にあるニクソンはロッキード社への融資に国の保証を無理矢理付けていた。なのでなんとしても倒産だけは避けたく販売不振の旅客機をなんとしても日本に売りたかった。つまり陰謀を巡らせるようなゆとりはなかった。また融資に保証をつけていた関係で議会はその経営をチェックする必要があり監査法人から正式に提出された資料に領収書などが含まれていた。キッシンジャー率いる外交筋は日米関係に亀裂が入るのを恐れて日本の政治家の名前が分かる資料を日本の司法当局に渡すことにむしろ難色を示していた。三木は強硬に資料の公開を迫ったがあくまで司法当局の者だけが見られる、という条件をつけられ強引な追求はできなかった、などなど面白おかしい陰謀説が次々と検証されていって本当はどういう事件で誰が一番悪かったのか、が暴かれていく。キッシンジャーがかなりとんでもない奴だということもよく分かるのだがそれを超える巨悪がいる、という展開でかなりのページ数も苦にならず読めてしまった。日本にもこういう時代あったんだな、としみじみ思わせられた。あっと驚く展開こそないけれども非常に面白い作品。おすすめです。

  • キッシンジャーによる選別で、児玉ルートの先は隠蔽され、田中は切り捨てられた。
    面白いストーリーではあるが、田中をそこまで追い落とす理由が、やや説得力に欠けるように感じた。

  • 日本昭和史の中で、大きな事件となったロッキード事件の調査記録。客観的な事実、記録を踏まえて、真実に迫っているため、説得力を感じた。地道な調査に基づくアプローチの仕方に共感した。
    巨悪と評した内容までは容易に迫る事ができなかったが、巨悪の輪郭を伝えてくれたおかげで、曖昧だった近現代の歴史を、流れと全体像で理解できた気がします。

  • p48 誤配はなかった

    p61 砂防会館のエレベータに乗り込むとき、大勢の警視庁SPがいる前で、「おい、朝賀、トライスターってなんのことだ」 朝賀 飛行機の種類らしいですね

    このようにして田中は無関係という話が広がっていった。または、田中自身が意図的にそんなうわさを広げたとみていい

    p154 キッシンジャーは、いかに姑息なことをしても、我が身を振り返って反省するような人物ではない

    p177 現実の結果を先取りして言えば、田中角栄の名前を記した文書を日本側に渡している。それは、日米関係に過度のダメージを与えないという判断を国務省がしたからだ、ということになる。その反面、日米関係に回復不能なダメージを与えると想定された文書は渡さなかった、ということになる

    p214 日本側に提供されなかった資料の中に、「有償軍事援助(FMS)」による軍用機の対日輸出関係の文書が多数含まれていてもおかしくない

    巨額のFMS代金。その一部が右翼の児玉誉士夫や、政治家の懐に入っていたことが証拠付けられれば、日米安保体制は危機に瀕する、と国務省が恐れた可能性がある
    チャーチ小委の主席顧問ジェロームロビンソンは筆者に「小委の調査がインテリジェンスの領域に入ったので、調査は終了した。」と明言していた


    p268 どんな陰謀も動悸なしに企むことはない。動機があるから企みを実行する。動機はしばしば、怒りから生じる。怒りは突発的なものであり、時とともに鎮まって、忘れてしまえば、雲散霧消することもありえる
    だが、怒りは度重なると憎しみとなり、さらに復讐の動機を生む。復讐のための陰謀を企むと、純粋性を失い、さまざまな計略を考える 哲学者の三木清は、そんな人間の業を教えてくれる

    p271 キッシンジャーとニクソン大統領が、政治家田中の外交政策を嫌悪していた  アラブ寄りと独自の日ソ外交も

    p374 田中は、キッシンジャーの要求をはねのけて、「米国の戦略に従わず、親アラブの中東政策を発表、自主外構を貫いた

    p431 キッシンジャー 正義と混乱より不正義と秩序を重視する人物

    p452 キッシンジャーの田中邸訪問 ちょうど現場にもどる犯人のような心理状態で

    p468 刎頸の友 首を切られても悔いのないほどの、生死を共にする親しい友

    p503 佐々木秀世 ロッキード事件の永遠に明るみに出ない部分での深い関与があり、そのへんを検察につかまれて、因果をふくめられたのではないか

    p518 ロッキード事件は、3ルートで強制捜査が行われた。田中角栄を頂点とする民間用旅客機売り込みこう先の贈賄事件が断罪されたのは、そのうちの2ルート、「丸紅ルートと全日空ルートである。3つ目の児玉ルートとダグラスグラマン事件はまさに、未解明の安保利権の争奪戦だった

    p519 国産化を白紙撤回した理由は、田中の政治判断とする立場の再確認であり、日本政府はP3Cの購入を求めたニクソンからの圧力を認めたことになる

    p538 児玉誉士夫のネットワークと、米中央情報局(CIA)の対日工作が重なり合う部分がチャーチ小委のとっきー度事件調査で露出し始めたら、調査終了

    p549 ロッキー事件の脇役 シグ片山、鬼俊良、福田太郎、川辺美智雄

    p563 中曽根は巨悪側の人

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2023年 『SNS時代のジャーナリズムを考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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