接触 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041057308

作品紹介・あらすじ

私は触れた他人の身体に乗り移ることができる“ゴースト”。ある日「私」は殺され、咄嗟に犯人の身体に避難した。なぜ私は殺されたのか。犯人の姿で探るうち、一人の凶悪なゴーストとある組織に行き当たる。

感想・レビュー・書評

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  • 私はケプラーと呼ばれる"ゴースト"だ。
    他人に触れると、その身体に乗り移ることができる。
    ある時、身体を借りていた女性が、地下鉄の人混みで銃撃された。
    私はとっさに近くの人へ乗り移り、やがて襲撃者の身体を乗っ取った。
    この男は何者で、なぜ私を狙う?
    答えの鍵は、かつて乗り移ってきた宿主達にあるらしい。
    私は長い長い人生を思い返しながら手がかりを辿ってゆく。
    (あらすじより)

    ハリーオーガスト15回目の人生という作品がデビュー作で、タイムリープものだけど同じ人生を記憶を持ったまま無限に繰り返すというストーリーで面白かった。

    この『接触』も肉体を捨てて精神(魂)のような存在になり、他人の体を乗っ取って生きる能力を持った通称「ゴースト」が主人公だ。

    寿命も老いも無く、宿主が死にそうになったら他人に乗り移ってサヨナラ。
    大統領にもなれるし、映画スターにもなれるし、性別も自由、容姿も選びたい放題。

    最強じゃん!

    と、思うじゃん?

    この作者は、「どうしてそんな能力が成立するのか」は棚上げして「もし、最強に近い能力が実在したらどうなるのか」を徹底的にリアルに描写する。

    例えば、宿主は乗っ取られている間は記憶がない。

    他人に腕を掴まれたと思ったら、次の瞬間には全く別の場所にいて、下手すると数年〜数十年時間が飛んでいる。

    当然パニックになる。

    一方でゴースト達も悠久の時を生きながら、生きる目的を失い、愛を求め苦しむ者もいる。

    誰の人生でも体験できるが、自分で築き上げた人生は得られない虚しさ。
    時間とともにアイデンティティが崩壊していくのだろう。

    話の主軸は、ゴーストによって「時間を奪われた」覚えのある被害者の会が、ゴースト撲滅を目的に作った暗殺組織に追われる展開で進んでいく。

    記憶が飛んだ人を丹念に調べ、着実に追ってくる被害者の会。

    そこに、組織に潜入した快楽殺人犯的なゴーストが絡み、血みどろの争いが起こる。

    この作者は、基本的にリアルで、血みどろです。

  • ミステリやサスペンスとして読み進めておりましたが終わり方は観念的でした。あと結構血腥い描写多いです。

  • 肌に触れるだけで肉体に乗り移る「ゴースト」。若い女性の身体を着た「私」は突然何者かに狙撃される。とっさに他人に「ジャンプ」して犯人を追うと「私」はその正体不明の殺し屋に乗り移った…。
     冒頭、瀕死の宿主に「愛してるよ」とささやく主人公。享楽的に肉体を乗り換える無責任なゴーストや恐ろしいサイコパスもいるが、「私」は可能な限り事前調査をし、宿主の人生や人間関係のメンテナンスをするタイプで、細々とした手間をかけるのが面白かった。敵側の人間の身体を借りての追跡劇の合間に、18世紀カイロや帝政末期のロシアなどでの数奇な体験をはさみ、全く長さを感じさせない。バディもの的展開も好み。
     
     あと、これまで翻訳での女性的な語尾(「~だわ」「~よ」など)はなるべく無いほうが良いのではと思っていたが、この作品ではそういった役割語によってかえって面白みが増して新鮮。ゴースト達は老若男女問わずひんぱんにジャンプを繰り返すのだが、さっきまで男性(or女性)だった人物が急に女性的(or男性的)なしゃべり方をするので、こちらまで一瞬面食らってしまって楽しい。

     「大小さまざま、想像しうるかぎりあらゆる形の身体に住んでみた結果、私が達した結論は次の三つ。若さを満喫できるうちに運動に励み、背骨をいたわり、選択の余地があるなら電動歯ブラシを使うべし」「人様の身体を何十年も盗みつづけて。その程度のことしかわからないのか?」「うん」(p.178)これは肝に銘じておこう。(2015)

  • 前作「ハリー・オーガスト、15回目の人生」に続く二作目
    人に触れるとその人に乗り移ることができる「ゴースト」として長いあいだ生きて来た男(女?という性別がない存在)の話
    ゴーストの存在を知る謎の組織から命を狙われる様になり、自分ではなく宿主(乗り移った人のこと)を狙われたことをきっかけに組織に戦いを挑む現在の話と、これまでに生きて来て経験した事、事件に関する過去の出来事の二つの場面が交互に語られていく。
    前作の時も感じたのですが、何故かこの人の話はダレる…のか壮大過ぎるのか

    ・そして表紙のデザインの印象とは違うハードな場面が多い。
    ・アクションや乗り移るたびに描写される様々な人たちも面白いけど、ハリーオーガストの時同様、長く生きる人物から見た自分達の「短い人生」について考えてしまうので読むスピードを下げる下げる…やや憂鬱になりました。

    ・邦題の「接触」も「直訳過ぎてこれでいいんだろうか?」と疑問でしたが…読み進めるにつれて様々な点、テーマ、モチーフがつながりアクションサスペンス寄りではない切ない感じがカバーデザインに現れてたのかと…納得。

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著者プロフィール

1986年4月27日生まれ。イギリス出身。14歳にして『ミラードリームス』(ソニーマガジンズ)でデビュー。キャサリン・ウエブ名義でヤングアダルト向けファンタジー作品、ケイト・グリフィン名義で大人向けファンタジー作品を多数発表するなど、多彩な執筆活動を行っている。「クレア・ノース」は、これまでとは全く異なる作風の今作を発表するにあたって使用した名義である。

「2019年 『ホープは突然現れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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