移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041070680

作品紹介・あらすじ

国民国家の「エラー」にされた人々。
彼らから見た、移民大国・日本と世界の姿。
日本、中国、新疆ウイグル自治区、台湾をめぐった傑作ルポ!!
いま、世界のルールは動揺している。「境界に置かれていた人々が、ルールの書き換えを強く要求する時代になったのだ。
我々は、彼らを知らなくてはならない――。

日本で生まれ育ったにもかかわらず無国籍者となった女子大生。
中国の軍閥高官の孫だったにもかかわらず夜都の住人を選んだ男。
移民、難民、無国籍者に、暮らしていた国が滅びた遺民、そして国家から切り捨てられた棄民など。
国民国家の「エラー」にされた人々の実態とは? 彼らの眼に移民大国・日本はどのように映っているのか? 
日本、中国、新疆ウイグル自治区、台湾をめぐり、国と国の境界線に立つ人々、「境界の民」に迫った傑作ルポ!!

<本書に登場する境界の民>
・日本で生まれ育った「無国籍者」。難民二世のベトナム人
・日本人も信用できない四面楚歌。懊悩するウイグル人
・夜都・上海に生きる軍閥の末裔。『文藝春秋』を愛読する中国人
・日系企業・メディアを見限った漢奸の日本人と中国人
・日本にも中国にも媚びない“ナショナル”を再構築する台湾人

※本書は2015年2月に小社より刊行された単行本を加筆修正の上、文庫化したものです。

感想・レビュー・書評

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  • 安田峰俊(1982年~)は、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員も務める、ノンフィクション作家。立命館大在学中に中国・深圳大学に交換留学した経験から身に付けた流暢な中国語を駆使した、中国関連の書籍や雑誌媒体、テレビ等での活動で特に注目されている。2018年出版の『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』で城山三郎賞及び大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
    本書は、2015年に単行本で出版された『境界の民』を加筆修正の上、2019年に文庫化されたものである。
    本書のテーマは題名通り「境界の民=マージナル・マン」であり、取り上げられているのは、在日ベトナム人、日本ウイグル協会、日本人と中国人の間に生まれた女性と幼少期から日本で育った中国人、中国の国共内戦に敗れた国民党高官の息子、台湾のヒマワリ学連等、日本及び著者が得意とする中国に関わる「境界の民」たちである。
    著者は文庫版あとがきで、「当時の自分はよくも、こんなに扱いが難しい題材を選んだものである-。」と語っているのだが、確かにこのテーマは、難しくも、現代の世界において、最も重要なテーマのひとつである。日々の国際報道を見ていても、米国や欧州各国での移民・難民の排斥を唱えるナショナリズム/ポピュリズムの高まり、香港や台湾での中国の支配力(影響力)強化に対する反対運動、中東シリアの難民問題、ミャンマーの少数民族ロヒンギャ問題などが取り上げられない日はなく、多くの国際的な問題の根源(というか、その結果)はここに見られるとも言えるのだ。
    日本の人びとは、世界の他の国々に比べれば概ね単一の民族(琉球の人びとやアイヌ民族はもちろんいるが)による、海に隔てられた島国であることから、こうしたテーマに対する感度が相対的に低いと思うのだが、最早、我々日本人だけがこうした問題から目を背けていることはできない。
    最近は、身近にも移民や日本人と外国人の間に生まれた人びとが間違いなく増えているが、我々日本人にとって大事なことは、彼らを単なるステレオタイプで捉えるのではなく、彼らを理解するように努めること、更には、それを基に世界の人びとを想像することなのではないだろうか。
    世界を偏狭なナショナリズム/ポピュリズムが席巻する今こそ、手に取る価値の大きい一冊と思う。
    (2019年11月了)

  • 国境の隙間にいる人たちを取材した旅の記録。埼玉のベトナム人タウン、新疆ウイグル自治区での中国共産党の弾圧、上海の日本人社会、上海の日本人向け風俗店を営む中国人マスターの一族の話、国自体が「隙間」の存在である台湾、という形で章が立てられている。

    取材されたのが2013・2014年で初出が2015年。4年を経て新疆ウイグルでのウイグル人達への監視体制の強化が進み、台湾の政治情勢よりも香港への中国の関与が大きくなっている。

    現在コンビニで働く外国人のアルバイトの人たちの在留資格で出来るかはわからないが、仮に一部の人たちが永住するといわば移民一世となる。彼らの子ども達が社会人になる頃はどうなるのだろうか。

  • 安田峰俊『移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々』角川文庫。

    2015年に刊行されたルポルタージュ作品を加筆修正、文庫化。

    以前読んだこの著者の『和僑』と同様、主張するところが見えず、全体的にぼやけた印象で何も心に響くものが無い。移民、棄民、遺民と呼ばれる人びとが居るよみないな感じで、全くつまらない。

    国家の政治情勢や紛争により移民を余儀無くされた人びと、国家により切り捨てられた人びと、国家を失い、遺民とならざるを得なかった人びと。日本に渡り、新たな生活を始め日本に馴染んでも、或いは二世として日本で産まれたとしても、本当の意味で日本にも母国にも居場所は無いという空虚感。彼らから見た日本と世界は……

    本体価格840円
    ★★

  • とても面白かった。
    ベトナム難民2世、ウイグル、台湾ひまわり学運などどれも今読んでも時勢に合う新鮮な話題で、筆者の先見の明に敬意!

    ひまわり学運のときに筆者が感じた「情緒的な感情の揺れ」も興味深かった。
    もちろん、記者はある対象に強い思い入れを持ちすぎると公正な取材・執筆ができなくなるし、常に冷静に観察することを忘れてはいけないと思う。駆け出しながら同じ職業についた私自身、それを日々痛感するし忘れてはいけないと思っている。

    でも、そんな職業的倫理と、個人的な好意を抱くことって両立し得ないのだろうか?

    自分の心から応援したいものに蓋をし、永遠に当事者ではなく傍観者であり続けないといけない。
    一生何かにフルコミットできない。
    もし記者の正しい生き方がそれであるのなら、一抹の寂しさが拭えないな。
    駆け出しの若者として。

  • 毎日新聞掲載2019728

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著者プロフィール

ルポライター

「2023年 『2ちゃん化する世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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