- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041074435
感想・レビュー・書評
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『星の子』、『こちらあみ子』と続き、今村夏子さんの作品を読むのはこれで3作目です。
読み終えて、やっぱり大好きな作家さんだと改めて実感しました!
穏やかなで淡々とした日常の中に、主人公を始めとした純粋でピュアな登場人物の温かい描写と、取り巻く人たちの時に残酷な行動や展開、そのギャップのある雰囲気がたまりません。優しく温かい空気の中でもどこか不穏さを感じてハラハラしながら読み進めました。
本作は三編入った短編集ですが、2編目と3編目は視点が変わった連作になっています。中盤までが結構せつない展開だった中、結びは救いのある終わり方で良かったです!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この著者はすごい。明確でないものを物語にするのが上手い。解説の言葉を借りるなら「交換可能」。これをあひるはもちろん他人の子どもと孫やおばあちゃんの存在などあれだけ思い尽くした対象もいずれ忘れ交換できてしまうという、こわい本。
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「あひる」「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の三篇収録。
「あひる」は、河合隼雄物語賞受賞作。
作者の今村夏子さんは、「むらさきのスカートの女」で、第161回芥川賞受賞(2019年上期)。
中学生におススメの本を常に探しているのだが、どうかなぁ、とおもって題名に惹かれて手に取った。まず、パラパラと開いておもったのは、文庫本なのだが、ものすごく、行間がとってあって、読みやすい! これは小学生にも中学生にも読む気がするに違いない(「老眼に優しい」、といえる)。しかも、短編が3つ。ますますいい!
読みやすく、そして、書いてあることは難しいことは一切なくて、どこかにあるような日常風景がつづられていた。
はてさて、だれが読むのにふさわしいのだろう?
書いてあることは理解できるけれど、いったい、なにを言わんとしているのだろう。
もしかして、もしかして、、そういうこと?
と、深読みがはじまる。深読みしてみるとすると、とっても怖い人間心理や、社会現象が描かれている、そんな作品です。
作者は特別になにも語らないで淡々と描写をする。読み手の成長に合わせて読み手が理解する。読み手の経験値が高ければ、もしや、これは、あれを意味するのでは?と憶測していくことになる。
そういう余白がいっぱいの短編集だとおもいます。
目線は子ども目線の作品。
色々考えたうえで、やはり、中学生におススメの一冊に選ぼうとおもいました。 -
今村夏子はエンターテイメントと純文学と児童文学のハイブリッドだなと。あひるのミニマルな文体とパンチラインの強烈さはホラーなのかコメディなのかわからなくなる。余白の素晴らしさも含め、人間の「気持ち悪さ」を浮き彫りにする手腕はただただ見事。
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『星の子』の人だったのか!
でも、読んだ感じでは思い出さなかった。
家にあひるがやってきた。
停滞していた家に、子供たちがあひる目当てで遊びにくるようになり、お父さんとお母さんは、その時間が愛おしかったんだと思う。
子供たちの方が我が物顔になって、主従が逆転しだした時、孫を連れた弟の登場によって、一気にクライマックスへ持って行かれる。
え、え、ここ、クライマックスですか!?
と唐突に弟に怒られ、ふと、姉って何者なのよ、と思う。
この作品の語り手であり、資格試験の勉強に打ち込みながら、停滞を生活としている、姉。
え、え、結局お姉さんって……。
こ。怖い。この話、めっちゃ怖い!!
と「ひたひたと」寒気に襲われた所で終わる。
生活の持つ、澱みが上手い。
それとなく、忍ばせて、揺蕩わせる感じ。
おばあちゃんシリーズ二作は、「スクラップアンドビルド」を思い出した。
老人の覚醒って、なにかを外れてしまったようで、怖い。けど、尊い。なんだか、パラドックスだ。
とにかく薄いから、読んでみて。
途中から、わわわとなるから。わわわだから。 -
「きたない軍手」と「大事な手袋」
主観は時として恐ろしい客観性を生み出す。
それを家族という形で歪に生み出した傑作。
あひるを可愛がる家族、おばあちゃんを取り巻く家族、モリオ兄妹を取り巻く家族。
読んでいると背筋が寒くなり、涙を流す。 -
「こちらあみ子」に続いて今村夏子さん2冊目。
深い。心がざわつく。ただの喜怒哀楽で表せない何とも言えないわからない感情が湧く。
まだ2冊目だけど、今村夏子さんの作品好きです。