ししりばの家 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041085431

感想・レビュー・書評

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  • 今回も怖くて一気に読んでしまった。
    比嘉姉妹の絡ませ方と、他の人達を自然に巻き込むのが本当ーにうまいなーと思う。文章もぞわぞわ、まさに砂がずっとどこかにまとわりついているような不快感があってよかった。
    今回は人間が持っている怖さの出方が控えめだったかな、とは思う。

  • 昔からアサリのお味噌汁が嫌いだった。
    砂抜きが甘いせいで、食べている途中で『ガリッ』と砂を噛んでしまうあの感触。今思い出してもざわざわする。潮干狩りも全然楽しくなかったし、海水浴もあまり好んでは行かなかった。海を見るのは好きだけど、少し遠くから眺めるくらいのほうがいいのかもしれない。
    砂は、とくに大量の砂は恐ろしい。昔読んだ阿部公房の『砂の女』を読んだときも、その息苦しさに眩暈がしたのを覚えている。
    この話は、普通の家族が住んでいるように見える普通の家が、まるで意志を持ったかのような砂に侵食されていく恐ろしい話だ。
    以前読んだ『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』に比べると、怖さもストーリーも数段劣るようにわたしには感じられたが、それでも、琴子の幼い頃を知ることができたのはよかったと思う。

  • 気持ち悪い家、家族。

    澤村さんの作品を読むと、怪異より人間が怖いと感じる。

  • 比嘉姉妹シリーズ第三弾♪

    夫の転勤先の東京で、幼馴染の平岩と再会した果歩。しかし招かれた平岩家は不気味な砂が散る家だった。怪異の存在を訴える果歩に異常はないと断言する平岩。おかしいのはこの家か、それとも、わたしか――?

    うーん?ゾワゾワと怖いし、面白かったんだけど、なんだか物足りない感じ?(^◇^;)

    そもそも、こーんなオカシイ家に、オカシイと思いつつ、何回も出入りするのがどうよ?って思っちゃうしねぇ〜。

  • これはどうなってるんだ…?と読者に考えさせて、引っ張って引っ張って、後半のミステリーとアクション要素に繋げていくのが面白い。家で起こる怪異に怖いな〜と思っているところに比嘉琴子が出できて安堵感+「やってしまえー!」と思えるような構成になっているのも面白く、一気読みしてしまった。シンプルなホラーを求めている人には物足りなく感じるかもしれない。

  • ししりばの家 澤村伊智 2021/1/26

    いや、こわっ。
    普通の文にいきなりざざざざざざざざとか混じらせるなよ普通に怖いわ。

    それにしても、家というものは不思議だ。
    家は何のメタファーになり得るか、というと普通は幸せの象徴や帰る場所、安心する場所などポジティブな要素が挙がるだろう。
    でもちょっと考えてみると不仲の夫婦からしたら息が詰まる場所であり、帰る場所であると同時に帰りたくない場所であったりする。そんな話は路傍の石並みにありふれている。

    僕もそこまで知らないけれど、”家系ホラー”なんて言葉があるくらいには”家”を題材にしたホラー作品は多い。
    本来自分の縄張りである家に潜む何か、化け物の縄張りと化した家。
    よく考えてみると、僕も今の家に住んで3年ちょっと経つけれど、隅々まで把握できているわけではない。
    実は家の中での行動って固定化されていて、同じところを同じ視点からしか観ていない。
    そこ以外の、普段目にしないところ。
    靴箱の最下段、ベッドの下、天井の隅っこ。
    そこには実は何かが潜んでいるかもしれない。
    そう思わせるからこそ、家系ホラーは人を怖がらせるのかもしれない。


    ▶︎pick up


    最初の方に出てくる浮気相手からの呪いの手紙、なんか絶妙なチープさがあってちょっと笑っちゃった。
    末尾に”殺”は笑わせにきてるだろ。

  • 恐怖というよりも、気味の悪さをずっと感じていた。人間としての意志を奪われ、チェスの駒のように支配される。けれどそれは、人間を守るための手段だという矛盾。
    主人公の男性が、葛藤を抱えながらも最後、自分を変えたいと立ち向かう姿に胸を打たれた。

  • 2020年8月26日読了。

    ある2人の視点が交互に進んでいく。

    1人は。旦那の転勤で神戸から上京してきた笹倉果歩。
    旦那はSEの仕事が忙しく、帰りは遅く日曜日もほとんど仕事。
    「稼ぐのは俺がやるから、家を守ってくれ。」
    そう言われ仕事も辞めて、何をするでもなく時間をつぷす毎日。

    そんなある日、駅でばったりと幼馴染の平岩敏明と13年ぶりに再会する。
    彼は結婚して、中古の家を買いリフォームしてそこに住んでいるらしい。
    久しぶりの再会と、上京してから親しくする人もいなかった果歩は家に遊びに行く約束を交わす。
    後日、平岩家に遊びに行くと奥さんの梓さんを紹介されたのだが。
    目の下にメイクで隠せないほどの隈が出来、腰を曲げるだけでも辛そうに深々と礼をしながら「梓です。よろしくどうぞ」と言うのだった。
    そんな彼女に戸惑いながら、家を見回してハッとする。
    床のあちこちに足跡が出来ている。
    床に茶色いものが溜まっている。
    砂だ。
    廊下にも、階段にも、ベッドにもいたるところに。砂、砂、砂。
    驚いた果歩は、意を決して平岩夫妻にこの砂は何なのかと問いかける。
    「砂が何か問題でも?」
    「砂は砂、普通やんそんなん」
    この家は何かおかしい。


    もう1人は、小学生の頃に幽霊屋敷と呼ばれる家に忍び込む事になった五十嵐哲也。
    クラスメイトの吉永純、相馬功、比嘉琴子と共に家に入る。
    先を進み、二階への階段を見て思わず足が止まる。
    たくさんの砂が流れ落ちている。
    二階からは
    さあああああああああああ
    と砂の音がしている。
    「これはマズイ。帰ろう。」
    功の言葉を無視してどんどん進む純。
    すると、琴子が急に誰かと話し始める。
    功は膝をついて嘔吐し、苦しげに身をよじる。
    純は
    「明日のプールは中止だから風呂入れって何回も、だからさあスーファミくれっつってんの俺は。クリスマス。そえ、あ、らから」
    と意味不明の事を言い始める。
    みんなおかしくなってしまった、次は自分の番だ。そう思った時、
    目の前の何もないはずの砂が窪み、さらに手前が、またさらに手前が。
    何かが足跡を残して近づいてきている。
    琴子が「いや!」と叫ぶ。
    そこではっきりと見た。
    砂煙の中に立つ細長い影、光る大きな2つの目を。
    記憶はそこで途切れている。

    それから十数年間、哲也の頭の中には砂が詰まっている。
    ザリザリと音を立てて脳を削り、神経を傷付け、話そうとすると口の中に砂の味が広がり全身が痒くなる。
    哲也もおかしくなってしまっていた。

    そんな彼の元に、一緒に幽霊屋敷に忍び込んだ比嘉琴子が十何年ぶりに現れる。
    そしてこう言うのだ。
    「五十嵐くんの、頭の砂を取り払う」


    比嘉姉妹シリーズ第4弾。
    今回も『ししりば』という謎の怪異の話だが、気になるのは『砂だらけの家』、『砂だらけの幽霊屋敷』
    砂を描いた作品というとすぐに安部公房の『砂の女』が浮かんだが、解説でもやはり触れられていた。
    どちらの作品にも「普通ではない、おかしな事が当たり前になってしまう恐怖」という共通点を感じた。

    ぼぎわんで最強霊能力者として登場した比嘉琴子の幼い頃のエピソードから、力に目覚める様子が描かれていて楽しめた。
    時系列的には、ぼぎわんの前の話。
    妹の真琴と美晴の話や、前作までにはまだ登場してきていない弟の存在の話も明かされ、まだシリーズが続く期待を持たせてくれる。

    タイポグラフィクションという手法が用いられていて、著者の遊び心も凝っているなと思った。

    ラストのあたり、少し理解出来ない所があり不完全燃焼。

  • 前作、前々作に登場した最強の霊能者・比嘉琴子の始まりの物語。小学生時代の彼女、霊能力に覚醒後の姿、現在の彼女とまさに比嘉琴子ヒストリーが、ある二組の夫婦と琴子の小学生時代の同級生との人生を交差させながら語られる。
    たかが砂、されど砂…何より怖いのは砂でも化け物でもなく、異常な事態を“これが普通、当たり前”と受け入れてしまってる人間の心理状態。澤村ホラーの根底にはいつも人の闇がある。
    冷え冷えと吹き荒ぶ砂嵐の中で、忠実な信頼を寄せる銀の存在と過去に決着をつけて前を見据える琴子と五十嵐の姿が嬉しい温もりだった。

  • 【2024年37冊目】
    砂、砂、砂――砂である。

    砂自体はよくよく考えてみると恐ろしいものではない気がします。いやもちろん大量の砂に埋もれるとかは息ができなかったりする想像をしてしまって、怖いなぁとは思うんですけども、ぞくっとする怖さとは違う物理的な怖さというか。なんでもいっぱいあったら怖い気もするし。

    本作はまさに砂が主人公と言ってもいいんじゃないかと思うほど、砂が大暴れするんですが、この砂の怖さを引き立てているのが、やっぱり人間の存在と、その書き方だなと。

    読み始めた最初の方は「あ、これここでいったん怪異解決する感じかな」って思ったりしてたんですけど、全然しない〜〜むしろ終わりの始まりみたいな感じで本当の恐怖が始まるわけです。

    なにが怖いって、それはもう家に住んでる人間ですね。操られていたにせよ、砂だらけの家で普通に生活して、いなくなったら代わり(他人)を補充して、それが当たり前のことだと笑いながら言ってるところを想像すると、も〜めちゃくちゃ怖かった。

    解決してからもそれだけでは終わらない本当の人間の異常性まできっちり書かれてて、もう、わかりました、わかりました怖い!ってなりました。

    家の怪異と言えば…と思っていたら三津田さんが解説でした。これはこの流れであれを読むしかない。もう全然覚えてない作品なんですが、怖かったことだけは覚えているあの作品を。

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著者プロフィール

1979年、大阪府生まれ。東京都在住。幼少時より怪談/ホラー作品に慣れ親しみ、岡本綺堂を敬愛する。2015年に「ぼぎわんが、来る」(受賞時のタイトルは「ぼぎわん」)で第22回ホラー小説大賞<大賞>を受賞しデビュー。2019年、「学校は死の匂い」(角川ホラー文庫『などらきの首』所収)で、第72回日本推理作家協会賞【短編部門】受賞。他の著作に『ずうのめ人形』『などらきの首』『ひとんち』『予言の島』などがある。巧妙な語り口と物語構成が高く評価されており、新たなホラーブームを巻き起こす旗手として期待されている。

「2023年 『七人怪談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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