准教授・高槻彰良の推察5 生者は語り死者は踊る (角川文庫)

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  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092651

作品紹介・あらすじ

幼い頃、青い提灯が揺れる「死者の祭」に迷い込んだ尚哉は、以来嘘が歪んで聞こえるように。そんな過去に決着をつけるべく、高槻と尚哉は長野へ。しかし、かつて祭が行われていた村は廃村になっていて……。

感想・レビュー・書評

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  • 真実へと物語が動き出した。

    第1章「百物語の夜」で、前作姿を消したある人物が再び尚哉の前に現れる。ここで登場するということは、この人物が彰良先生と尚哉をこちら側に繋ぎ止めるキーパーソンになるのだろうか。
    この章も面白かったけど、彰良先生も尚哉も、そしてわたしも、ちょっと心ここにあらずだったかもしれない 笑
    なぜなら、あの「死者の祭」をたしかめるための長野行きが来週に迫っていたから。

    今作品はやっぱり第2章「死者の祭」がメインだったよね。実のところ、ここまで異界へと深く潜り込むとは思ってなかった。正直びっくり、嬉しい誤算。

    異界に一度落ちたものは、もう一度その場にたどり着いた、あるいはたどり着いてしまったときに「帰ってきた」ことになるようだ。
    異界の印をつけられたものは、そこから一生逃れられないのかと思うと、それがまた恐ろしい。
    彰良先生の研究室で学ぶ瑠衣子が、よく彼が消えてしまうような不安に陥るのは、いつか「帰ってしまう」そんな気持ちになってしまうからかもしれない。

    わたしは異界ってなんとなく、あちこちに点在しているものだと思ってたけど違うのかもしれない。ただ異界とこちら側を繋ぐ扉が、あちらこちらに存在するというだけで、異界は宇宙のようにどこまでも広がりつづける、実はひとつの世界なんじゃないのかなって。
    尚哉たちの絶対絶命の危機に、あの人物がひょいと現れたことからも、そして彰良先生がこの祭りに関わったことで、背中の傷を負ったときのことを思い出したことからも、そんなふうに感じたのね。だから尚哉の過去と彰良先生の過去は、全く別世界のものってわけじゃないのかもしれない。

    とにかく尚哉たちがどうなるか、どきどきしながら夢中で追いかけた。
    そして迎える結末には「え、もしかしてまた振り出しに戻るの!?」というジリジリとした気持ちを抱きながらも、彰良先生の背負う過去が、そうならざるを得ないほどの重さなのだということを、今まで以上に身をもって知ることになった。ある意味、先生のなかにいるナニモノかは、彼がこちら側に存在し続けるための味方なのではないか……

    それにしても気の毒だったのは健ちゃん。
    忽然と消えたふたりを、暗闇の山のなか一晩中探しまわるなんて。おばけとか苦手なのにね。でもそれ以上に、ふたりを失ってしまったと思うと、それはそれは恐ろしかっただろう。

    あ、ほらここで健ちゃんがまた言ってる。
    「うちの絶対借り作りたくねえ奴に連絡しようと思ってたんだぞ……!」
    もうこの「借り作りたくねえ奴」が1巻からずーっと気になっているんですけど!怪異事件専門の頭の人のことですよね、ね?
    作者サマ、早く登場させてくださーい。

    • くるたんさん
      地球っこさん♪こんにちは♪
      あぁ、的確丁寧、そして素晴らしい推察をありがとうございます!
      異界とは…になるほどです。ちょっと怖さよりも浪...
      地球っこさん♪こんにちは♪
      あぁ、的確丁寧、そして素晴らしい推察をありがとうございます!
      異界とは…になるほどです。ちょっと怖さよりも浪漫が拡がる感じですね¨̮♡

      あ、私、変かな。

      それにしてもあの祭りは怖かった…
      じじばばでも容赦なく迫ってきましたもんね。
      健ちゃんのシーン、もっとじっくり読めば良かったなー。
      キーパーソンかもしれないですね!

      私、ますますアキラ先生に心持っていかれました♡
      天使です…( ⸝⸝⸝¯ ¯⸝⸝⸝ )
      2021/01/13
    • 地球っこさん
      くるたんさん、こんばんはー!

      異界は浪漫、いいですね♡
      異界のなかでも、恒川さんの「夜市」もだけど、異界と祭りの組み合わせが、余計に...
      くるたんさん、こんばんはー!

      異界は浪漫、いいですね♡
      異界のなかでも、恒川さんの「夜市」もだけど、異界と祭りの組み合わせが、余計に恐怖とセンチメンタルな浪漫を醸し出しているのかもしれません……なんちゃって。

      それにしても、じじばば怖かったですよね((( ;゚Д゚)))
      想像してしまいましたよ、恐ろしや~

      ここまで、話が進むと思ってなかったのでびっくりしたけど、最後は3歩進んで2歩下がるって感じでしたね 笑

      くるたんさんにアキラ先生は譲るといたしまして(おいおい、何様!)、わたしはもう健ちゃんの「借りを作りたくねえ奴」を心待ちにしております(≧▽≦)
      理想は、エリートでクールな細身のイケメン20代!
      チャラい感じはNO THANK YOU 笑
      女性だったら、ジェラシー感じて「ガーンガーン」ヽ(;´Д`)ノ
      早く登場しないかな、楽しみです♡
      2021/01/13
  • ついに…の一冊。

    ついにあの祭りの真実を探るために長野へ向かった尚哉たち。

    真実を知りたい気もあればまだ知りたくない気に読み手もさせられる展開は緊張感溢れるスタート。

    想像以上の祭りの本気度、想像以上の恐怖。

    あの坂はかなり怖かったな。 
    沙絵の助言がなかったら…至る所で感じた。

    で、どうなるの⁈またまた最高に盛り上げてサッとさよならだなんて!

    そして今回の番外編も実に良かった。

    まさに"天使"、そう、その言葉がしっくり来るし、何があってもいつでも絶対に帰ってきて欲しい、その気持ちに激しく同意。

    • 地球っこさん
      くるたんさん、こんばんは!

      ついにあのお祭りに辿り着いたのですか!?
      沙絵さんも再登場!?
      なにより想像以上の恐怖だなんてΣ(゚ロ...
      くるたんさん、こんばんは!

      ついにあのお祭りに辿り着いたのですか!?
      沙絵さんも再登場!?
      なにより想像以上の恐怖だなんてΣ(゚ロ゚ノ)ノ

      あー気になるー!

      今は今年読み終わった本の感想は、今年中に書いてしまおうと、お正月休みに読みたい本を横目でチラチラしながら頑張ってるところです 笑
      もちろん、准教授もスタンバってますよ。
      2020/12/28
    • くるたんさん
      地球っこさん♪こんばんは♪
      そうなんです!マジ、あのお祭りの村へ…。沙絵さんはこれからのキーパーソンだと思われます‼︎

      地球っこさんもゆっ...
      地球っこさん♪こんばんは♪
      そうなんです!マジ、あのお祭りの村へ…。沙絵さんはこれからのキーパーソンだと思われます‼︎

      地球っこさんもゆっくり楽しんでくださいね♬

      私、ますますアキラ先生のファンになりました…(≧︎ω≦︎*)

      あ、今年もお世話になりました¨̮♡
      また来年もトークできるとうれしいです。
      よろしくお願いします¨̮♡
      2020/12/28
    • 地球っこさん
      くるたんさーん
      こちらこそお世話になりました(*>∀<*)

      今年はいっぱいお話できて楽しかったです。
      来年もお互い、たくさんの面白...
      くるたんさーん
      こちらこそお世話になりました(*>∀<*)

      今年はいっぱいお話できて楽しかったです。
      来年もお互い、たくさんの面白い本にであえますように。。。

      どうぞよろしくお願いします。
      2020/12/28
  • 記念すべきブクログ登録100冊目は高槻先生です!
    大学に入ってから100冊読んだと思うと感慨深いです( ´˘` )

    第1章は「百物語」のお話でした。結構有名な怪談みたいですが、私は初めて聞きました。昔から怖い話が苦手なので、疎かったのかもしれません。

    第2章では、ついに尚哉が参加した夜の盆踊りの調査に長野へ!
    色々な人が忠告する中訪れたので、何が起こるのかわからずドキドキでした。
    人魚の出来事の後ちょくちょく沙絵さんが出てきて、そろそろキャラクター紹介覧で出てこないかなーと思っています。ビジュアルが気になりますし...。今回も何やら意味深な助言を残して言って、ますます彼女の正体が気になるお話でした。

    尚哉もチラッと言っていましたが、嘘が歪んで聞こえて不快になることも多い能力ですが、今更無くなっても、逆に誰を信用していいかわからず、疑心暗鬼の毎日になりそうで、今後上手く能力と付き合っていって欲しいです。

    そろそろ高槻先生の過去にも深く触れていきそうな流れだなと思いました。暗い過去ではあると思いますが、やっぱり気になりますね。

  • 大学2年生の夏。尚哉は自らの耳と「死者の祭」の真実を探るべく、高槻、佐々倉と長野の旧小山村へと向かう。


    高槻彰良の考察シリーズの5巻目。
    ついに尚哉が嘘を聞き分ける能力を得ることになった「死者の祭」の調査へ赴きます。生者の世界とは表裏一体の、死者の世界・神の世界。近いようで遠い世界に踏み込んでしまった彼らが知る真実は……。真実に近づいたはずなのに、全く謎は解けず、むしろ越えてはいけない一線を越えてしまったように不安な気分になり、続きが気になりますね……。

    メインはこの「死者の祭」の話なのですが、その前話にあたる「百物語の夜」で語られる、死者と生者の関わり方の話にとても共感しました。身内に幼い子供を亡くした方がおり、今は落ち着いているようですが、その方もお盆などの度に「夢であの子が会いに来てくれた」などよく語っていました。幽霊話の根源にあるのは、死者への思慕。忌避する人も多いですが、宗教や怪談などが生者への慰撫になる場合もあるというのは、忘れず心に留めておきたい。

    また、「【extra】マシュマロココアの王子様」で語られる瑠衣子の心中もとても良かったです。いつもとは少し違う可愛らしい語り口の話。言葉では形容の難しい”好き”。いてくれれば満足という気持ち。優しい人には、優しさに囲まれていてほしい。それこそ「胸の中に温かい明りが灯るような」一話でした。

  • 5巻は、いよいよ死者の祭へ。深町くんが体験した例の盆踊りに肉薄していく過程に鼓動が速くなる。読み進めていく途中、謎を解明したい気持ちと、ある種の怖さとの間で、読者である私も揺さぶられ続けた。
    今作では本格的な怪異のど真ん中に落ちる深町くんと高槻先生だが、ここまでの歩みが脱出の契機になるのがにくい。1つ目のエピソードの『百物語』がすごく良く効いてくる。線香花火の情景はとても美しく、胸に残る。遠山さんもさえさんも再登場のうえ、2人共なかなかのキーパーソンだった。あそこでさえさん、助けてくれるんだなあ……。今後、彼女の謎も詳らかになるのだろうか。
    青提灯の盆踊りについてはある程度判明したが、高槻先生の神隠しは、まだ謎が深い。記憶全部消されてしまったが……一体ナニを身の内に飼っているんだろうか。次の巻も読まなければ。

  • 一気に話が進みました。
    ついに「死者の祭」に踏み込んだ内容になり、シリーズ急展開です。
    沙絵さんも再登場していい味を出しています。
    少し盆踊りについて詳しくなれる感じでした。

  • いよいよ、本物の怪異と遭遇。前巻から、現象と人の解釈だけでは説明のつかない本物の怪異らしきエピソードが出始めていたが、今回、主人公の特異能力の原因が本物の怪異によるものだと明らかになる。
    本物の怪異の出現により、これまでと明らかに局面が変わった。今後どんな展開になるのか、物語の行方が楽しみである。

  • ついに直哉の行った“死者の祭“へと。
    赤い提灯は生者、青い提灯は死者のための色分けだったんだ。
    祭りからは帰って来れたけど高槻教授はもう1人現れて。。また謎は深まるったな。

  • 民俗学ミステリ第五弾。いつもと同じく中編2作に特別編(今回は瑠衣子の過去)という構成になっている。特に、後半の『死者の祭』は深町が過去に体験した怪異の真相を探しに行く重要なエピソードになっており要チェック。

    『百物語の夜』
    難波の後輩・葉山が企画した百物語。高槻たちを巻き込んで開かれた会の中で発生した怪奇現象。何も見えない闇の中で聞こえた声は怪異なのか。さらに、亡くなった妹が持ってきたという花の意味とは──。

    百物語の歴史、由来、意味合いなどはどれも興味深かった。皆が語り手であり聞き手でもあるという参加型なのが、異界との距離を縮めるポイントだよなあと。でも、実際にやるのもかなり大変だし、怪談のストックがある人も多くはないだろうし、人生の内で体験することはなさそう。百は多いんだよね。それで言うと、前回の四時ババアの汎用性は高い(笑)

    外にいる怪異を追い払うために内で怪異を語るというのも斬新な発想。メタ的な構造が面白い。こうして怪異にまつわる小説を読んでいるのも、その一部だったりするのかもしれない。キーパーソンたちとの再会を経て、舞台は死者の祭があった始まりの村へと続く。

    『死者の祭』
    深町の体験した怪異と、耳の真実を探るべく、高槻たちは長野の旧小山村へ向かう。調査する内に深町と高槻は例の祭へと誘われてしまい──。

    深町を招いた死者の祭。その入口が再び開く!高槻とともに迷い込んだ異界。青い提灯、太鼓の音、闇に覆われた森、そして死者たち。坂を下るような加速する緊迫感と、現世とは違うルールの不条理さ。現世で異能を持つようになったとしても、迷い込んではならない場所があるのだ。

    深町を襲った絶望。孤独の中でよぎった思い出という百物語。一つ一つはささやかな線香花火かもしれない。でも、そんな日常が積み重なって、帰るべき場所になる。彼にとって大きな節目となるエピソードだったと思う。

    少し気になったのは、これまでは怪異を文献などから紐解くことでリアリティを構築。その現象を解釈するという部分がミステリになり、そこに人間ドラマが乗るというところが魅力だと感じていた。

    今回は、真の怪異が絡んできただけにホラー色が強く、理不尽なままで人間にはどうしようもなく終わってしまったのがスッキリしなかった。人間の理など通じない不条理な世界だからこそ、リアリティがあるとも言えるけれど。個人的には解決の仕方といい、ラストといい、主導権が取られたまま終わってしまって残念。

  • 時代が変わって行燈が蝋燭に、蝋燭が百均のライトに取って変わっても、百物語という文化そのものは受け継がれているところに、ホラー話ながら妙な感動を覚えてしまった。
    怪談の中にはどうしても廃れてしまうものもあるけれど、百物語はどの世代でも通じる話ではないかなと思う。
    それは、人々が伝え続けてきたからこそ残ってきた物だと思う。
    百物語に限らず、多少形を変えたとしても受け継がれていく文化って尊いなと。

    ただ死者や死者を大事に思う人たちの気持ちを踏み躙る行為は許されることではない。
    そこはビシッと諌める高槻先生である。

    前半はそんな百物語の話。
    後半は尚哉が過去に踏み入れたあの謎のお祭りの話。
    先生がいるから大丈夫だと、こちらは勝手に楽観視していたら、予想していたより大ごとになってびっくりした。
    そうだよな。
    死者の世界に「2回」も紛れ込んで無事で済むタイプの話はそうお見かけしない。
    ただでさえ1回目で対価を支払っているから余計に2回目が無事な訳がない。

    ただここで助けに入ってくれたのが、これまた意外や意外、でも寧ろこの人でなければ切り抜けられなかった(要はこのために用意されたかのような)人の登場で、チートな切り抜け方を見せてくれた。
    でも、結果的に高槻先生は対価を支払った気はする。
    引き換えに一度は欲しかったものを得て、再び失って、トータル的にはマイナスな気がする。
    何しろ、先生は引っ張り出してしまったから。
    彼の背中の傷に関わる存在を。
    命は助かったラストではあるが、不穏を残す形となった。
    これからの先生が本当に心配である。

    番外編の瑠衣子先輩の話が、余計にその不安を煽った気がする。
    基本的にほんわかな話だし、瑠衣子先輩の先生への想いは物凄く理解できるのだが(ぽわんと丸い、言い得て妙)「ここに留まってくれない」みたいな不安感も確かに存在していたので。
    最後の最後、「よかった、ちゃんといる。」この一文が、今回の本編を読んだ後だとより心にしみる。

    改めてこうして振り返ってみると、いつも以上に噛み締め甲斐のある一冊だったと思う。
    どうかどうか、皆が笑っていられる未来に繋がっていきますように。

    そのためには、尚哉くんはますます先生を制御する術をマスターせねばだな。
    まずは体力づくり、頑張ってくれ!

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著者プロフィール

神奈川県横浜市出身、在住。2016年に『憧れの作家は人間じゃありませんでした』で第2回角川文庫キャラクター小説大賞《大賞》を満場一致で受賞し、デビュー。同作はシリーズ化され1~3巻を数える。21年夏、「准教授・高槻彰良の推察」シリーズが実写ドラマ化され話題に。キャラクター文芸界再注目の作家。

「2023年 『憧れの作家は人間じゃありませんでした4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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