ののはな通信 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 3588
感想 : 214
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110676

作品紹介・あらすじ

ののとはな。横浜の高校に通う2人の少女は、性格が正反対の親友同士。しかし、ののははなに友達以上の気持ちを抱いていた。幼い恋から始まる物語は、やがて大人となった2人の人生へと繋がって……。

感想・レビュー・書評

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  • 可愛らしい表紙からは想像できないほど激しく情熱的な愛。二人の少女の往復書簡のみで描かれる。なんだか秘密を覗き見しているようでドキドキ。
    大切に思う人からの愛や理解こそが最大の幸福。全てをさらけ出し、ぶつけあい、許しあい、受け入れあう。女同志の友情から始まった恋だからこそ、ではあるんだろうなぁ。
    それは大人になってからも、かけがえのない記憶としてずっと生き続ける。後悔や苦い思いも含めて。
    離れていても互いを思いあう、信じあう、結びつきの強さ。こんなにも深く誰かを思うことが自分はできただろうか。
    辻村深月さんの解説も素晴らしかった。

  • この可愛らしい装画とタイトルに似合わず、とっても情熱的なストーリーで驚いた。
    この小説は全て「のの」と「はな」の2人の女性の手紙やメールのやり取りのみで構成されている。

    一章は2人が高校生で昭和59-60年。同じ女子校に通い、平日毎日顔を合わせているのに、更に郵送(たまに速達)や手渡しの手紙を書いているなんて…この感じ、とっても覚えがある!!笑 一章で2人は恋人同士となり、更にある事がきっかけで別れるところまで。

    二章は昭和62-64年。高校卒業後、別の大学に進学した2人。はながののに連絡を取ったり会いに行ったりして必死に繋がりを取り戻すが、卒業後すぐに外交官と結婚しようとしているはなにののが再び距離を置いてしまう。

    三章はそれから大きく時間があいた2010年。この章は全てメールのやり取りで、月日の流れを感じる。外交官夫人としてアフリカの情勢不安定なゾンダ(架空の国)で暮らしているはなと、フリーライターとなったのの。ここの動き出しは意外にもはなサイドからのメールだった。お互いに過去の自分の暮らしや行動の告白を経て、関係性が一気に恋人同士のように戻った感じがした。

    四章は2010-2011年。自分の魂のままに生きる決意をしたはなの(今のところ)最後の手紙と、あとは(今のところ)読まれるあてのないののからはなへ宛てた手紙(パソコンで記録)が最後まで続く。東日本大震災が起こった翌月までで本書はおしまい。


    ◆印象に残った言葉
    ・遠い場所とは、ゾンダだけではありません。他者の心も、自分自身の内面すらも、等しく遠い。しかし遠いからといって、知る努力を放棄してしまったら、想像の翼はいつまでも羽ばたかず、距離は縮まらぬまま、私たちは永遠に隔てられてしまうでしょう。(中略)距離を超える術、心に狭く硬い殻をかぶせずに、誰かに寄り添う術。知り、考え、想像すること

  • 私は世代が二人とほとんど同じなので、似たようなことをしていたなぁとまず懐かしく思いました。



     私の一歳上の友人と頻繁に手紙のやり取りをしていました。当時は電話で長話なんてできなかったし、同じ市内ではありますが、頻繁に会うことができない友人にはこうして手紙でやり取りするしかなかったんですよね。



     今もその手紙は大事に持っています。ののと同じだなぁ。もちろん、この二人とは全く違い、本の事や進路の相談が多かったです。

     今では電話で話すことが普通になり、お互いに親の介護という問題を話すようになってしまった(笑)



     だからこそ、この二人の手紙のやり取り(最後にはメールも使われますが)に親近感も感じます。



     これだけ激しい感情を互いに持てることをうらやましくも思いましたし、反面、穏やかなやり取りをずっとしてきた友人に感謝したい気持ちになったりもして……。



     手紙にしても日記にしても、書くという行為は誰かに読んでもらうということを意識しているものです。

     だからこそ、f後半、フリーライターとして働くののと外交官の妻として内乱が起った国のためにできることを考えるはなの、互いの心の叫びのようなやり取りに、私自身も二人の中の一人として心が揺さぶられるのでしょう。

  • 前半のやりとりは中高の友人を思い出して、個人的な感傷があった。あれくらいの時期の女の親友同士の親密さを描くのが上手い。毎日顔を合わせているのに授業中に手紙を書いたり同じものを持ちたがったり、距離感が共依存寄りになっていくのは女子の多い学校でできた2人組あるあるな気がする。

    恋愛の描写があまりにも激しく眩しいので直視できない。ラブの大きさ、激しさ、盲目さが全て想像の範囲外にある。上に振れるときの躁状態は良くても、下に振れたときの絶望感も強すぎて自分はもうどちらも味わう体力がないんだなと感じる。

    最後はなからの返信がないまま解説に突入してしまい、少し指先が冷たくなる。
    強弱はあれどずっと愛と信頼と尊敬、親密な空気が文面に流れていて、物語の起伏やオチが少なくても心地よく読める。
    なぜか女性同士の恋愛ものは片方が天真爛漫で愛され上手、もう片方が現実的で堅実で自分の欲を汚いと思っている、みたいなキャラ設定が多い気がする。

  • 祝文庫化!

    書評『ののはな通信』三浦しをん著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2018061900011.html

    【刊行記念インタビュー】三浦しをん『ののはな通信』 横浜の女子高に通い互いに友達以上の気持ちを抱くふたりは、運命の恋を経て大人になってゆく。 | インタビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/554926

    ののはな通信 三浦 しをん:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000452/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      3年越しの手紙【新文化】 - 連載 第53回 - 本屋の新井です
      https://www.shinbunka.co.jp/rensai/ho...
      3年越しの手紙【新文化】 - 連載 第53回 - 本屋の新井です
      https://www.shinbunka.co.jp/rensai/honyanoarai/honyanoarai53.htm
      2021/07/26
  • 高校生の時の自分の恋愛を思い出してしまってすごく苦しくなった。特にののとはなは同性同士で余計閉じた世界にいるから苦しかったと思う。高校生の恋愛って打算もないしまっすぐでその分相手も自分も傷つけてしまうよね…燃えるような恋をしたのは多分お互いがお互いだけだと思う。でもそのあとはどうかな…2人はしっかり現実を生きてたと思う。例え会えたとして2人の道は別れてしまってるからやり直すことはなさそう。でも心の中に愛の同志を持ってるのは悪くないよね

  • す、す、すごいなぁ、しをんさん‼︎
    この、可愛らしい表紙、ののとはなの往復書簡のみで語られる…という、ふんわりしたイメージから、誰がこの話の先を予測できるだろうか?まさに人生そのもの。「女の一生」という題名ではないか?なんて思うくらいでした。(ごめんなさい、古典は未読です)夢中で一気読みしました。ほんの些細な文章で泣きました。

    手紙(速達含む)や教室で回すメモで始まった2人の書簡、後半はメールになります。年代的にも私よりちょっと下、という感じで、時代背景も個人的にはすんなり入ります。(私は女子校育ちでないので、その辺りはちょっと違うけど、すんなりでした)

    とにかく、この往復書簡の形が、物凄く上手いと思う!こういう形の小説ってたくさんあるけれど…。デスマス調と普通に話しかけてる感じとが、思いっきりミックスされてる感じがリアルで…。
    ののとはな、2人と一緒に生きてる気持ちで読んでしまったのでした。自分が手紙やメールを受け取っていたみたい…。

    10代の頃は永遠に思えたことが、ちっともそうでないと大人になって気づく。でも、根底にある、誰かをを愛したり大事に思う気持ち、離れていても大切なのだと感じる気持ち、そういうものは消えないと信じたい。

    印象に残ったところを少し…

    ーーーーー

    神さまは人間を見くびっている。恋と欲望の強さをちっともご存知ない。神はひとの脳みそが生みだした単なる幻影よ。

    考えることを捨てて、ただ神を信じればいいだなんて、とても危険なことのように私には思えるんだけど。

    星同士の重力だって、距離がひらけば影響は弱まるのだから。

    一人でも食べて寝て生活はできるけれど、本当の意味で生きるのはむずかしい。自分以外のだれかのために生きてこそ、私たちは「生きた」という実感を得られるのかもしれない。

    もっともっとあなたの話を聞かせて。すごく距離がある私たちだから、せめて離れていた時間を埋めたいの。

    年齢も、性別も、時と場所も選ばず、運命は唐突にひとを訪う。こちらの準備ができているかどうかも、まったく考慮には入れてくれない。だから運命とは残酷なものなのです。

    文章って、変なものですね。過去やあの世とつながる呪文みたい。

    死んだ人とも、まだ会っていないだけのような気がするのです。

    曇り濁った目を洗い、希望を胸に新たな気持ちで周囲を見たいと思いました。

    外交においては、これぐらい玉虫色の決着のほうがいいのです。

    うつくしいものは思い出だけ、記憶だけではないかと、このごろ思います。ひとが手にすることのできる最もうつくしいものは、宝石でもお花でもなく、記憶なのです。さびしいね。

    小さな輪が胸もとの肌に触れる。
    (この一文で泣きました)

    もともと、私たちはなにも持っていないのよ。この体と、心以外は。

    ーーーーー

    ふわふわしたお嬢様だったはなが、自身の「誇り」をかけてした行動。無事でいてとだけ強く強く祈りながら、読み終えました。素晴らしかったです‼︎

  • ある2人の女性の恋と友情を綴った書簡体小説です。高校生時代から、結婚するまでの現在まで続く2人の一代記です。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を彷彿とさせる新たな書簡体小説で、友達同士だった2人がだんだんと、友情が恋に変わっていく模様を手紙のように交互にかわす文章が素晴らしいです。一つの大河ドラマを観てるように感じました。

  • この作品はすべて書簡形式で綴られていて、2人の手紙をこっそりのぞき見しているような感覚で読んでいました。
    そこには2人のお互いに対する愛をいろんな表現で書かれていて茜とはなは深く愛し合っていたんだなという思いがひしひしと伝わってきました。

    この手紙のやりとりは少し間があいているとはいえ、20年以上も続き、手段も手紙からメールへと変化していきます。
    文体も高校時代のときと比べると落ち着いていたり、ガラッと変わったお互いの生活を順に追って知ることができ、楽しく読むことが出来ました。

    最後のほうは茜がはなには届かないメールをずっと一人で書き続けているところにもはなに対する強い思いを感じました。
    読まれなかったメールをいつかはなが読んでくれることを願ってやみません。

  • LaLaの連載で「日出処の天子」を読み、長文の手紙を毎日のようにやり取りする「のの」と「はな」に、ほぼ同世代で全く同じ経験をしていた自分を投影して読み始めた。2人の関係が展開していく頃からは、「自分とは違う経験」が進んでいくが、自分自身も、疎遠になった親友と中高年になってから再会した経験から、とてもリアル感も感じた。二人の精神的な成長もありのままに受け止めつつ、意外な物語の展開を楽しみ、社会的な課題をも考えさせられ、色々と諦めながら時代を進んできた同世代の女性として、秘めている大きな可能性と決意に希望を感じた。
    女性の心の成長や変化をよく描いていると思う。あまりによく描け過ぎていて、男性の読者には少し難しい方もいるのではないかと思った。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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