潮風キッチン (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041113158

感想・レビュー・書評

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  • 優しく爽やかな気持ちになれました。
    面白かったです。

  • 読了後、爽やかな風が吹いた。そんなストーリーです。

  • 何もかも失われた状況から少しずつ、同じように捨てられたり、いらないものとされている人たちが寄り添い、同じく捨てられたり、いらないものとされた魚や野菜が集まり、前を向いて歩いていく。とても心地よい物語でした。さて、海果と結ばれたのは誰でしょう?

  • 今回もさわやかで、心に何かひかかる作品でした。
    まず気になるのは、喜多嶋隆さんは、どんなプロットを描いて
    この小説を書いたんだろうという事です。
    人間模様、その人の背景、心のありよう等、読み手に伝わるものが感じられました。

    ========
    あとがきにも、喜多嶋隆さんは色々書いています。
    私はもう一つ、この物語に隠された、喜多嶋さんのメッセージがあるように思います。
    それは、貧困です。
    今の日本、確かに豊かなのかもしれません。
    しかし、給食費が払えない子供たちもまた存在します。
    親にかまってもらえない子供たちも存在します。
    虐待、放置、放棄等も存在するでしょう、私達の目の届かない所、行政の目の届かない所で
    確実に存在し、ニュースになるのは氷山の一角にすぎません。

    そんな日本の中で、貧富の差は大きくなっているのではないか?
    特にCOVID-19で職を失った親たちが、どうやって子供にご飯を食べさせていくのか?
    教育をどういうプロセスで与えていくつもりなのか?
    そんな裏の想い、メッセージがあるのではないかと感じました。

    最近ある方とお金の話をしました。
    年収が300万円の人の1万円と年収1000万円の人の1万円
    同じ1万円だけど、年収300万円の人は1万円をものすごく大切に扱うのではないだろうか?
    そんな話をしました。
    経済価値は同じ1万円でも、それを使う人の心で価値価格はものすごく差があるように思います。
    そんな話をした時に、喜多嶋隆さんが今回発刊した「潮風キッチン」が私のココロを抉っていった。
    この物語でも、お金の価値、物の価値について、メッセージを発信している。
    そう感じております。

    読む方は、物語の内容だけでなく、その裏に隠されたメッセージを読み取りながら
    読み進めるのも一つの読み方だと思います。

  • 必要とされないもの見捨てられる規格外の雑魚に親に捨てられた自分を重ねる女性二人。湘南鎌倉の風を含んだ食堂の奮闘記。さらりと読め、温かい作品である。

  • 学生時代以来、ウン十年ぶりに喜多嶋作品を読む。
    舞台や構成は変われど、とても懐かしい世界観。
    若いころ読みまくり、ハワイにあこがれたものでした。

    飾り気のない元気な女の子(女性)が主人公で、なんやかんやありつつ強く生きていく定番ストーリー(良い意味で)に、主人公が冒頭で必ず鏡を見て外見チェックし、読者に容姿を教えてくれる「お約束」。何もかもが懐かしい・・・。

    こちらはめっきりトシをとってしまったが、作品世界はウン十年たってもブレずに新鮮だ。

  • 母親が家を出てしまい途方に暮れる18歳の海果
    残されたのは築50年の小さな居酒屋と店の借金325万円

    港の魚市場で拾った魚で食つないでいるところに信用金庫から返済の督促が

    そんなとき、ませた中学1年生の愛と出会う
    母親が入院、父親が不在でも、強気で生きている愛

    愛を気づかう若い漁師の一郎
    左遷のピンチにある信金職員 葛城
    陰のある人気の若手俳優 慎

    さまざまな事情で“戦力外通告”をうけた人々が葉山の海辺にある〈潮風キッチン〉を舞台に再生し希望を見つけていく物語

    〈捨てられるために育つ野菜などいない〉
    〈捨てられるために獲られる魚もいない〉
    そんなメッセージを、今回の物語の主人公である18歳の海果と12歳の愛に、僕は託した。──「あとがき」より

    新鮮でおいしいシーフード料理のスパイスはフードロス、貧困、家族の問題

    そして、エルトン・ジョン、キャロル・キング、ビートルズ……
    店のミニ・コンポからは今作でもグッド・タイミングのBGMが流れている

    ちなみにタイトルはテラスモールのフードコートとは関係ない

  •  湘南・葉山で暮らす海果は18歳。
     高校を卒業したばかりのある日、母が突然家を出てしまい、海果に残されたのは母の残した300万円余りの借金と、売却も難しい立地に建てられた古い家の。
     信用金庫の貸付を担当する葛城から、母が経営していた居酒屋を再開させtみてはどうかと持ちかけられた海果は漁師だった祖父から教わった料理の知恵を活かし、店を始めることにする。
     さらに。魚市場で働く一郎や、孤独を抱える少女・愛、映画撮影に来ていた俳優の慎と出会ったことで、店と共に海果の人生が少しずつ回り始めていく。

     今回の舞台はタイトル通り、湘南の小さなレストランです。
     海果だけでなく、愛も葛城、一郎、慎も、それぞれの事情や孤独を抱えていて、それぞれが支え合い、関わりあうことで小さな一歩を踏み出して行きます。
     「俯いてばかりいちゃダメだよ」というエールと共に、今回はフードロス問題も取り入れています。
     そこを軸にして、貧困差問題や子供たちの基礎体力低下問題などをさりげなく織り込んでいて、いろいろな角度から考えさせられる作品に仕上がっています。
     いつものリズミカルな文体も損なわれていませんし、喜多嶋作品未読という方にオススメしやすい1冊だと思いました。

     何よりも。
     出てくるお料理はどれも美味しそうですし。
     さらに、紹介されている音楽の選曲のセンスも抜群なんです。
     そういう角度からも楽しめる作品なので、色々な人に手に取ってほしいな。
     それぞれの登場人物の抱える問題もまだ解決したわけではありませんし、シリーズ化を期待します。

     最後は余談です。
     今回、旭屋牛肉店のポテトサラダが登場!
     いつものコロッケももちろん美味しいのですが、私の一番おお気に入りがポテトサラダなので、とっても嬉しかったです。
     早く、普通に葉山にドライブに行けるようにならないかな。
     ポテサラとコロッケ、メチャメチャ食べたいです‼︎

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著者プロフィール

5月10日東京生まれ。コピーライター、CFディレクターを経て、第36回小説現代新人賞を受賞し作家に。スピード感溢れる映像的な文体で、リリカルな物語を描き、多くの熱烈なファンを獲得している。近作は『地図を捨てた彼女たち』『みんな孤独だけど』『かもめ達のホテル』『恋を、29粒』『Missハーバー・マスター』(すべて角川文庫)、『海よ、やすらかに』(株式会社KADOKAWA)など。湘南・葉山に居を構え執筆と趣味の海釣りに励む。

「2022年 『潮風メニュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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