こうして誰もいなくなった (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.26
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本棚登録 : 1225
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041115213

作品紹介・あらすじ

孤島に招かれた10人の男女、死刑宣告から始まる連続殺人――有栖川有栖があの名作『そして誰もいなくなった』を再解釈し、大胆かつ驚きに満ちたミステリにしあげた表題作を始め、名作揃いの豪華な短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 祝文庫化!

    平成時代を締めくくる“有栖川小説の見本市” | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/564729?ui_medium=http&ui_source=yahoo&ui_campaign=link_back

    「こうして誰もいなくなった」 有栖川 有栖[角川文庫] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322103000572/

  • 宇宙のオモチャ箱みたいな、不思議とファンタジーとミステリーが詰まった奇妙な短編集。
    有栖川有栖さんの頭の中を覗き見しているようで、面白かった。
    私は線路の国のアリスが好きだったかな。あべこべで当たり前なんてなくて、だけどアリスは自分の感覚でずんずん進んでいく。そうそう、この感じ、ふしぎの国のアリスに会いたくなった。

  • 初の有栖川有栖作品、様々なジャンルのミステリーの短編が描かれていて、どの作品も楽しめて読めました。表題作「こうして誰もいなくなった」は、超名作のアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のパスティーシュ作品で、著者の再解釈のもと新たなかたちとして創られた物語で、クリスティの原作を読んだことのない私ですが、ストーリー、トリックなど、スリルがあって読みやすかったです。この小説を読んでみて、ぜひクリスティの原作も読みたくなりました。

  • 有栖川有栖の見本市というくらい、
    様々なテーマの短編小説。

    ミステリーが多めだけどファンタジーやオチがよくわからないものも・・・。話によって好みが分かれそうなイメージ。

    以下お気に入り

    『未来人F』
    江戸川乱歩の『怪人二十面相』のパロディ。
    書き方を忠実に真似ていた。

    『本と謎の日々』
    この本の中で一番好きな話。
    本屋で起こる謎を店長が解いていく。

    『こうして誰もいなくなった』
    アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を下敷きにした中編。そちらを先に読んでいてもおもしろかったかもしれない。

  • 短編集。
    もともとは、ラジオの朗読のため?に書かれた作品たちを集めた本のようで、「有栖川有栖の見本市」とのこと。

    表題作の「こうして誰もいなくなった」は、もちろんクリスティのそして誰もいなくなったのパロディ。
    現代に舞台を移して、スマホも登場するし、被害者たちの過去の悪行も現代的。
    しかし、そのまんま過ぎて…もう一捻り期待しながら読んでいたから、期待外れ感は否めない。あとがきによれば、そして誰もいなくなったは面白いけど探偵による謎解きがないのが残念だったから…と、探偵は登場する。でも、探偵が登場したことによって謎解きが変わるのか?という疑問はある…。 
    比べても仕方ないけど、十角館の殺人の秀逸さを思い出した。あれも、設定は「そして誰も」に近い、孤島での事件で、そして独創的だった。

    見本市のなかで私が気に入ったのは、「謎のアナウンス」。
    ある男性がスーパーマーケットに行くと、必ず流れる同じアナウンス。「黄色い上着に黄色いスカートを履いた女の子が迷っています。」…なぜ同じアナウンスが流れるのか?このアナウンスを聞いた男性はなぜ頭をかかえたのか?
    落語のようなとんちの聞いた話で、面白かった。

  • バラエティに富んだ短編集。
    ファンタジー系や短編集は
    サラッと読むことが多いけど
    展開が気になるものは程よく引っ張られ
    疾走感あるものはリズミカルで
    どの物語も緩急がよく、楽しく読めた( ´∀`)

    結末はあっさり?と感じることが多かったけど
    答えがなかったり、続きを想像させられたり
    するような終わり方よかった。
    全体的に不思議な世界に入り込めたので楽しかった。

    特に好きな物語は
    こうして誰もいなくなったもとても面白かったんだけど、意外にも
    「線路の国のアリス」がお気に入り。
    世界観と屁理屈、最高。

    この電車はどこに行くの?
    ドコカへ行けるよ。
    ドコカはあっち?
    そっちもドコカだけどあっちもドコカ。どっちへ行ってもドコカへ着く。
    ドコカという駅が二つあるの?名前の意味がない。
    アリスという名前は世界中でおまえだけが独占しているのか?

  • 有栖川有栖の見本市、というキャッチフレーズ通りの短編集。個人的には、本屋で起こる日常の謎を描いた【本と謎の日々】が好きだった。学生のとき、自分も本屋でバイトしていたので、懐かしい気持ちになった。
    【こうして誰もいなくなった】は、クリスティの名作をアレンジした作品。事件の最終形態は、偶然が作り出した謎だった(10人目の他殺体が島で見つかったこと)が、新しい切り口でよかった。

  •  有栖川有栖のノンシリーズものの中短編をまとめた作品集
    ・館の一夜
     ショートショートに近い短編。謎の館に迷い込んだ男女。真相は?という作品。真相は、その館は、男女が親密になるために利用するなど、特殊な目的のために使われる「館」のようなホテルだったというもの。インターネットやカーナビがない時代だからこそなりたったビジネス。これはさらっと読める短編ながら、面白い。「理」で面白い秀逸なショートショート。こういった作品を書ける作家は意外に少ない。★4
    ・線路の国のアリス
     不思議の国のアリスのパロディ的な展開を見せながら、鉄道ネタの言葉遊びがされ、小ネタが仕込まれている作品。こういった馬鹿馬鹿しい作品はあまり好みではない。★2
    ・名探偵Q氏のオフ
     ショートショート。だじゃれ、言葉遊びだけの作品。こういうショートショートが世の中には結構多いが、好みではない。星新一は、こんな作品がほとんどない作家だったように思う。★2
    ・まぶしい名前
     球場の名前等にスポンサーが付いているものがあることから、名前にもスポンサーが付く時代となっているというオチのショートショート。平凡なアイデアだが、こういったワンアイデアのショートショートは好み。★3~★4
    ・妖術師
     ショートショート。マジシャンというより、本物の妖術師が、妖術で観客の一人を本当に彫像にし、砂として崩れ落とす。本当に消滅してしまう妖術を見に来る。観客のうち誰かが消滅するという本物のスリルを味わうために。これはブラックで、面白いショートショート。★4で。
    ・怪獣の夢
     次期首相をうわさされる男の夢の話。川を渡ろうとする人を襲う怪獣の夢と、トンネルを襲う巨人のような毛むくじゃらの怪獣の夢。持たざる者の夢を理不尽に打ち砕くアンフェアな社会の仕組みを象徴する夢と、中学時代の生活指導担当の教師を象徴する怪獣の話。最後は、自身が日本を再建するために、大地震が来たときに最も効果的に壊れるよにデザインし、ゼロから作り替えようとしている。団結や連帯という言葉がふさわしい黒い影が怪獣となりその怪獣と対決する前の段階で終わる。
     これは、もう少し練り込んで、長めにした方がよかったかも。なんとなく言いたいことは分かり、好きになりそうな作品なのだけど、なぜかインパクトに残らない。★3で。
    ・劇的な幕切れ
     ネットで知り合った男女が心中しようとする。男の妄想で、女が地震をきっかけに心中を辞め、もらった毒で大量殺人の妄想をするが…妄想。最後は女に殺害され、女は死なない。男が人生を後悔するというオチ。劇的な幕切れというタイトルは、女に騙され、死ぬ直前に、男の心境に劇的な変化が生じたということを示している。
     有栖川有栖は安定したデキの短編を書くなという印象を持つ作品。安定していて、読んでいるときは楽しいが、どこか既視感もあり、作品のインパクトにあまり残らない。星新一っぽ作品。安定している作品で★3かなと。
    ・出口を探して
     出口が見つからない迷路に、知らない男と迷い込んでいた夢を見た女。その夢で出会った男を見かけたので、夢のようなことに巻き込まれないように逃走。しかし、後で、あの男は運命の人ではなかったかと後悔するというオチ。適度な謎と適度なオチ。安定したショートショート。こういった作品を安定して作るのは難しそうだが、作品の評価としては★3か。
    ・未来人F
     江戸川乱歩の少年探偵団シリーズのパスティーシュ。パスティーシュは、一時、清水義範が好きで、結構読んでいたが、パスティーシュとしても及第点。有栖川有栖は、器用な作家だも思う。
     メタ小説になっていて、明智小五郎や小林少年が、自分達が、2020年頃に書かれた小説の登場人物ではないか。書きつがれているのではないかと推理したり、20面相が、どういった怪人になろうか、新しい発想を出すのに苦労していると言っているシーンがある。
     これも★3の上レベルの作品。安定している。
    ・盗まれた恋文
     あとがきによると、朝日新聞から、この枚数(2頁程度)で、「恋文をテーマにしたミステリを」という依頼に応じて書いた作品とのこと。
     倫理観に欠いた探偵が、依頼に応じ、国民的女優の書いた、脅迫のネタになる手紙を取り戻すが、これを恐喝に使おうとしたために、助手に殺害されるというもの。手紙の隠し場所やネタの内容等もなく、ワンアイデアの作品。これも安定している。★3
    ・本と謎の日々
     有栖川有栖は専業作家になる前は、書店勤務だったとのこと。大崎梢リクエストの本屋さんのアンソロジーに掲載された作品
     箱が痛んだ本の方がありがたがる客の話。恐妻が原因ではないかというオチ。本をダブって買った人から、「気を付けてくださいね」と言われたのはなぜかという話。初版本があとから出てきたという真相。
     POPがなくなって、ある本の中に挟まっていたという話。POPを栞に使う立ち読み客がいたという真相
     開店直後、閉店前に店に来て、色々な部分を見回っていた男の話。近所に開店するライバル店の店主だったという真相
     本屋にまつわる話を盛り込んだ短編で、これを1つの短編に入れるのは贅沢。その気になれば、短編4つできそう。これは好みだし、★4で。
    ・謎のアナウンス
    「黄色い服に黄色いスカートのお嬢ちゃんが迷っておいでです。…。」というアナウンスが行く店、行く店で流れるという話。真相は、その客はその系列スーパーのオーナーで、自分が来たことを示していたという話。既視感はあるが、良くできた安定した一品。★3~★4だけど、★3かな。
    ・矢
     ー・と雨に、→を矢に見立てた作品。こういう作品も一時は好きだったけど、今はそうでもない。★3の下の方
    ・こうして誰もいなくなった
     短編というより中編の分量で、有栖川有栖なりの「そして誰もいなくなった」が描かれている。有栖川有栖が高校時代に「そして誰もいなくなった」を読んで、「名探偵が謎を解明するシーンの不在を寂しく感じた。」ことから、響・フェデリコ・航という名探偵が謎を解く。
     ブラック企業、仮想通貨等の現代の世相をふんだんに盛り込んであるのは、有栖川有栖が、クリスティが今、そして誰もいなくなったを書いたらこうなったかもしれないという思いからとのこと。
     この作品のポイントは、最後の一人は相打ちだったというトリック。併せて、遅れてきた一人を、全員を船で島に送った人物、小本仙助が殺害し、島に運んでいたというところ。あとがきで、著者自身が書いているとおり、斬新なアイデアというより、これまで誰かが書きそうで書かなかった物語、となっている。
     そして誰もいなくなったという物語のスタイルが安定して面白い。しかし、最後のサプライズはよほど考えないと予想を上回れない。開き直って、サプライズより納得のいくロジックを重視した仕上げとしたイメージ。★3どまりか。
     本格ミステリ作家、有栖川有栖の器用さを味わう作品集というイメージ。傑作とまではいえないが、安定したデキではある。★3の上の方という評価
     
     

  • ファンタジー・SF・ホラー・ミステリと、
    著者の色々なジャンルを読みたい人向けの短編集。
    オマージュ作品もあれば超短編もあり。

    作品によって読後感も様々でとても楽しめました。

  • 有栖川有栖の見本市というだけあって、ミステリーあり、ファンタジーあり、ホラーありで読み応えあり。作家アリスも学生アリスも出てこないけど、魅力的なキャラクターがいっぱい。

    表題作はアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」の有栖川版。外界と遮断された海賊島で、大富豪デンスケに集められた人々。到着日の夜に彼らはデンスケから死刑宣告を受ける。そして始まる連続殺人。人が殺される度に暖炉の上の人形も壊されていく。それぞれの正直な心情も描かれており、注意深く読むとなるほどーとなる仕掛け。
    終盤の展開が息付く暇もなく、一気に読める。
    胡散臭い探偵と真面目な警察官のコンビが素敵だったので、またこの2人で何かシリーズでもしてくれないかな。

    「本と謎の日々」も続編希望。人が死ぬような謎ではないけど、本屋の内情も知れてとても楽しい。
    突拍子ないけど論理的な「未来人F」、怪しい雰囲気満載の江戸川乱歩的な「妖術師」も良い。
    他もぞっとしたり不思議だったり、どれも楽しい。


    更に表紙がとても良い。赤色の妖しさと可愛さ満点の単行本と対比するような青色。妖しさと可愛さはそのままに、不思議の国のアリスの雰囲気も加わってこれもまた魅力的。好き。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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