- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041123256
作品紹介・あらすじ
あっしの洋行の土産話ですか。何なら御勘弁願いたいもんで。明治時代末期、大工の治吉はセントルイスで開かれる大博覧会で働くため、アメリカへ旅立った。ある夜、職場で出会った美しい中国人女性に誘われるがまま街へ出ると、不気味な地下室に連れ込まれる。そこで治吉が眼にしたのは、ガリガリと耳障りな音を立てて稼働する謎の肉挽機械だった……。幻想と猟奇趣味に彩られた粒ぞろいの短編全8編を収録。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
文体に時間の流れ、落語っぽさを感じた。
-
再読本
と言っても、読んだのはもうふた昔も前になる。
ただ、奥付を見たら改版初版のようだ。
もちろん違いなんて分かるはずもなく(笑
かなり久しぶりの再読なんだけど「人間腸詰」「木魂」はなんとなく読んだ記憶があった。
なんとなくのイメージとしての記憶だけど。
一番好きなのは「戦場」
とにかく引き込まれる。そして感情が忙しい。
迫力のリアリティで戦争を語ったかと思えば、ハインリヒとの神秘的な交流が始まる。と思ったらまた戦争の恐ろしい描写が始まり……と、展開が目まぐるしいけどとても面白い!
作品によっては思ってた以上に装飾過多な文章でとても驚いた。
(というか、作品ごとに語り口が違いすぎるのよね)
「髪切虫」のポエムは半分流し読んでしまったよ……ごめんね…… -
なんというひどいタイトル笑
しかも比喩的表現かと思いきや、マジメに人間ソーセージでした。恐ろしい。
いつも度肝を抜いてくれる夢野久作先生です。 -
913-Y
リクエスト図書展示コーナー -
表題作のタイトルのインパクトよ。
殺人事件を扱っている作品もあるがミステリーというより猟奇サスペンスの方に片寄っている感がある。『戦場』は『西部戦線異状ない』から想を得たのだろうか。
この人の作風なのか、独白形式が多いがそれもあってか読みやすい。 -
夢野久作お得意の独白体の物語。
独白体故、事実か嘘か読者に決定は出来ない。
だが、誇張の入った面白い話は全てこうしたパラドックスを含んでいるものだ。
アメリカが遥かなる国であった時代。
遥かなる国は、想像の国でもある。
想像には羽根がつくので、想像力はドンドン飛翔していく。
ましてや、この語りを確かめることはだれにも出来ないのだ。
語り手が調子に乗って、あることあること、あることないこと、そしてないことないことをいくら喋っても、それは違うとは誰も言えないのだ
物語に登場するアル•カポネのようなギャングが「カント•ディック」と命名されているのが笑ってしまう。
アメリカに行った語り手の主人公が、アメリカでまっさきに覚えたスラングに違いない。
何せ、「カント•ディック」とは、直訳すると、「ま◯こ•ち◯こ」なのだから。
彼(?)はきっとアンドロギュヌスに違いない。
聞き手に、「カント•ディックは日本名だと何と言うのか」と問われて、語り手はニヤリと笑って、嬉しそうに答えるのだ。
そして、語り手、聞き手共に大笑いをすると言う寸法だ。
表題の「人間腸詰」はそのアンドロギュヌス•ギャングが、語り手である主人公を脅すために使うミンチ用の巨大な機械から来ている。
(語り手によれば)主人公を救うために、美女がその機械に放り込まれて、ミンチ美人になってしまうと言うブラック•ユーモアだ。
夢野久作の作品はこうしたブラック•ユーモアのレベルで終わる短編が多い。
しかし、彼の真骨頂は、「ドグラ•マグラ」や「押絵の奇蹟」のように、同じ一人称独白体の自己言及パラドックス構造を持ちながらも、ブラック•ユーモアの地平を超えて、真に狂気のレベルに達する作品にある。
夢野のブラック•ユーモア作品に飽きたら、「ドグラ•マグラ」に赴くべし。
-
読む時代を間違えた