暗闇のセレナーデ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 92
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041123492

作品紹介・あらすじ

美大生の冴子は同級生の美和に連れられ、有名彫刻家に嫁いだ美和の姉・雅子の暮らす豪邸に訪れる。
そこで2人が発見したのは、ガスが充満したアトリエに瀕死状態で倒れている雅子の姿だった。
なんとか外に運び出すも、目を離した隙にアトリエはなぜか密室状態に。
犯行を疑われる義兄も失踪し、自殺か他殺かすら判然としない中、冴子と美和は独自の調査を開始するが……。
何度も覆る推理と巧妙なトリックが魅力の本格ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 思った以上に本格的ミステリーで謎解きという点でも読み応えのあるものだった。初っ端から密室の謎を持ってくるだけでなく様々な擬装トリックを惜しげもなく披露していて楽しめた。そして冴子と美和の女子大生素人探偵コンビの軽妙なやり取りが絶妙なスパイスとなり物語のエンターテイメント性を高めていると感じた。

  • 関西弁、慣れてるハズなのに気になった…

  • 既に長い活動歴を誇る黒川博行の「初期作品」と呼び得る小説だ。
    1980年代の作品なのだが、「現在では当り前のツール―例えば携帯電話やパソコン等―が使われていない…そう言えば…」という感はするのだが、全然古くない。興味深い謎解きである。続きが気になってドンドン読み進めてしまう。
    物語は京都に在る芸術大学から起こる。
    彫刻学科に学ぶ冴子が恒例の展覧会に向けた制作に勤しんでいれば、日本画科に学んでいる仲が好い美和に声を掛けられた。美和の姉が料理を用意してくれることになっているから、一緒に訪ねようと誘われたのだ。
    美和に伴われて冴子は出掛けた。京都市内から、阪急電車を乗り換えながら足掛け2時間程度も進み、西宮の甲陽園という場所に至った。高級な住宅地で、大きな邸宅ばかりが並んでいた。
    美和の姉である雅子は、この甲陽園に邸宅を構える加川家に嫁いでいた。夫の加川昌は彫刻関係の団体である立彫会の副理事長であった。立彫会という団体は加川昌の父が中心になっていた経過も在る団体だった。
    冴子は一度だけ雅子と顔を合わせた記憶が在ったが、彫刻の世界で名前が売れた人物に嫁いでいて、邸宅に住んでいたというようなことは知らなかった。或いは、立彫会は「話題づくり」を前面に押し出すような活動が目立ち、冴子達が学ぶ大学では必ずしも人気が無かったので、美和は敢えて話題にしなかったのかもしれない。
    美和は雅子と「友達を1人連れて行くね!」という具合に約束をして、時間どおりに訪ねている訳だが、何故か呼び鈴を押しても反応が無い。
    美和と冴子は邸内に踏み込んでみた。彫刻の制作等に利用するアトリエとなっている部屋の様子が不審なので入り込むと、ガスストーブのガスが漏れていて、雅子が意識を失った状態で倒れていた。2人は雅子を近くの別な部屋へ引き出し、救急車を呼んだ。
    そうしていた間に不思議なことが起こった。アトリエの室内側から鍵が掛かってしまい、“密室”になってしまった。現場検証に現れた警察署の鑑識班は窓をこじ開けて中に入って調べていた。
    雅子は一命を取り留めた。自殺未遂に擬せられた。とりあえず警察の捜査が入り、夫の加川昌との連絡を図る。が、東京の出先で「到着が遅れる」という電話を受けたという話しは在ったものの、行方がよく判らない。警察では「“自殺未遂”ではない事件?」という考えに傾き始める。
    冴子は美和と共に事件に巻き込まれたような具合になった。深夜まで刑事達に事情を訊かれた。冴子としても状況に釈然としないが、美和は更に納得していない。美和を迎えるということになっていた雅子が、その当日に自殺を図るのは不自然で、何者かが危害を加えようとしたに違いないと考える。
    こうして冴子は美和に引き込まれるように“素人探偵”というような事に関わって行く。他方で、警察も警部補の島崎を主任とする西宮北署の捜査一係が活動を始めた。
    「加川昌」を巡って、“素人探偵”と警察署の捜査員達とが各々に奮戦し、揺れ動く事態の中から真相を掴み出すというのが本作の物語である。
    黒川博行の作品と言えば、作中人物達の会話のやり取りが、作中の出来事の不明点を解き明かす、或いは次なる展開を導き出すというような「大事な役目」をさり気なく負いながら、それが軽妙で全体的な「好いテンポ」を創り出しているのが特徴だと思う。本作は、そういうずうっと続いている基調の中に「密室になってしまったのは何だ?」、「連絡が取れない男は何処で何を?」、「事態は誰が如何いう思惑で引き起こした?」という謎解きが幾重にも織り込まれている。
    多少、余計かもしれない事に言及する。黒川博行は芸術大学を卒業して高校の美術担当の教員として勤めていた経過が在る。今作で“素人探偵”として事件に巻き込まれる女子大生が芸術大学に学んでいるという設定、著名な彫刻家の所で事件発生という感じは、作者の個人的な経験や見聞を大きく反映しているのかもしれない。
    なかなかに楽しめた!この作者に関しては、新しい作品も凄く好いのだが、時々文庫で登場するやや旧い作品も面白い!

  • 有名彫刻家・加川昌の許に嫁いだ姉の雅子。彼女の暮らす豪邸を訪れた美大生の美和と友人の冴子は、ガスが充満したアトリエに倒れている瀕死の雅子を発見する。自殺未遂か殺人かすらはっきりしない状況の中、行方不明となった義兄の犯行を疑う美和と冴子の女子大生コンビは独自の調査を開始する!(e-honより)

  • アリバイ工作など細かすぎて良く理解出来へんし、考えるのも面倒くさと思ってしまった。

  • アリバイ工作、トリックなどに重点を置かれた本格ミステリー。登場人物のやり取りが関西的なコミカルさがあるのは黒川作品のお約束。今回は女子大生コンビが登場したが著者が書くと女っぽくないと感じた。トリックの謎解き、面白かった。

  • 楽しく わくわく 一気に読み
    黒川作品の別の一面

  • 珍しくメインテーマが女子大生、これは最初
    からびっくりでした。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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