ゲゲゲの娘日記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041127520

作品紹介・あらすじ

大漫画家であると同時に二人の娘の父であった水木しげる。その姿は、次女からどう見えていたのか!?
幼少期の思い出から、父・逝去後まで……娘としてずっと傍で”お父ちゃん”を支えてきたからこそ書ける、水木サンの魅力的な素顔に迫るエッセイ集。
家族のこと、仕事のこと、すきな食べ物のことなど、家族でしかしならいレアエピソード満載。
貴重な写真の数々も収録。生誕100周年の記念文庫化にあわせて、悦子さんの書下ろしエッセイを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 今年はマンガ家水木しげる氏の生誕百周年になるらしい。

     水木氏の次女悦子さんのエッセイ集。主に水木氏の晩年のエピソードが描かれているが、著者の子供時代の思い出も描かれている。
     「父と心配」、「父と虫」、「父と戦争、そして鬼太郎」の各エピソードには、特に惹かれるものがあった。特に最後あげたエピソード、戦場を片腕を失いながらも生き延びた人の言葉には重みがある。

  • 大好きな鬼太郎の水木しげる先生のお話。
    先生の人柄が面白い。
    家族は大変だと思うが、その大変さを娘さんは表に出さないし、すごい。
    私なら我慢できずに喧嘩しちゃいそう。

    左手がない状態で、どうやって自転車に乗ったのか気になった…
    今じゃ片手で運転したら怒られそうだが…

    貧乏な時に、お金が入ったら
    まず兄家族に渡す…
    これはね、絶対に怒ってしまうと思う。
    自分たちでさえ、満足な生活してない時にそんなことされたら…
    でも、家族だからと言う先生の優しさは間違ってない。当事者でないから、そう思えるが当事者だと頭にくるだろーに。

    先生の最後
    大変だったんだな。
    病院側がマスコミに漏らすのも勘弁してほしい。
    個人情報もない…

  • 漫画家・水木しげるの次女・悦子さんによるエッセイ。時期は『ゲゲゲの女房』刊行前年の2008年から、水木氏が亡くなる2015年まで。当時の話題だけではなく、悦子さんの幼少期や学生時代の思い出、悦子さん生前の水木氏の戦争体験や結婚直後の貧乏時代といったファンにはお馴染みの回想も多く含まれる。全26篇で各篇末尾にテーマと関連する写真数点も掲載されている。

    内容の多くは「父と○○」と題されている通り、悦子氏から見た父・しげるの趣味嗜好、行動パターンを記したとりとめのない話題が多数を占めている。特にその食欲の旺盛さを示すエピソードにはこと欠かず、飲食に関連するテーマは多い。並んで、妻・布枝さんとの仲睦まじい様子と、水木氏の布枝さんへの愛着の強さもたびたび覗える。他の関連著書になかったところでは、水木家の猫遍歴を記した「父と猫」が貴重だった。

    その素朴な文体もあって全体的に呑気で楽天的なエッセイ集だが、終盤にある「父と戦争、そして鬼太郎」と、最晩年に幾度かの入院と回復を経て死に至るまでの過程を描いた「お疲れさまお父ちゃん(1~3)」は色調が異なることもあって、本書のなかではとくに強い印象を残った。「お疲れさまお父ちゃん」では病と回復の経過を刻々と記し、水木氏と家族の心境の変化が伝わる。「父と戦争、そして鬼太郎」は、水木氏の戦争体験から受けた友人観と作風への影響に、悦子さんの小学生時代のいじめ問題を絡めて訴えかけるところが大きく、本書随一と思えた。

    「作り話の世界であっても、お父ちゃんは相手が死ぬところは見たくないわけなんだよ」

    実は今回、次女・悦子さんではなく長女・尚子さんによる著書だと勘違いして読み始めた。悦子さんによる著書はいくつかあるが、尚子さんによるものはおそらく存在しないのではないだろうか。できれば、尚子さんから見た水木氏や水木家に関する文章も一度は読んでみたい。

  • 偶々手に取った新刊。とても面白いエッセイだった。水木しげるさん初め、そのご家族の個性も際立ち。
    ちょっとさくらももこさんのエッセイを彷彿とさせるようなタッチでもあった(これは個人的な感想)。
    しかし、最後は思いもよらず泣かされた。

  • 映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が面白かったので、つい、「ゲゲゲ」の文字に惹かれました。
    水木しげるさんがどんな方だったのかまったく知らなかったのですけれど、ずいぶんお茶目でかわいい方だったようです。近くにいるとかなり振り回されてしまって大変そうですけれど……。

    奥さんに対する愛が深いところが素晴らしかったです。
    花束を渡すシーンは、とても感動しました。娘さんもそうだったようで、二度書いていてほっこりしました。

    水木さんなら、亡くなった後そばにいてもおかしくないと受け入れることができます。実際、死後ってどうなるのでしょうね。気になります。


    2024/04/19 p.7-64

    p.8
    “父は旅に出ると元気になる。”
    外に出るだけでも疲れてしまう身からすると、とても羨ましいです。お元気なのは良いことです。

    p.10
    “(うん今日も二人は仲が良いぞ)”
    ご両親のことを冷静に見守ることができるのですねえ。わたしだったら、見ないふり聞かないふりをして距離を取ってしまいます。

    p.17
    “「実はお父ちゃんも妖怪(ようかい)なんじゃないの?」と感じるほど、”
    実の娘さんにも妖怪と疑われていたとは……。

    p.17
    “「待つだろ。それが嫌なんだよ」”
    読書時間になるからいいじゃないですか。待ち時間にやることが特にないのでしょうか?

    p.45
    “父は何の迷いもなく、力強く勢いのある筆運びであっという間に鬼太郎を描き上げた。”
    生で、描くお姿を拝見できたのは羨ましいです。
    絵が描ける方たちって本当、素晴らしいですよねえ。完成品はもちろん、描いている様子を見せていただくととても感動します。

    p.45
    “緊張しながら父に感謝の言葉を伝えて花束を渡すと、ナント父はそれを母に渡したのだ。”
    家族みんな、他者のことを思い遣っているところが素晴らしいです。


    2024/04/27 p.64-82

    p.73
    “お父ちゃんはね、心がお母ちゃんのタイプなのよ。”
    わあ、このことば、最高ですね!
    確かに、わたしも心がタイプです、パートナーさんのこと。

    p.77
    ご夫婦のお顔とハートいっぱいの模様って凄いです。
    お上手! お写真を見たら本当に可愛らしいです。
    愛が込められていますねえ。

    p.81
    “父はいつでもそうだ。自分が美しいと思ったものや美味(おい)しいものは自分一人で楽しむのではなく、周りの人にも感動を分けてくれる。”
    すてき。独り占めではなくてみんなで分かち合うほうが楽しいですよね。


    2024/04/28 p.82-166

    p.97
    “甘いものが好きな祖父は、”
    お父さんの甘いもの好きは遺伝なのでしょうか。

    p.99
    “祖父は戦前、境港で映画館をやっていたくらいだから映画には人一倍うるさい。”
    それは凄い。好きなことをお仕事にできるって素晴らしいです。

    p.101
    “「お父ちゃん、おじいちゃんスゴイんだよ! 私が舞台衣装がこうだったって言っただけで何の話か分かっちゃったんだよ!」”
    凄いです。知識が豊富ですねえ。それなら、観に行く前に見どころ等教えてもらえばよかったのに……と思ってしまいました。

    新しい映画を観なくなり、歌舞伎ばかり観ていたというお祖父さん。きっと歌舞伎は変わらない良さがあるから、安心したのでしょうねえ。

    p.101
    “「やきもちを焼いとるんだよ」”
    お祖母さんとお祖父さんもラブラブなのですか。お父さんとお母さんのように。これも遺伝でしょうか。

    p.117
    “もうこんな時間だし調布駅まで送ってやるよ。今日給料日だから金あんだよ”
    (中略)
    p.118

    「今日は心配をかけたんだから明日は親孝行してやれよ!」
     とおじさんは元気よく私の背中を押してタクシーから送り出した。

    おじさんと車に乗るなんて大丈夫……? と心配してしまったのですけれど、ただただ気が大きくなっていた善い人でした。
    ありがとうございます、おじさん。無関係なのに、感謝したくなりました。

    p.120
    “どこかに連れて行かれて殺されとったかもしれんのだぞ!”
    本当にそうですよ! 無事で良かったです……。
    若い女というだけで余計なことを考える輩は存在します。残念ながら……。

    p.122

    「妖怪はおるんだよ。目には見えんけども」
     お父ちゃんは語り始めた。
    「今は昔と違って夜でも昼みたいだろ? 電気のせいで彼らは活動の場を奪われてしまったんだ。元気がないんだ!」

    (中略)
    p.123
    “「お父ちゃんは妖怪を復活させたいと常々思っておったんだ。今の人々に妖怪の存在を知らせにゃならんのだよ」”
    人々に知ってもらわないと消えてしまうのでしょうか……? 妖精みたい。どちらも「妖」だから似たところがあるのでしょうか。

    p.124
    “「どんな姿だろう……ってじっと考えておーとねえ、背後に気配がしてそれと同時に手が勝手に動きだすんだ……描くというよりも描かされているというようなカンジなんだねぇ」”
    制作秘話……! これは興味深いです。
    小説を書いていた時、登場人物たちが勝手に動き出すことがありましたけれど……あれに近い感じでしょうか。創作って凄い力を持っていますね。

    p.130

    「お父ちゃんてホント、絵がうまいよね」
     すると父はやっぱり、
    「ダッテ! オトウチャン、イッショウケンメイカイタンダモンッ!」

    「プロだからね」とか「これでご飯を食べているから」等ではなく、「一生懸命描いたから」というのが最高です。一生懸命心を込めて描いたから、多くの人の心に届いたのですね。

    p.165

    「(前略)どうにかしろ。お父ちゃんは、よ〜食わんよ!」
     と口をタコみたいにすぼめながら不満の言葉を発すると父はネーム室へと戻って行った。
     そして数日後、姉の提案でその羊羹は鍋(なべ)に沸かされたお湯に溶かされ、餅とともにお汁粉として生まれ変わり父の胃袋へとおさまったのである。

    つぶあんはダメで、羊羹もダメで、けれどもお汁粉は大丈夫なのですねえ。ずっしりとした形ではなくて、さらさらと食べることができたら良いのでしょうか?
    形が変わってしまえば食べることができるなんて、子ども騙しのようでおかしいです。可愛らしい人ですねえ。


    2024/05/06 p.166-191

    p.166
    “これ”(干し柿)“があると毎食後、三つ四つと平らげてしまう。”
    (中略)
    “一日に二つも三つも”(豆かんを)“食べていたが、お腹を下すことはなかった。父はお腹がとても丈夫なのだ。”
    一日ひとつとか、少量だけ(例えば半分だけ)とか決めずに、食べたいものを食べたいだけ食べていたようで驚きます。
    水木さんの何分の一だかわからないですけれど、わずかしか生きていないわたしのほうが食欲がない気がします。彼と比べてしまうと、長生きできる気がしません……。生きる力がありません。

    p.172
    “「ジャリの漫画」とは、もちろん鬼太郎のこと。飯のタネと割り切り勧善懲悪のスタイルで、子どもに分かりやすい漫画にした。”
    プロですねえ。割り切って描き続けることができるのは素晴らしいです。

    p.174
    “私がいなければクラスはへいわになるんだねあ。私はこの世に存在してはいけない人間なんだ。”
    (中略)
    “そうだ死のう! そうすればもういじめられなくなるし宿題や勉強をしなくてもよくなる! それって良いことだらけじゃん!”
    (中略)
    p.176
    “すごく苦しくなってしまったら死んでもいいんじゃないのかな? 死ねばその苦しみから解放されるんだもの”
    この文章を読んだとしても、頭から否定する人はいるのだろうなぁ……と思います。わたしはほぼ同じような思考で、しにたかったです。
    しにたくなる人って生きている状態がマイナスだと感じるから、死という0はむしろプラスなのですよねえ。しあわせな人は生きている状態がプラスだから、同じ0の死でも、マイナス。そりゃ感覚が違って当然です。

    過去の悦子さんを抱きしめたいです。

    p.177
    “お前の幸せはお前にしか分からんのだから。生きておればいずれ分かる。”
    基本的にしあわせって、向こうからやってきてくれるのではなくて、自分の周りにあるものを見つける・気づくしかないようです。他人から見たらしあわせでも、本人にとってしんどければ、まったくしあわせではありません。
    ……ということは、どんなに小さなちいさなことでも、ご本人が「しあわせ」と認識したらしあわせ。
    衣食住がそろっていて、戦争のない国で暮らしているのだからしあわせ、とも言えます。自分から離れすぎていること──例えば海外──と比べても実感がわかないですけれど。わたしは、ご飯が美味しいと感じたらしあわせ、空を見上げる余裕があるとしあわせ、と感じます。
    その人なりのしあわせがあればそれで良いです。周りから見て立派なしあわせではなくて良いです。


    2024/05/06 p.192-193

    2024/05/08 p.193-201

    p.197
    “命をなくせばそれまでだけれども、腕はなくしても生きておられるんだもの。”(中略)““生”の喜びに勝るものはないよ”
    そんなに生きていることが嬉しかったのですか……。凄いです。
    長らくしにたいと思っていた身としては、そこまで、生きている状態を喜べないです……。
    まぁ、生きたいのにしにそうになった人と、生きたくないのにしのうとしてしねなかった人では、感覚が違って当たり前なのでしょうけれど。


    2024/05/11 p.202-246

    p.202
    “出征前には、すぐそこに迫っているであろう「死」とどう向き合ったらよいのか模索していた。哲学や文学、芸術……様々な本を読んだという。”
    そうですよね……。戦地に行く、イコール、死ぬ可能性が高い……。それは当然皆わかっていたことです。それと向き合うにはどうしたら良いか悩む人も多かったのでしょう……。
    何故だか、いままでそのことを考えていませんでした。そのような時代なのだとスッと受け入れてしまうのかと思っていました。

    p.237
    “父が結婚したのは四十歳。当時としても晩婚だった。”
    結構遅かったのですね……。けれど93歳まで生きたなら、そのタイミングでも十分長く一緒にいられた気がします。

  • 水木先生、けっこうワガママだったんですね。
    そしてどれだけ家族に愛されたか。
    素晴らしい家族ですね。

  • 次女悦子さんから見た水木しげるさんの日々の様子。ユーモアたっぷりの水木しげるさんや布枝さんとのやりとりから、うらやましいほどの家族の仲のよさがよくわかる。
    悦子さんがいじめにあって死のうと思ってひらきなおっていたときに、さりげなく語った水木しげるさんの言葉は、覚えておこうと思った。
    飄々とした笑顔の水木しげるさんの写真を見ると、戦争で悲惨な体験をしたがゆえに、おおらかな気持ちを持てるようになったのかもしれないと思った。

  • 水木しげるさんの「友だちは作らない」という心情にすごいな、と思った。
    彼はつくづく人間がでかい人なんだなあ。

  • 面白い。
    すごく素敵な人だな〜と。
    戦争経験がそうさせるのかもしれない。

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著者プロフィール

漫画家・水木しげるの次女。水木プロダクション勤務。

「2022年 『ゲゲゲの娘日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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