仮面舞踏会 金田一耕助ファイル17 (角川文庫 よ 5-17 金田一耕助ファイル 17)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304389

作品紹介・あらすじ

夏の軽井沢に殺人事件が起きた。被害者は映画女優・鳳三千代の三番目の夫。傍にマッチ棒が楔形文字のように折れて並んでいた。軽井沢に来ていた金田一耕助が早速解明に乗りだしたが……。

感想・レビュー・書評

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  • 田代、お前「そうはならんやろ」大賞やで

  • 仮面舞踏会
     プロローグ
     第1章 大貴族の朝の食卓
     第2章 役者は揃っていた
     第3章 考古学者
     第4章 女と考古学
     第5章 マッチのパズル
     第6章 蛾の紋章
     第7章 楔形文字
     第8章 箱根細工
     第9章 A+Q≠B+P
     第10章 祖母と孫
     第11章 師弟関係
     第12章 考古学問答
     第13章 目撃者
     第14章 青酸加里
     第15章 操夫人の推理
     第16章 万山荘の人びと
     第17章 下司のカングリ
     第18章 誰が青酸加里を持っているか
     第19章 佐助という名のピエロ
     第20章 グリーンは知っていた
     第21章 霧海
     第22章 ライター
     第23章 もうひとりの女
     第24章 操夫人の冒険
     第25章 尾行
     第26章 悪夢
     第27章 崖の上下
     第28章 信楽の茶碗
     エピローグ
    講談社「新版横溝正史全集 第17巻」 1974年11月
    (原型 「仮面舞踏会」 宝石 1962年7月~63年2月中絶)

  • 誰が犯人か最後まで分からなかったので、最後まで面白く読めた。操の責めている時は長かったしそこまで面白く無かったので辛かったけど。あと、今までと違ってマッチを巡る着想が、最後の最後にそこに繋がるんだという伏線回収も驚きがあって面白かった。色盲の生まれが犯人を見つける、犯人がどういう人物か分かる一端となるのが勉強にもなってある意味感嘆した。トリックというよりは、探偵として、どう犯人を導き出すのかがよく分かって良かった。

  • 初めての横溝正史作品だったけど、テンポの良い昭和の日本語がとても心地よく、かなりの長編なのに楽しく一気に読めた。
    ストーリーも非常に面白い。物語の背景にずーっと流れているそこはかとない狂気感に惹き込まれた。

  • 正確に書くと星3.8。
    王道の金田一耕助シリーズって感じ。
    やっぱり設定とか、解決までの過程とかが細かく描かれていて良い。
    最後は昔の小説あるあるな気がする。

  • ようやく読了。
    会話場面が長いことや、時代があちこち飛んだり、鳳千代子の元旦那さんが4人いたりしてちょっとわかりにくい。でもその会話がとても昭和チックで上品であり、金田一耕助がウロウロしながらもきっちり謎解きをする場面は秀逸☆
    古谷一行さんのドラマで結末は知ってたけど笛小路篤子と美沙が本当に怖い。
    最期もこれまたゾッとするけど、これぞ横溝正史って感じ。
    題名の仮面舞踏会、まさに、です。

  •  1974(昭和49)年刊。横溝正史の生没年1902-1981を考えるとこのとき既に72歳。もう晩年と言ってよいかもしれない。
     本作では4回も結婚し今新たに5人目と交際している大女優を中心に、避暑地の軽井沢で複雑な人間関係が殺人事件の背景として構築される。別荘を持っている人々が大半だから、富裕な層である。
     本作の舞台は1960(昭和35)年。テレビが各家庭に爆発的に普及し始めた頃のようだ。
    『白と黒』(1961)と同様、文体は軽く、江戸っ子の口上のように剽軽で滑らかだ。この軽さは、昭和20年代の『八つ墓村』等の傑作群で恐怖やおどろおどろしさを喚起し読者を巻き込んでいったあのエモーショナルさとはほとんど反対のものである。「そのとき、金田一耕助はこの後すぐにあの陰惨な事件に発展しようとは夢にも思わなかった」というような煽りの予告もかなり減った。あの怪奇趣味とエモーショナルな物語ストリームに惹き付けられた者としては、ちょっと物足りない。
     老齢によって文体が淡泊になったのだろうか。時代の変遷により、かつてのあからさまな情動喚起の手法が古びてしまい、ドライで軽く、「シラケ」へと向かって世間の言表フィールドが変容してきたことも、この作家のフィールドに作用しているのではないだろうか。ドライさへの時代変容は、松本清張ミステリのクールで残酷な文体の展開とも一致しているようにも見える。昭和49年といえば昭和30年代に充実期を経験した清張作品よりも、さらにそのずっと先の時代に突入している。
     そう思うと、失われたストレートさ、あのエモーショナルな文学ストリームへの郷愁は深い。ストレートな気分の表明がダサくなってしまった時代、全共闘以後のこの時代は何かを隠蔽することによって成立しているようにも見える。
     しかし、本作はクライマックスから終結までの部分は緊張感があって良い。最後まで読むと、『白と黒』と同様に、どうも横溝正史はかつての怪奇趣味の代わりに、歪んだ性のグロテスクさに心を惹き付けられたようだという風に思える。中盤の弛緩を補うような終結部だ。

  • 夏の軽井沢を脅かす殺人事件。映画女優・鳳千代子の過去の夫たちが毎年一人ずつ変死を遂げる。千代子と恋愛中である財界の大物・飛鳥忠熈は、金田一耕助にその真相を探るよう依頼する。恐るべき悪意の舞踏会で仮面を剥がされたのは誰か。

    霧深き軽井沢で巻き起こる連続殺人事件。手がかりは次第に濃くなる霧に阻まれ、その全貌を掴ませない。犯人の検討もつかないまま後半に差し掛かり、立ち込めた白い霧が一転して黒い闇に裏返った時は思わず声を上げてしまった。予想のさらに上を行くどんでん返しの興奮。まさかそれが伏線?!と一本取られた。

    追撃するのは暴かれた人間の底知れない悪意。金田一シリーズでは大団円となる事件もあるけど、今回は洞窟の奥底へ心中しに落ちるような行き止まり感が凄まじい。重すぎる!軽井沢じゃなくて重井沢だよ!と冗談を飛ばして気を紛らわせるしかなかった。

    これは生き残った人たちが幸せに暮らせる日は来るのかな…と心配になってしまったなあ。10作ほどシリーズを読んだ中でも、純粋な悪意という意味では屈指の作品だと思う。

  • 死に方が地味なので油断していたら、真相がトップクラスに気持ち悪かった。人間の嫌な部分が凝縮されていて、読んでいてものすごくむかついた。美沙が殺されたわけではないのを知って少しほっとしたけど。人間、ああも醜悪になれるのか…。これからのことを考えると、あの結末が最良のような気もする。

  • 500ページの読み応えのある長編作品。
    最初に江戸川乱歩に捧ぐとあるが、乱歩作品に影響を受けたものなのだろうか。
    冒頭に登場人物紹介があるので、名前を覚えられない私には助かった。
    土日に一気に読んだので、霧の降る軽井沢の世界にたっぷりひたれた。

    金田一耕助シリーズは、今の時代にはない上流階級の暮らしをする人の世界の中での作品が好きだ。
    御用聞きの小僧、婆や、暮らしが落ちぶれたなんて言いながらいちいち細々としたことを頼む、あの感じが私にとってはファンタジーに近い。

    霧が深く前もよく見えないゴルフ場の描写などはホラー的な雰囲気も楽しめる。
    冒頭の心中に向かうシーンはもの寂しく心に残った。

    美沙に毛糸を拾わせようとして色盲を指摘した時のシーンは思いもかけなかったのでドキっとしたし、ゾッとした。

    個人的には千代子さんのその後や忠熙とどうなったかも知りたかったなぁと思った。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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