- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041434048
作品紹介・あらすじ
大正から昭和にかけて、もっともハイセンスで知的な雑誌であったばかりか、数数の才能を生み出し、日本における探偵小説・ホラー小説の黎明期を支えた「新青年」より、選りすぐりの怪奇小説を集めたベストセレクション。江戸川乱歩「芋虫」、小栗虫太郎「紅毛傾城」、夢野久作「鉄槌」など、13編を傑作を収録。極上モダン・ホラーの恐怖が、時代を超えて、今、甦る。
感想・レビュー・書評
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暑くて寝苦しい夜にこんな一冊はどうだろうか。
大正から昭和にかけて執筆された
怪奇小説集を集めたベストセレクションだ。
もっとも13篇もの短編の中で
私の知っている作家や作品はほとんどなく、
お目当ての江戸川乱歩のみだったので、
それを中心に書いてみた。
● 「芋虫」 江戸川乱歩作
傷痍軍人として帰国した夫に献身的に使える妻の苦悩を綴ったものだ。
砲弾の破片をもろにうけた夫は
手足がふっとび耳は聞こえず口もきけず、
胴体だけの異様な姿となっていた。
それでも傷だらけの頭部の中でも眼だけは正常で、
口に鉛筆をくわえてカタカナは書けた。
かろうじて生きているだけの夫との生活は、
妻にはだんだんと重荷になってきていた。
妻の心中を察した夫のとった行動とは・・・・。
夫を憐れと思いながらも、
介護にあけくれる毎日は妻の心を疲れさせていった。
その葛藤が、夫の怪我をするまでの回想とともに
暑苦しいほど濃厚に書かれていて、
ぐいぐいと引き込まれて読んでしまった。
人間はなんと精神的にも弱い生き物だろう。
その中でも夫が最後にとった行動は、妻への愛の証だったのだろうか。
どんな姿になっても、
人を思いやる心を持っていた夫はやはり人間だった。
なんだか、切ないが・・・。
あらためて読んでみると、
夫の憐れな姿の描写は、ゾクッとくる。
やはり、江戸川乱歩は素晴らしい。 -
「新青年」に掲載されたホラー、及びそれに近い味の作品を集めたアンソロジー。文章や背景、作品自体に時代を感じさせられるが、それらは同時に、現代のホラーにはない味わいをも感じさせる。
江戸川乱歩、夢野久作といった有名作家から、現在では殆ど名前の知られていない作家のものまで13編を収録。この時代と作家については巻末の解説にて詳説されているので、こちらもぜひ一読されたい。
何も「土着ホラー」だけがジャパネスク・ホラーではない。大正及び昭和時代の、紛れもない「日本のホラー」なのである。 -
これは橘外男の「逗子物語」が秀逸。
純和風な物悲しいお話ですが、最後が救われるようなシーンで涙が止まらなくて。
にしても子供と怪談って似合いますね。 -
似た系統の著者が集まっています。