- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041456118
作品紹介・あらすじ
新宮、古座、吉野-。神話と伝説、そして敗者の地、故郷・紀州。その自然の核を探り当てたい。生の人生を聞きたい。地霊と言葉を交わし、美しさのおおもとを見たい。漁業組合で、製材所で、食肉センターで、この土地に生まれ、生活する人々の声を求め、中上は歩き廻り、立ちどまり、また歩く。「差別」という物の怪は、まだこの地をさすらっているのか。鋭い視線で半島をえぐる旅を記録した、ルポルタージュの歴史的快作。
感想・レビュー・書評
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作者の魂の故郷とも言える和歌山のルポタージュ。
ぐるぐると縁の深い土地を回りながら、土着の逸話やそこに住む人々の話を、10p弱で区切った短編集形式。にも関わらず内容は重く、非常に読み進め難い。
作者の思い入れが強すぎて、あまり楽しんで読めなかった印象。ただ、故郷を通して彼の伝えたい事・想っている事は感覚で入ってきた。他作をスムーズに読むには必読書なのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の唯一とも言えるノンフィクション。熊野地方を1年近く旅をしたルポである。歩くのではなく車を使う。したがって行ったりきたりもする。
全編に渡って「差別」をキーとしている。和歌山はそうなのか。中にも書かれているが東北の人間にはわからない事だという。そう私には全く分からない。 -
作者が意図していたようなルポになっている。
この生々しさは日本では唯一無二のものかもしれない。
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中上健次と一緒に歩き、立ち止まり、考える
差別という物の怪を
この国の闇の構造を
この本はそのための手がかり -
枯木灘や岬を復讐するようにこのルポルタージュを読んだ。
差別、被差別の感覚は、ざらっとした感覚として持っていたけど、内面をえぐるような表現で、心を揺さぶられた。
そして、改めて島崎藤村の破戒を読みました。 -
久しぶりに読んだ、中上健次。
本書は中上健次が残した唯一のルポルタージュと言われているが、読んだ感触としては私小説に近かった。この、紀州全域を回る旅路は、現実の旅でありながら、自己の内面へ、内面へと向かう旅路だったように思えてならない。
なんというか、『枯木灘』などの代表作が、小説という散文作品に昇華する前の、もっと生々しい部分を直に読んでいるような思いがした。 -
鬼らが跋扈する「鬼」州、霊気の満ちる「気」州、中上氏の原点である紀州を巡るルポタージュである。彼が問うたのは自身の源流と紀州サーガであり、それらを霧のように包む被差別と非差別を解き解し、剥き出しの本質を探り出そうとしている。作中の突然の屠殺願望などは、中上氏のなかに眠る「濁った高貴な血」の放出なのかもしれない。
紀伊半島は紀伊山地を挟み近畿至近にありながら隔世感がある。私自身串本に観光へ行ったことがあるが勉強不足でその隣に「枯木灘」があることも知らなかった。その「路地」で育った(いわゆる部落)中上氏は、紀州の溜へ足繫く通い、血脈と被差別について推敲を重ねる。
ルポタージュという形式でありながら、ドキュメンタリーのような周到な準備と緻密な取材があるわけではないが、時々の出会いと発見に触れ、自身の思考を醸成していく過程が興味深い。 -
紀州に横たわる漂泊者と非人の歴史。私が産まれた頃にはリアルだった歴史の残像。東日本にいると全く理解出来ない、この皮膚感覚。
分からないから読むのですよ。 -
2017年9月10日に紹介されました!