脳のなかの幽霊 (角川文庫)

  • KADOKAWA
4.17
  • (113)
  • (72)
  • (47)
  • (5)
  • (5)
本棚登録 : 1927
感想 : 105
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042982111

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • VR商品などが出るようになり、改めて脳(をどう騙すか)にスポットが当たりつつあるように思い、手にとってみた。このテーマは、脳を司る「自分」とは何かといった問題にまで侵食し、終いに科学か哲学か分からなくなってくるが、VRゲームなどで未知を味わう体験などは、各自が持つその答えの1つになるのかもしれない。

  • おもろい

  • わたしが脳科学というものに興味をもつきっかけになった一冊。

    脳科学といえば、脳の特徴をつかんで心理的だったり意識的に自分をコントロールするテクニックばかり浮かぶが、
    motorも心理も、さらには著者がメインで研究している美とはなにか、といった内容まで幅広く取り扱っているので、イメージする脳科学の世界が変わってくる。

    脳科学自体が大きすぎて、つかみどころがないように感じるが、脳になんらかの形で働きかければ、そのブラックボックスでなにかが起こって、なにかが返ってくる。その、打てば戻ってくるその手応えのような感覚を、著者の経験を通して感じることができる一冊だと思う。

  • 原著は1998年に出版のため、今読むと目新しさは全くない。ただ、当時としては画期的だったろうと思う、幻肢を通しての脳の働きに関しての考察である。最も印象的だったのは、本編の最後、宇宙論学者のポール・デイヴィスの「宇宙は意識のある生物を通して自己認識を生み出した。これがささいなことであるはずがない。考えのない無目的な力のとるにたりない副産物であるはずがない。私たちはそうあるべくして、ここに存在しているのだ。」だった。
    観察者がいなければ、その対象は存在しているとは言えない。宇宙は自己の存在証明のため、自らを観察し、本質を理解し得る知的生命体を意思を持って進化させている、と主張している。 ポール・デイヴィスの著作を読んでみたくなった。

  • 面白い話と難しい話が交互にやって来る。全体としてすごく面白い、けれども哲学的な部分は私にはお手上げでした。

  • 友人が貸してくれたので読みました。神経解剖をやって間もなかった時期だったので一つの章ごとになるほどと理解を進めることが出来ました。ただ,難しいです。あと同じことを何度か繰り返して述べているため途中で飽きちゃったりして読み終わるのに時間がかかりました。
    途中で紹介されていた火星の人類学者というのも時間があれば読みたいなと思います。

  • パワーズの小説『エコー・メイカー』に出てくるカプグラ症候群、事故がきっかけで近親者を偽物だと思うという吃驚な症例。記憶喪失なんて一昔前の漫画の世界だけかと思ったら本当にあるんですよこれが。患者の変容の実例がでてくるでてくる。主に幻肢、身体の一部を切断せざるを得なくなった人が、無くなったその部分に痛みを感じる、それはどこからやってくるのか、かつての体験が脳に残した記憶なのか、そもそも脳の中の機能というのは一体……、という本。面白い話が一杯ですが、けっこう長い。

  • 脳科学の茂木健一郎氏の「意識とはなにか」の中でこの一冊が紹介されていて、興味を持ち読んでみた、私の頭ではなかなか難解だったがとても面白かった、読破するのでに2ヶ月もかかってしまった(笑)。誰しもが思うことで「人の意識」とは・・・。これからももっとこのテーマが解明されれば面白いと思う。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜

    No.27

  • 「人間の脳は宇宙でいちばん複雑に組織された物体である」(33頁)という。この複雑な脳のおかげで,ひとはものを見たり,言葉を話したり,情緒を感じたりできる。では,このとき,脳の中では何が起こっているのだろうか。本書は,脳の働きや人間の行動を研究している神経学の教授であるラマチャンドラン博士(とサイエンスライターであるサンドラ・ブレイクスリー)が脳の働きについてわかりやすく解説した本である。

    本書では,めずらしい神経疾患が数多く紹介されている。切断された手足の感覚をずっと持ち続け,場合によっては「幻の手足」に「本物の痛み」まで感じるという幻肢や,普通なら感じるはずの温かみを感じられないために,本物の父母を偽者だと信じ込んでしまうカプグラ症候群などだ。ラマチャンドラン博士によれば,これらの神経疾患を詳しく調べることで,健全な脳の実際の働きについて多くのことを知ることができるという。

    本書には,神経疾患の紹介とともに,患者に対して行われた簡単な実験の様子もしばしば描かれている。脳の中で起きていることについての仮説を簡単な実験で検証できるのだ。これは,著者の研究姿勢を強く関係しているのだろう。高価な装置を使わなくても,直感と推論,そして簡単な実験によって新しい発見が得られる,というものだ(18頁)。

    大まかに言って本書はふたつのパートにわけられるだろう。1章から8章までは,稀な神経疾患の研究を通じて得られた脳の仕組みや働きにかんする新しい知見を解説している。たとえば4章は,視覚にかんする脳の働きを説明している。視覚とは単純なひとつの過程なのではなく,脳内にある30ほどの領域が連携して生じる非常に複雑な過程である(126頁)。そして,どの領域がどのような役割を果たしているのかが,脳に損傷を受けた神経疾患の患者を詳しく調べることで明らかになっていく。

    それに対して9章から12章までは,脳機能について得られた知見をもとに,人間に特有と思われる行動や脳の働きについて,進化の観点から推論している。人間の脳は神を信じるような神経回路を進化させてきたのではないか,創造力や美術の才能に優れた人間が時々現れるのはなぜなのか,笑いの機能とは何なのか,そして赤いとかあたたかいとか痛いとかの主観的世界の感覚であるクオリアがなぜ進化してきたのか。脳科学がこれらの問題に対する答えを簡単に出せるとは思えないものの,こうした問題を提起できることこそが,人間という存在にかかわる大きな謎なのだと著者は結んでいる。

    本書は1999年の単行本を文庫化したものなので,内容としてはやや昔のものと言える(原書の出版は1998年)。脳神経科学の進歩も早いだろうから,この15年の間に明らかにされた知見も多いだろう。しかし,この手の本として,本書はいまだに興味深い一般書だと言えよう。まずは,人間の脳について知りたいひとに本書を強くおすすめしたい。そして,人間と他の動物との違いに関心があるひとも本書は興味深く読めるだろう。また,本書に登場する稀な神経疾患について興味があるひとは本書とともにオリヴァー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(ハヤカワノンフィクション文庫)がおすすめだ。本書とあわせて読んでみると良いと思う。

全105件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

カリフォルニア大学サンディエゴ校の脳認知センター教授及び所長。ソーク研究所兼任教授。2011年タイム誌が選ぶ世界に最も影響を与えた100人に選ばれた神経科学者。

「2011年 『脳のなかの幽霊、ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

V・S・ラマチャンドランの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×