新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫 315 ビギナーズ日本の思想)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043093038

感想・レビュー・書評

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  • この新訳はかなり読みやすいからおすすめ!

    「茶の本」全編はもちろんのこと、「東洋の理想」の序章&終章及び岡倉天心の生涯が収録されているので、岡倉天心入門書としては最適です。

    お茶ってすごい美しいんだなぁ、もはや哲学。いや宇宙。ってことが感じられる本です。

    まさに暮らしの哲学。

    そう思うのは、「暮らしの手帖」編集長の松浦弥太郎氏が某雑誌で「暮らし」の本の頂点のキーブックとして、本書を選んでいたかもしれない。

    日々の暮らしの中に、芸術がある。ライフ即アート。

    毎日を美しく過ごそうと思う、襟を正される本です。

  • お茶の歴史や、当時の西洋と東洋の微妙な関係を読みました。
    勉強になることが多くて、特にこの本に対して意見とか感想がうかばない。東洋にはすばらしい哲学と茶の精神があることを学びました。

  • 先日伊勢神宮に行ってから、日本的な美意識に興味が沸々と。岡倉天心の茶の本が新訳で出ていて、なかなか評判がよろしいらしい。

    茶道の本質は不完全ということの崇拝ーー物事には完全などということはないということを畏敬の念を持って受け入れ、処することにある。不可能を宿命とする人生のただ中にあって、それでも何かしら可能なものを成し遂げようとするこころ優しい試みが茶道なのである。

    この一文に、西洋と東洋の美意識の違いがエッセンスとして凝縮されている。これは美意識のみならず、一神教を軸とする西洋の精神文化の持つ論理、構造性、に対応する東洋からの回答ともいえる。不完全性を受け入れた諦めの先にこそ、軽やかで自由なこころの境地があるということだ。

    またこういうのもあった。チャールズ・ラムの言葉として本文中に引用されている。

    「善きことをなすにあたってはひそかにこれをおこない、たまたま表にあらわれるにまかせることをこそ無情の喜びとする。」茶道とは美を見出してもそれを包み隠しておくたしなみであり、あからさまな表現を避けて暗示するにとどめておく術だからである。それは自分というものを、つつましやかに、しかし徹底的に笑いのめす気高い奥義であり、その結果として、ユーモアそのものであり、悟りの微笑なのである。

    またそこに岡倉天心は汎神論的な神秘の輝きを見いだす。茶とは神の飲み物、天の甘露であると。そして中国で勃興した茶の文化がモンゴルの襲来に酔って中国では衰退してしまったものが、日本という国で生き残り継承発展されて行ったと。

    私たち日本人にとって茶道は単に茶の飲み方の極意というだけのものではない。それは、生きる術を授ける宗教なのである。茶という飲み物が昇華されて、純粋と洗練に対する崇拝の念を具体化する、目に見える形式となったものであり、その機会の応じて主人と客が集い、この世の究極の至福を共に作り出すという神聖な役割を果たすことになる。(中略)茶の湯は、茶、花、絵などをモチーフとして織りなされる即興劇である。部屋の色調を乱すような色、動作のリズムを損なうような音、調和を乱すような仕草、あたりの統一を破る酔うな言葉と行ったものは一切泣く、全ての動きは単純かつ自然になされる。茶の湯が目指したのはこのようなものである。そして、この企ては不思議にも成就されたのである。その全ての背景には微妙に哲学が働いている。茶道は姿を変えた道教なのである。

    引用が多くなって申し訳ないが、この新訳での現代的な言葉遣いの効果も相まって、岡倉天心の言葉が現代の西洋と東洋という大きなパラダイムを橋渡しするための高度に現代的な批評となり得ているところに驚きを禁じ得ない。そしてその本質、茶道とは霊的な儀式、儀礼であり、さまざまな象徴言語を用いて神人一如な世界への参入と捉えている所など、西洋・東洋が最も深い歴史的レベルで繋がる、霊的な源流へと茶道が通じていることを物語っているのだ。





  • [08.08.12]再読。あとはこれを叩き台にして、久松真一氏の茶の本批判であるという『茶の精神』を読みたいんだけど、手に入りそうにないなあ。<BR>
    [05.04.21]全体として恣意的に過ぎるというか、本の書かれた目的を考えれば当然なのだけれど、これは「東洋」の知られざる価値を「非東洋」に紹介している本であって、東洋人の「東洋とは何か」という疑問に答えうる本ではなかったな。チョイスを誤りました。理論武装の材料としてはおもしろいと思う。

  • こんなに芸術を愛し、日本を愛する国際人がいたとは…!
    戦後において西洋追随ではなく東洋の素晴らしさを忘れず、
    時代に流されなかった天心は立派!
    ただし他文明を差別化した表現が少々気になった。

    芸術の在り方が、あまり納得いかない。
    「芸術とは自分の内から湧き出るものを表現すること」
    って私は思うけど、 彼に言わせると私は
    「近代西洋の自己中心的な考えに染まりきっている」 らしい。

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著者プロフィール

1863~1913年 美術評論家・思想家。本名は覚三。文明開化の風潮の中で、フェノロサとともに日本美術の復興に尽くした。東京美術学校開設に尽力し、のち校長となる。その後、日本美術院を創立し、明治日本画家の指導者として活躍、ボストン美術館中国日本美術部長などを務める。英文著書による日本文化の紹介者としても知られる。著書は本書を構成する『茶の本』『日本の覚醒』に加え、『東洋の理想』の三冊が代表作。

「2021年 『茶の本 日本の覚醒 矜持の深奥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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