欲望会議 「超」ポリコレ宣言

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044002121

感想・レビュー・書評

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  • 二村の映画評に共感する点多し。シェイプオブウォーターの半魚人との性行は世にあるようなマイノリティを越えた恋愛であるはずはない。ポリコレに含有されているファッショを開き直って明言してくれて溜飲が下がると同時に表現の危機をも孕んでいることは確かだ。

  • とても良い本だった。

    コンプライアンス至上の現代で感じる、正しいけれども閉塞感がある状況を、的確に言語化しており、未来を考えることができるようになる本だと感じた。

    開沼博さんの漂白される社会を数年前に読んだ時に、現代社会と日本の未来は絶望だな、と思ったけど、この本を読んで気持ちを立て直すことができた。

    印象に残ったのは同性婚な法制化に関する議論。俺は割と何でもかんでも政府が担保するのがリベラルで良いと思ってたけど、そういうことでも無いということが分かり啓蒙された感じ。

    何にせよ良い本。

  • 私には非常に難解でしたが、ところどころ気になるところがありました。 グローバル資本主義の世の中は、交換可能なものばかり。でも、そこに交換不可能なものがあると認めることの大事さ。 心の傷は共感することはできるが、あくまでも、自分のものなのか、他者のものなのか、はっきりさせる。 「普遍的な正しさだけを求めようとすると結果的に、より陰湿な暴力が生まれる。誰にも共感されえない固有の秘密や無意識を、人間は持つ必要がある。」 最後に二村さんの言葉を引用して終わりとする。

  • もう一度ゆっくり読まねばならないと思うくらい、グサグサくる言葉がそこかしこにあった。雑談にも近い対談形式でしかない疾走感というか、話題の移り変わりが面白い。言葉に出来なかった思想をここまで言語化してくれるとむしろ気持ちいい。

  • サクサク読めてザクザクくる本。
    「性的欲望」を根底に、一つの章の中だけでも様々な論点が散りばめられている。
    自分には馴染みのない問題について話していたと思いきや、急に自分の心をサクッとえぐってくる発言があったりして、ジェットコースター感ありました。
    現代の生・性を捉える一助としても、知的エンタメとしても優れている本だと感じました。

  • めちゃくちゃおもしろかった。

    柴田英里さんは人の欲望に新しい視線を投げかける人で、もともと好感をもって見ていたのですが、ここではよりリラックスして思考展開しているように感じた。フェミニズムにまつわる人物と事例を沢山知っているので議論にとてもいい風を呼んでいたし、享楽の自己分析の独創性には、驚いた。
    日頃のツイートのように「ネット上でのフェミニストたちのサーチアンドデストロイ」とかウケる言葉でリズムをつけながら、最後まで惜しみなく放談してくれた。
    注釈で気になったものは、勉強しときたい。

    二村ヒトシさんは自身が映像作品を制作しているだけあって、映画の作品読解が本当に面白い。著書のモテ論や『オトコのカラダは〜』なども好きだったが、以前『なぜあなたは愛してくれない人を〜』を読んだ時、違和感がありひっかかっていた。ここで語っている自己分析でそのねじれについて少し腑に落ちたような気がする。再読したい。

    この3人はそれぞれに欲望を分析し尽くし(?)ているからこそ、お互いの聞き役にもなれるし、予定調和でなく話をより深く展開させることができるのだろう。こんな風に放談するのは最高に楽しいはずで、読んでいて気持ちよかった。

    序論から引用少しーー
    「現代における主体性の大きな問題は、否定性の排除、否定なき肯定であり、そしてそれは、グローバル資本主義の本格化とおそらく関係しています。そしてその状況は、のちに論じられることになりますが、葛藤が展開する場としての「無意識」がしだいに消滅していく、という事態としても捉えることができると思われるのです。」
    千葉さんのクリティカルで危機的な予感には日頃からはっとさせられるし、一定の信頼がある。この人がいると安心する。言葉に身体性を感じる。議論の中での立ち位置も絶妙で、本当に稀有な人。

    序論にはまた、「我々には齟齬もありますが、共通に問題にしているのは、「積極的に」生きるとはどういうことか、です」とあった。
    どなたかが「ジェントルな議論」と書いていたが、読み終わって本当にそう、と思った。引き受ける、という態度がある。ジェンダー、セクシュアリティは存在のシリアスな問題だけど、他にない議論を読み終えて、深い癒しのようなものを受け取った。

    ゲンロントークで続きを視聴するのもとても楽しみ

  • メモ

    ‪本当に多くの人に読んでもらいたい。‬
    ‪ポリコレ棒を振り回して、正義ヅラしている輩こそ、とんでもない差別主義者であることが多い。ここで対象としているのは、私が(在日として)ここ10年闘ってきたものととっても似ていて、(特に)柴田さんの攻撃的で挑発的な態度も、私は大変共感できる。おそらくは、‘期待して諦めて’をずっと繰り返しているんだと思う。
    「本当」の正義とか、「本物」のフェミニスト、「本来」の(男女)平等とは何かを考えさせてくれる。‬
    ‪ジェンダーに限らないが、その非対称性に違和感を持つことはとっても大事だ。私はこのバランス感覚におおいに共感する者である。‬
    ‪世間的には、非難轟々なのだろうが、私もいつだって、ここに身を置きたい。‬

  • 二村さんの性癖に対する自己解釈は凄いしエロいと思う。しかし本書の魅力はその先にある。それをもっと病的なほどの性癖や、もっと根源的な暴力の方へ話を展開する柴田さんと、精神分析的な解釈で超まとめる千葉さん。めっちゃ性を肯定していて、それでいて性の否定もガンガン考察される。考えたこともなかったところにつれていかれる。

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著者プロフィール

1978年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。
著書に『意味がない無意味』(河出書房新社、2018)、『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社、2018)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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