おいしいものには理由がある

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044002701

作品紹介・あらすじ

和食が世界遺産に制定され、日本料理はここ十年余りの世界的な流行になった。外国の料理人の多くも関心を持って、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を意識することすらなくなってきているのではないか。そこで、日本の食を支えている食材の生産者や職人を、作家であり料理人である著者が訪れて、私たち日本人が実は知らない日本の“食”を紹介する。自らの仕事に誇りと情熱を持ち、それに打ち込む姿は我々日本人が誇るべきものであり、それが我々の食文化を守っていることがよくわかる。作家ならではの筆致と、料理人ならではの視点をもつ著者ならではの文章には他を寄せ付けない力強さがある。ダイヤモンドオンラインの連載『ニッポン 食の遺餐探訪』に加筆・再構成。

感想・レビュー・書評

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  • 今って、ものすごく「食」に対する意識がはっきりわかれるような感じになってきている。
    「とにかく安いものがいい」という人
    「ちょっとお値段がよくてもいいものが欲しい」という人

    ちょっとお値段がいいけどそれには理由があって…
    という生産者さんとそのこだわりを紹介している本

    群馬県 下仁田納豆
    小豆島 ヤマロク醤油
    小豆島 せとうちビオファーム(オリーブオイル)
    茨木県 魚住農園
    西伊豆 カネサ鰹節商店(潮節)
    宮城県 奥松島水産(牡蠣)
    宮城県 アイザワ水産(海苔)
    宮崎県 黒岩牧場(鶏肉)
    岩手県 なかほら牧場
    浜松市 鳥居食品(ソース)
    埼玉県 ななくさの郷(マヨネーズ)
    などなど…

    実は以前、この本でも書かれていたせとうちビオファームの佐藤さんにお会いしたことがあってビオのオリーブオイルの苦労を聞いて感動したことが…オリーブアナアキゾウムシを1匹ずつ手で取っている話、農薬を使わない話、実を傷めないように一つずつ収穫する話…そんな苦労をして作ったオリーブオイルは本当に味わい深くておいしかった。

    そしてヤマロク醤油さんの醤油もあまりにもおいしくてうちではいつもここのお醤油を使っている。

    安いものは世の中にあふれている
    でも、こんなふうにこだわって作っている人がいる

    私たちは食に対して実は知らないことの方が多い
    私もそうだけどイメージで買っている人も多い

    この本を読むと食に対して真摯に向き合う人のすごさと人生があいまって「おいしいものには理由がある」ということに納得する。

    身近なことだからこそ大切にしたいと思うのは私だけじゃないと思う。

    お値段がいいのなら大切に使えばいい。

    そしてちゃんと味わうこと。

    さてさて、
    私も今夜は下仁田納豆さんの納豆を頂きましょう。

  • 著者は料理人て小説も書く作家さん。
    生産者のもとでしっかり取材していて読みやすく面白かった。こんなに丁寧作られるのはほんと食べてみたい。

  • 新しい料理の教科書から樋口さんにはまって。
    とりあえず、最初に出てくる卵、直接買いに行けないけど、平飼いの卵とは?初めて卵かけご飯をやってみた。初めてだから他の安い卵との違いはわからない。次に下仁田納豆、拍子木に包まれてるのが素敵。やっぱり豆の味を味わったことがなかったようで、いつも買う納豆は添付のタレの味だったか?次々に作り手の話や手法が苦労とおいしいものを作りたいの情熱。豆腐なんて充填剤って表示何かなー?って思ってたけど、入れないと発生する泡を出さないように混ぜるとか。食品の原材料は見るようにしてたけど、シンプルな方がもちろん作る過程で手間はかかりその分値段に乗せられることはわかる。この本読むとよくよく生産者の思いも知って応援する意味でも購入できたらいいと思った。日常の買い物でコスト面でむりだとしても、素材をいかしたごはん作りをする際などには。

  • 食への不安が取り沙汰され、「昔はよかった」「日本の食の現状は暗い」なんてイメージが取り巻く昨今、それでも日本の食は確かに向上しているのだ。
    卵、納豆、醤油、鰹節、昆布、牡蠣、海苔、肉、ソース、マヨネーズ……
    料理人でもある著者が、しっかりと食に向き合っている丁寧な生産者の姿を伝える一冊。
    こだわり続けている生産者の姿勢にはいっそ尊さを感じた。

  • おいしいもの、丁寧に作ったもの、自然のもの。我々はご飯を食べて生きる生き物だから、この本は書いてあるようなきちんとした美味しいものを買って食べることは浪費でなく必要なことなのでは?と思う。全てをオーガニックで国産のものにしようとは思わないけど、少し「美味しいもの」を探して買うようにしようかな。今の時代は保存料などを使わない食べ物を作るのは哲学が必要。あと「サラッとしてる」「あっさり食べられる」という表現が多くて、コクっていうのは食物本来の味なんじゃなく人工的に作られてる部分も多いのかな。

    「製造工程を見てみると、材料をきちんと選び、一つ一つの工程を丁寧に積み上げることが味の差に繋がっていることがわかる。神は細部に宿るという有名な言葉があるが、味をつくるのは細かな部分の蓄積だ。」

    「奪ってしまう命だから、せめてそのときまでは幸せに過ごしてほしい。」

  • 感想
    食材をおいしくする人がいる。当たり前だが忘れてしまう。食事の向こうには食材を準備して料理してくれる人がいる。顔を思い浮かべて食事をしたい。

  • 料理の技術は素材を超えない。

    魚住農園の卵 茨城
     有機栽培のキャベツ 青虫のついた外葉はニワトリのエサ
     平飼い 自家製腐葉土の土間
     卵のおいしさは餌で決まる 一般にはトウモロコシ原料の飼料
     国産の酒糠、小麦、鮭の魚粉、牡蠣殻、大豆と塩、醬油の搾りかす、乳清、野菜 
     雄鶏がいると落ち着く

    下仁田納豆 下仁田町
     鮮度ある国産大豆、最低限の在庫
     榛名山の経木(木の成分、抗菌、湿度、香り、無公害)
     コンピュータ制御の圧力釜、クリーンな環境
      本庄のもぎ豆腐店が師匠「只管豆腐」500円
      伝統をつくっていくためには常に革新

    有田屋の醤油 安中市
     醤油=仕込み2年
     国産丸大豆(色と味)、小麦(香り)、塩(防腐)
     大豆自給率7%
      アミノ酸醤(豆腐以外のタンパク質が主原料)
      脱脂加工大豆醤油(大豆油を絞った後に発酵)
      丸大豆醬油
      再仕込み醤油 円錐ではなく醤油で仕込む 3年

    ヤマロク醤油 小豆島
     蔵と木桶の菌が作る全窒素量で測れない旨味
      鶴醤:再仕込み醤油 4年以上
      菊醤:黒大豆濃口
     桶 100年以上の寿命 桶業者廃業で内製化 車一台分
     
    鳥居食品のウスターソース 浜松
     イギリス リーペリン ウスターソース アンチョビやタマリンドが入ったソース
     生の野菜 中脳ソースの4割
     種子島産粗糖、地元の酒粕から作った酢 2割 ホールスパイス、昆布と鰹節だし
     木桶で最低1か月熟成
      「オムライスをおいしくするソース」がヒット
      「昔ながらのウスターソース」

    松田のマヨネーズ 神川町
     化学調味料の入ってないマヨネーズ
     (マヨネーズとはJASで規定さている食品)
     ①手で割った卵に塩「海の精」
      からし菜マスタード、国産ニンニク
      ホワイトペッパー
      ウラジオストク周辺産 菩提樹ハチミツ 
     ②米澤製油の圧搾絞りなたね油(熱で劣化してない)
     ③純リンゴ酢
     少しずつ混ぜ合わせていく連続式

    カネサ鰹節商店の潮鰹 1882年創業 西伊豆
     なまり節:おろして湯で2時間煮たもの 
     荒節:燻して冷まし手を繰り返し乾燥(焙乾) 削り節の流通量の8割
     裸節:荒節の表面を削ったもの
     枯節:荒節に二回以上カビをつけたもの 上品な風味 江戸時代から
     本枯節:創業一六九九年「にんべん」では四回以上カビ付けを行ったもの

     潮鰹 一匹丸ごと塩漬け、風干し、藁飾り
     伊豆田子節 手火山式乾燥 地元の薪の直火の高温で焙乾 六、七回カビ付け 
     土佐からの海運が陸送になり廃れて取り残された

    奥井海生堂の昆布 福井
     北海道近辺にしかない 二年で一生
     羅臼:濃厚 利尻:出汁 そのまま:日高
     「蔵囲昆布」敦賀伝統 藁のむしろで覆い温湿度自動調整 10年以上熟成 
      ぬめり分解、香り高い甘み
      
    奥松島水産の牡蠣 宮城
     海産物 栄養の少ない環境でゆっくり育つと深い味
     内湾で育てて、潮通りのキツイところで鍛え、
     出荷前に内湾に戻し太らせる、人の技術による味
     春がいちばん身が張る
     震災で生産者が減り、質が向上

    アイザワ水産の海苔 宮城
     板海苔 江戸時代に紙の製法で作られた
     コンビニおにぎりで業務用は価格競争へ
      割れないように厚い

     種付けは顕微鏡作業 その年に最適な品種を選ぶ
     育苗中、一定期間海の上で乾燥(干出)汚れ落とし
     収穫は冬

    遠忠食品の佃煮 東京
     江戸前 1960年代から減ったのは貝類と藻類
     丸大豆醤油、麦芽水飴、調味料で2時間直火炊き 
     大量生産のものより海苔が多い

    黒岩牧場の鶏肉 宮崎
     アメリカから大量飼育が導入されやすくなった 世界一の輸入量 中食外食用
     味=品種、餌、環境、飼育期間
     放し飼い 襲われるのは病気で死ぬよりずっと少ない 草を食べて体調整える
     飼育日数120日以上 長いほど旨味はますが硬さとトレードオフ 
     地鶏の規格80日以上 ブロイラー50日 餌のコスト

    なかはら牧場の奇跡の牛乳 岩手
     山地酪農 乳脂肪分減る 青草の夏は低く、枯草の冬は多く 低温殺菌 
     牛舎で輸入に頼る飼料 3.5%の乳脂肪分を基準 おいささとは別の基準
     1188円/720ml 牛乳は贅沢品
     低生産性のまま放置の産地を高度の生産地に 搾乳したら飼料を食べ山に帰る

  • 筆者が各地方で昔からの生産方法を続けている各業者を取材されて、そのおいしさ、支持されている訳に迫っていく内容であった。正直知らないことしか書いていないぐらい、新鮮な内容でだった。印象に残ったのは放し飼いにしている牛・鶏の話。実際本に出てくる業者のものは食べたことはないが、普段何気なく食べているものも当たり前やけど他の生命をいただいて自分は生きているだなって改めて思った。
    あとは普段はスーパーで売っているものしか食べてない生活だけど、本書に出てきているような食材も機会があったら食べてみたいと思う。特に東北の海苔は興味がわいた。

  • 紀伊國屋になかった

  • 食材を吟味して買おうという気になった。
    ついつい価格で選択してしまいがちだが、感謝して購入し、いただきたい。
    生産者に作り続けてもらうには、消費者も一緒に頑張ることが必要。

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著者プロフィール

作家・料理家。1981年生まれ。服部栄養専門学校卒業後、料理教室勤務や出張料理人などを経て、2005年『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、デビュー。同作は芥川賞候補になる。作家として作品を発表する一方、全国の食品メーカー、生産現場の取材記事を執筆。料理家としても活動し、地域食材を活用したメニュー開発なども手掛ける。『ぼくのおいしいは3でつくる―新しい献立の手引き』(辰巳出版)、『もっとおいしく作れたら』(マガジンハウス)、『低温調理の「肉の教科書」―どんな肉も最高においしくなる。』(グラフィック社)など著書多数。

「2023年 『樋口直哉のあたらしいソース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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