無限を読みとく数学入門 世界と「私」をつなぐ数の物語 (角川ソフィア文庫 K 107-2)
- 角川学芸出版 (2009年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044091026
作品紹介・あらすじ
アキレスと亀のパラドクス、実数の連続性の謎、「存在」しない数、無限の持つ無限の種類、ケインズ投資理論と無限時間、『ドグラ・マグラ』と脳に棲みつく無限、そして悲劇の天才数学者カントールの無限集合論…。無限はこの世界の至るところにひそみ、「数」を身にまとってその姿を現わすチャンスを狙っている!数学、哲学、文学、経済学を横断し、遙かギリシャから現代へと駆け抜ける、無限迷宮をめぐるスリリングな旅。
感想・レビュー・書評
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[初版(第1刷)]平成21年8月25日
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世の中には二種類の人間がいる。数学が分かる人間と分からない人間だ。
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集合論は苦手だ。無限に魅入られた数学者の話は興味深いが、無限そのものを理解するのは至難の業。
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非常に面白かった。
一見無味乾燥に思える数学の概念だが、そこには非常に豊かな世界があるということ気づかさせてくれる。
無限の問題を考えるきっかけとしてゼノンのパラドックスからはじまり(アキレスが亀に追いつくためには無限和が有限値に収束する必要がある:完備な世界)、アキレスは亀に追いつけない世界があってよいという。
そして無限という題材を考えるにあたり外せないのがカントールが提出した集合の考え方からのアプローチである。ここの概念も非常にわかりやすく解説してくれる。はじめは無限の大きさ(濃度)はどれも同じであろうとカントール自身も考えていたのに研究を進めていくとどうやら無限の濃度にも差異がありそうだとなり、その結果に疑心暗鬼になりながら概念の開拓が進んでいったということも興味深い。
そして、その話の流れのまま、ゲーデルの完全性定理/不完全性定理まで突っ走っていく。
最後の小説も数学の概念にイメージを与えるという意味で納得。それぞれの章の世界はN,Z,Q,この世界,V(自然数、整数、有理数、、)というところがまた
高校生ぐらいの若い頃にこの本に出会っていれば数学への取り組み方も変わっていたかも。 -
筆者の言葉で語っているため、ゼノンのパラドックスのようなよくあるテーマであっても、それぞれ何らかの発見は得られる。
ただ、第3章のカントール出現以降はさすがに厳しい。
4章の小説は申し訳ないが端にも棒にも引っかからない。 -
無限をテーマに進んでいく本書。
前半は数学のわかりやすい解説。後半は無限をキーとした数学の小説。
後半の小説は少しわかりにくいところもあったが、楽しめた。 -
「無限」と「連続」は、古来から探求されてきたテーマだ。
バートランド・ラッセルは次のように言ったという。
「ゼノンは3つの問題に関心を持っていた。無限小、無限大、そして連続、この3つである。ゼノンの時代から今日にいたるまで、それぞれ時代の最高の頭脳がかわるがわるこの問題と取り組んだが、おおよそのところ何一つ成果を上げることができなかった。しかし、ワイエルシュトラス、デデキント、およびカントールがこれらの問題を完全に解いたのである」
経済学者としての知識も詰め込みながら、そして自作の小説も織り込みながら、「無限」というテーマについて縦横無尽に書かれているのが本書。
著者の博識にも驚かされる。
読み応えのある一冊。 -
無限という概念を軸に数学史から文学・哲学・経済学の関わりまで縦横に論考してめくるめく世界観を提示している
末尾の数学小説も侮れない
素晴らしい頭脳だ
脱帽