直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046024909

作品紹介・あらすじ

「まさに経営学で起こっているのは『フッサールの危機の再現』であるように思えてなりません。だからこそ経営学自体をいったん現象学がいう『カッコに入れる』必要がある。(野中氏)

なぜいま経営学と現象学なのか? 先の読めないVUCA時代のなかでリベラルアーツの大切さが語られるが、そこで求められているのは、ファッションではない本物の教養である。

論理・分析思考の限界を超える「本質直観」をどう身につければよいのか? そのためにビジネスパーソンが知るべきは何か?

現象学的還元、暗黙知と受動的綜合の関係、SECIモデル、AIと経営から、物語り戦略まで……圧倒的な知識量と揺るぎない信念に基づいて展開される、経営に携わるすべての人に向けた書。 


【推薦】
「経営学の神様」と一流哲学者による究極の一冊! 
AI、デザイン思考、イノベーション……すべての根底は本書にある――入山章栄(早稲田大学ビジネススクール准教授)

無意識の力を理論化し、実践に導く唯一無二の書――茂木健一郎(脳科学者)


【目次】
対談 経営学を「カッコ」に入れよ   

第1部 なぜ現象学はすごいのか 山口一郎
第1章 現象学は欲張りな学問  
第2章 本質直観という方法  
第3章 先入観を「カッコ」に入れる  
第4章 感覚と知覚は何が違うか  
第5章 「現在」の成り立ちを問う  
第6章 現象学・脳科学・仏教  
第7章 二重の相互主観性 

対談 戦略とは「生き方」である 

第2部 現象学的経営学の本質 野中郁次郎
第8章 SECIモデル
第9章 相互主観をどう育むか
第10章 集合本質直観の方法論 
第11章 「物語」と「物語り」
第12章 本質直観の経営学
  
対談 日本人の集合本質直観の力

感想・レビュー・書評

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  • まーまーなかなかな贅沢?な本

  • とてつもなく重厚でタフな読み物であったが、最後の最後の「対談」部分だけでも非常に今の時代に響く概念だなぁと思いました。 あとは自分が大事にしている価値観の話もあったり、自分がお世話になっている「マエカワ」さんの話もあったりした。 

    好みもあるとは思うが、第一章は哲学の関連の話で、慣れていないと読むのすら大変なので、速読することがおススメ(一つ一つ深く読み解いていくと、まったく進めないため)

    後半は知識創造の野中先生の部分であって、暗黙知から形式知化の話、SECIモデルなどのベースがあってから読めば、すごく読みやすい。 

    さらに最後の対談のところは日本的な「集合的なひらめき」の話が出てきて、あぁ、読んでよかった、と思った。
    (最後の対話のところで「集合本質直観」の悪い部分として『失敗の本質』も出てきました。)


    最後の対話から抜粋
    ============
    そもそもみなの思いが言葉として表明される対話の文化が形成されているかどうか、ということが、当たり前に思えても外すことができない、重要なポイントではないでしょうか。

    ワイガヤ(ホンダ)もコンパ(京セラ)も、すべてを語りつくしたあとの無心のなかで、ハッと出てくる直観ですが、それはありとあらゆる知的コンバットをへたうえでのことですね。 

    企業というのは時間的な制約があるので、ある意味では積極的にハードルの高い仕事を意図的にさせながら、無心ぎりぎりのところまで社員を向かわせる。それが最初はやらされる感覚であっても、プロ同士がまっとうに向き合って議論を続けると、形式知を経た無心にまでたどり着くことができる。ただのブレインストーミングでは、そこまでなかなか到達できません。
    ============

    あと、この本は、いくつかの本の前提知識があってから読んだほうが読みやすいです。 僕の例は下記

    ■1.14歳からの哲学入門
    https://booklog.jp/users/244ohashi/archives/1/4576151142
    ■2.知的創造企業
    https://www.amazon.co.jp/%E7%9F%A5%E8%AD%98%E5%89%B5%E9%80%A0%E4%BC%81%E6%A5%AD-%E9%87%8E%E4%B8%AD-%E9%83%81%E6%AC%A1%E9%83%8E/dp/4492520813
    ■3.直観と論理をつなぐ思考法
    https://booklog.jp/users/244ohashi/archives/1/4478102856
    ■4.失敗の本質
    https://booklog.jp/users/244ohashi/archives/1/4478021554

  • フロネシスの6つの能力。これがこの本の大きな発見です。

  • 現象学と経営を相互作用。
    我が意を得たり内容だった。
    この手の潮流と野中先生にフッサールの現象学は自身の考えと近く
    実践値に落とし込む戦略を見事に表現されていて夢中になって読んだ。
    身体的感覚を伴う対話が相互主観となり、新たな形式知や個人の生き方を形成する流れが見事。
    ナラティブの話も成るという考えも場も現代心理学の流れも思わせて
    知的創造の本流を解釈することができた。
    書籍としての作利も見事で対談が挟まることで二項を昇華する様を体験できる。
    集合本質直感のプロセスへ。
    何度も読み直す一冊で知の総合カタログ。

  • いやいや意味不明だろ、現場で実践できるやついねー

  • 本質(それがそうあるためには欠かすことのできない性質であり、時代や国の違いを超えて妥当する普遍的な性質)直観(それが絶対に間違いなく意識に明白に与えられていること)、一人称―二人称関係による事例収集、意識の0.5秒遅延説、ミラーニューロン(相手の行動の意図、感情の動きを正確に写し取る鏡のような脳神経細胞群)と共感能力、故意・過失といった自由と責任に関わる「意味と価値」を含む物事・人間の行動の本質に到達する、自由変更(共感の生じる条件を考える、思考実験(色と空間、音と持続、運動感覚と視覚像の連合(感覚素材と潜在的志向性が相互に呼び覚まし合う相互覚起)))
    現象学的還元(ありのままの経験にたち戻る、先入観、知的判断の停止と知的能力をカッコに入れ使用しない)、時間・空間の意味と価値、受動的/能動的志向性(何かに向けられる抽象的性質)
    受動的/能動的綜合(志向性による意味付け、価値付けをそのつど新たに作り上げる)、随意/不随意運動、感覚が知覚に先行、感覚間の対化(対になる連合(感覚系と知覚系の連結))
    過去把持(過ぎ去るものが維持される志向性)の交差志向性と延長志向性(客観化(外化))により、時間内容が時間形式に先立つ、潜在的/顕在的志向性、未来予持(直前の未来を先取りし予測)
    様々な概念を平易、具体的で丁寧に分かりやすく伝えようとしています。

  • 三宅陽一郎氏の『人工知能のための哲学塾』を読み現象学に興味を持ち、国内における現象学の第一人者である山口一郎氏と、日本を代表する経営学者である野中郁次郎氏との共著である本書を購入。

    本書は第1部で山口氏による現象学、第2部で野中氏の代表理論であるSECIモデルを中心とした経営学が解説される2部構成である。
    一見関連性のない哲学(特に現象学)と経営学を、1冊の本でどのように結びつけて述べられるのか期待と不安を抱きながら読み始めたが、冒頭、中盤(第1部と第2部の間)および終盤に山口氏と野中氏との対談が挿入されていることで、哲学を専門に学んだことのない自分のような読者にとっても理解が助けられた。

    現象学は「現象学的還元」「判断停止(エポケー)」「志向性」「明証性」「生活世界」「ノエシス/ノエマ」「本質直観」「相互主観性」等々、フッサールによって定義づけられた理解し難い用語が多いが、本書において山口氏は、身近な事例を平易な言葉を用いて解説し、現象学の難解な専門用語を可能な限り厳選した上で論考を展開しているため読み手を飽きさせない。
    また野中氏のパートでは、第1部における現象学の内容を受ける形でSECIモデルと現象学の関係性に言及しつつ、実際の企業の事例を紹介しながらSECIモデルを主観と客観の循環として説明しているところが興味深い。

    実存主義の流れから生み出された現象学と、実学と言われる経営学が、本書のサブタイトルに使われている"共感の哲学"という言葉で結び付けられるということは、経営学を専門として研究している身としては非常に示唆に富むものであった。

    現象学特有の「直観(直感ではない)」や近年の経営学で取り上げられる「動態経営論」といった、本書のタイトルで用いられている言葉をより深く理解するにはそれぞれの分野の専門書を読む必要があるが、経営学に新たな視座を設けてくれる本書は、巷間溢れているビジネス系書籍にはない刺激を読者にもたらすであろう。

  • 現象学の解説がとても楽しめた。価値や意味は人にしかわからない、それを人はどう掴んでいるのか。確かに共感からスタートするように思う。仕事の現場もそうだよな。一緒に過ごして、議論して共感することで新しいものが生まれる感覚はある。

  •  SECIモデルはを初めて知った。
     共同化(Socialization):暗黙知を獲得
     表出化(Externalization):暗黙知を集団の形式知に変換
     連結化(Combination):集団レベルの形式知を体系化
     内面化(Internalization);組織レベルの形式知を実践し、新たな暗黙知を生み出す。
     「ワイガヤ」「コンパ」における知識創造は、「我ー汝関係」が暗黙知の直観として与えられるという。これは大学生等の部活動などにおける高揚した一体感とも共通すると思う。
     アリストテレスのフロネシストは、①「善い」目的を作る能力、②ありのままの現実を直観する能力、③場をタイムリーにつくる能力、④直観の本質を語る能力、⑤物語を実現する政治力、⑥実践知(実践的賢慮)を組織化する能力だという。これはまさにリーダーに要求される資質だ。
     現象論の主観的共感を経営論につなげる回り道感はぬぐえないかな…。

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著者プロフィール

野中郁次郎
一九三五(昭和一〇)年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』、『失敗の本質』(共著)『知識創造の経営』『アメリカ海兵隊』『戦略論の名著』(編著)などがある。

「2023年 『知的機動力の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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