海戦からみた日清戦争 (角川oneテーマ21 B 146)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047102422
作品紹介・あらすじ
前例墨守こそ重職の務めとされた江戸の封建主義を、幕末の海軍建設者たちはいかに打ち砕いたのか?軍備の劣った日清戦争、その勝因とは?科学・技術・組織の刷新を不可欠とする海軍建設の歴史から、日本近代の幕開けを鮮やかに描き出す。
感想・レビュー・書評
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日清戦争での海軍の重要性を初めて知った。
海軍のハードのみならずソフトの充実を重要視したこと。艦船の技術は世界的にも確立されて行く時期で、様々な失敗があったこと。清軍との威海衛海戦は、各国海軍に注目されていたこと。
一方、海軍の組織の問題が、1945年まで解決されずに終ったことも知った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
艦船などの装備品の充足度に劣った日本が清国に勝てたのは,ほとんどが輸入品であった資材を実際に使用する兵士の質が,事前の教育で培われていたことが大きな要因だと結論づけている.妥当な見解だと思った.現代に当てはめて見ると,自衛隊の質はどうなのか,若干気になる.でも,軍事費に多額の血税を費やす時代は終わったと思うが,我が国の金の使い方には大いに疑問がある.
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国際社会の大洋に挑む明治海軍はいかに封建主義を乗り越えたのか?国難を覆した、「坂の上の雲」男達の組織論。
後世の感覚からみれば、勝ったのは当たり前の様に感じられるが、本書を読むと、苦難の上に勝てた事がわかる。
清国も開明的な指導者がいて優勢な海軍力を所持していた。しかしながら、日本が勝ち、清国が負けたのは何故か。著者は、ハードだけでなく、人材育成に力を注いだ事をあげている。
日清戦争での教訓を生かした事が、日露戦争の勝利につながったが、日露戦争の教訓を生かす事が出来なかった。 -
一般的にはピックアップされにくい日清戦争の海戦をテーマにしております。
そのなかでも本書は「日清戦争は後の戦争にどのような影響を与えたのか」という事を主軸に幕末ー日清戦争終戦までの海軍の歴史を考察されております。
東郷平八郎等、後々の大戦で登場する人物の若い時代の事もかかれており、海軍ファンなら読んでおいて損はないと思います。 -
もう何度目になるのか。ことあるごとに近代史を読み返す。
後世の人は必ずこう呼ぶであろう「日本の50年戦争の始まりの戦争」
それが、日清戦争である。自分より強大な敵と戦ったためか、あるいは日本の完勝に終わったためかこの戦争に関しては現在の判断からは「陰鬱さ」が欠如している。戦後教育の賜物で「No more戦争!」のような戦争忌避が全てある思想を持っている私でさえ、艦隊決戦でほぼ雌雄を決した黄海海戦はどこか牧歌的な雰囲気をかもし出していて古きよき時代であるかのように思える。最高速度14.5ノットでの戦い、隊列が横陣形と縦陣形の戦い、敵艦隊発見後食事をしてから戦闘開始という悠長さ。いかにも明治の若々しい力を感じる戦争であっただろう。
しかし、この本でもっとも重要なことは現在でもそのまま日中関係として成り立ってしまうということを描き出していることである。戦後、圧倒的な経済成長で世界の経済大国としての地位を築き上げた日本対20世紀末改革開放によって爆発的な勢いで軍備と経済体制を整え始めた中国のことだ。当時日本の最新艦の1.5倍以上の排水量を誇る清国の「定遠」「鎮遠」に対し、日本海軍は速射と軍の練度で戦いを挑んだ。だか、日本の三景艦「松島」「厳島」「橋立」に搭載されている三十二インチ砲はあまりに重量が大きすぎ、砲を横に旋回するだけで、船体が傾くほどだったという。一時間に一発しか放たれていない。それに対して、「定遠」「鎮遠」も負けていない。「定遠」が初めて主砲を発射したとたん振動で艦橋が崩れ落ち司令官の丁汝昌が負傷したという。
この本ではじめて知ったことだが、黄海海戦後の威海衛で日本海軍は世界で始めての水雷艇の集中運営で港内の敵艦を攻撃している。これは、まるで真珠湾への機動部隊の航空攻撃を連想させる。以前日本人は独創性がないとよく言われていた気がするが、すばらしい独創性があると思うのは私だけではあるまい。勝った戦争からは日本人のよさがにじみ出て、負けた戦争から日本人の悪さがにじみ出る。それでいい。そうして、学んでいけばいい。
いつだって日本人は必至で戦ってるんだと思える一冊である。 -
武士の世界から海軍を創設し日清戦争までの海軍史
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日清戦争の評価として、日本と清国の開戦までの日清両国の海軍整備の状況を丁寧に追っている(第2章)。好著です。問題意識としての「日清戦争はなぜ開戦に至ったか」は単純な答えはないのだと思えた。