- Amazon.co.jp ・マンガ (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047292758
感想・レビュー・書評
-
高橋那津子さんの作品『紅い実はじけた 1(2013)』を読了。 第二話の”カウンターパンチ”と第四話の”POLTER POSTER”と第六話の”金木犀の記憶”がGood!!
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやぁ いいですねぇ。
言葉では説明できない感情。こういうものをすこーーんと心に打ち込むのに、漫画ってのはなんて向いてるんだろう。
プロローグの、ほんとに短いあの一瞬と、彼女の表情にどれだけの情報が詰まっていることか。
個人的に『初恋』がとても好きです。
初恋って、まさにこういうものだよ。その時の精一杯が詰まってる。実らないけど、届かないけど、その気持ちをどうやって昇華させるか。あまりに実直な彼女の姿に自然と涙が出る。
他人から見ればほんとになんてことない物語。
実らない、密やかな恋をした彼女は、でも新たな自分が未来に待っている。
クズなボクサーの話は高橋留美子の『1ポンドの福音』を思い出さずにはいられなかった。
高橋留美子って、甲斐性なしを描くのほんと上手いんだなって読みながら思い返していた。
クズを面白く描くのってすごく匙加減が難しい。
ガチのどクズだと読んでてフラストレーションが溜まるだけだし、魅力的に描き過ぎてもあんまり美談にまとめてもえーって思っちゃう。しょーもな、って笑っちゃう程度にだらしなくて、ちょっとここぞって時だけ頑張って、でもやっぱり簡単には変われなくてしょうがねぇなって思えるぐらいには愛嬌がないといかん。
クズも才能だし、クズを描くのも才能。
あと空気人形の話は良いですね。
空気入れたらむちむちと肉感が与えられていく感じ、味わってみたいと思わせられた。
-
凡百の人々の中で無数に咲き結ぶ、恋の紅い実。真っ赤に熟れる実もあれば、青いまま落ちる実もある。多彩な恋のオムニバス短編集です。
平成なんだろうけど、漂う昭和レトロ感。キラキラではない日常の中のほのかな"ときめき"が良い塩梅です。絵もストーリーも安定した上手さがあります。 -
「紅い実はじけた」瞬間の大ゴマはやっぱり魅力的。
日常にこそドラマはあるんだな、やっぱり素人の名演技(以前連城三紀彦が「恋文」の後書きがなにかで言ってるのを読んだ)ってあるんだろうなと思わせてくれるありそうなストーリー。 -
書道教室に通う高校三年生の亜子ちゃんと、小学三年生の小太郎くんのお話、ねこたこたがお気に入り。
美しく若々しい恋の話がいっぱい。 -
プリンのプール入ってみたいわ。
読みきり形式だが各キャラクターが自然かつ個性的。 -
想いが一瞬に込められている短編集、一気読みするには忙しすぎるかな。少しずつ読めばよかった。
-
短編集。全編通して描きっぷりはBEAM COMIX系で、とくに入江亜季の『群青学舎』を彷彿とさせる感じ。題材の取り方もかなり近しい。ただ『少年ノート』以降の鎌谷悠希のような、よりしっとりとした感じの描き方をしているものも。
サブカル~中間芸術の領域にあるマンガの世界でも「似ている」「そっくり」っていうのが評価としてどうなのかは微妙だけど、それはともかく、ふつうに面白い。いろんな描き方や題材を試している最中といった感じで、今後の作品にも期待。 -
くわぁぁ、何じゃ、こりゃ
甘酸っぺぇぇぇ
食べ頃真っ只中の柘榴みてぇな味が口ん中に溢れる、タイトルに偽りナッシングな内容が詰まっていた
表紙そのものが、1p目ってのが読み手の心を単純な感動で震わせてくれる
『蓮先生の書斎』
強がって素直になれない女の子が、ふとした拍子で恋に落ちてしまう瞬間は、何度見てもキュンと来るなぁ
普段、野暮ったい男ほど、仕事スイッチがONになって真剣さを帯びた顔になると、数倍はカッコよく見えちゃうんです
私も仕事中、女の子に「一番、カッコいい」って言って貰えるような顔になれるよう頑張らにゃ
『カウンターパンチ』
そりゃ、勝った方が見栄えがイイんでしょうが、世の中にゃ、理屈じゃ説明できなくても、勝った人間より格好良くなれる負け方があるんです
男の人生にゃ何度か、惚れてくれている女を振り向かせる為に、カッコ悪いくらいに本気を出さなきゃならない時があるんです。多分、惚れた女を抱きしめられる資格を掴んだ男は、その少ないチャンスを逃さなかったんだろう
『ねこたこた』
この短編集の中で、最も私が好きな一編
おしゃまな女の子が喧しい少年をキスで黙らせるシーンがあるトコ、逆に惚れた(のか?)女の悔し涙を止める為に少年がキスした揚句、赤面しちゃうシーンがあるトコ、父親が息子の心の成長を無言で喜ぶシーンがあるトコ、理由をあげれば多いが、やはり、好きな女に釣り合う男になりたいと懸命にする背伸びをする少年の愛らしさを描ききっているトコ
『POLTER POSTER』
ちょ、今、このポスター、どこにいんの?!
男の愛すべきバカさ加減を切り取った一編
十人が十人、こんな色っぺぇポスターがあったら・・・ねぇ
一体、彼女は何者なんだろう、そんな無粋な考えすら浮かばないわ。むしろ、ここで空気を入れてやらなきゃ、男が廃るでしょうよ・・・・・・ねぇ?
『愛の逃避行』
人間のイイ滑稽さと、悪い滑稽さ、両方のバランスを考えて描かれている感じがする
つまらない人間の定義は、自分をツマラナイと感じた事がない私には思いつかんが、少なくとも、つまらないって自覚がある人間には「つまらない自分から変わりたい」って願望がある訳だから、自覚がなくて、つまらない行為を繰り返すだけの、本当につまらない人間と比べればマシなんだろう
プリンのプールかw ある意味、欲望だらけの人間がパッと思いつく、実現させたいスケールのデカい願望ですよね・・・私なら何を願うかなぁ・・・・・・俗に言う、漫画肉を食ってみたいやも
『金木犀の記憶』
タイトルに偽りなし
男には、初恋と呼ぶまでには至らないけど、キンモクセイのような強い香りに鼻をくすぐられた際に、ふと思い出すような淡く甘い感情の芽生えがある、それを繊細に切り取ってくれている
この女生徒には、金木犀の芳香に隠れてしまいたいほど、隠したい恋心があったのかな、そんな風にも思ってしまう一編
『初恋』
これはあくまで、私が勝手に思う事だが、この『初恋』、高橋先生の経験を糧にして産まれた一編ではないのだろうか?
他の作品にも当然、熱意が籠もっていたが、この作品は特に強い、いや、濃かった
口の中に大火傷を負うかと思うほど、前途洋洋な学生時代だけの嬉しさも、やるせなさも、悲しさも、前向きさも詰まっていた
だけど、この咽そうになる作品にこそ、高橋先生の真髄があるような気がする
最も好きなのは『ねこたこた』、しかし、高橋先生の恋愛叙情を描く才を最も、じっくり堪能できるのは、この『初恋』だ、私はそう思う
また一人、恋愛漫画の名手が、過酷な戦場に飛び込んできたか・・・・・・でも、この先生なら、間違いなく生き残るな、そう思わせるだけの「何か」が、この『紅い実はじけた』の中で全力で弾ける瞬間を待っている