消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし 角川SSC新書 (角川SSC新書 111)
- 角川SSコミュニケーションズ (2010年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047315341
感想・レビュー・書評
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デンマーク国籍を取得して40年の著者が、高福祉高負担という日本とは違う選択をしたデンマークを、国民目線で論じた書。
第1章には、デンマークの「高福祉」の具体的な内容が、第2章にはそのサービスを実現可能にしている「高負担」の部分について、第3章にはそんな世界一幸せとされるデンマークが抱える「問題点」について書かれている。そして最後の第4章には高福祉高負担を実現できた歴史的・社会的背景が取り上げられている。
育児、保育サービスを充実させて女性の社会進出を実現させ、納税者を増やすといい仕組みには納得した。(育児保育業界の業務自体が主に女性の仕事であることも忘れてはならない。)
事実、高福祉高負担の国家が多い北欧の国々(ノルウェー・フィンランド・デンマーク)の首相が皆女性ということからも、女性の社会進出が実現していることが伺える。
特に最近では、フィンランドで若干34歳のサンナ・マリーンさん(女性)が現職最年少で首相に選出されたそうだ。
新内閣は女性12人、男性7人の構成となっており、もはやこれからは女性が男性に変わり世界を牽引していくことになるのではないかとも思わせられる。
超高齢社会となり、税収確保が死活問題となっている日本も、女性の社会進出においてはデンマークを見習うべきだと思う。
だがしかし、デンマークは九州ほどの面積、兵庫県程度の少人口がゆえに、今日の高福祉高負担国家が成り立っているといっても過言ではない。
そんなデンマークの政策と我ら日本の政策を比べて日本政府を批判するのはナンセンスだろう。(かくいう私も高校入試の小論文で高福祉高負担の大きな政府を支持するような内容を書いてしまったが。)
日本政府や私たち日本国民は、日本という国が持っている特徴やアドバンテージをよく理解し、それらを最大限生かしていく政策を考える必要があるだろう。
そうすればきっと日本も、デンマーク以上に幸せな国となるのはもはや遠い未来の話ではないだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者のデンマーク生活経験に基づく医療・教育・年金などの社会制度に関する解説.
・地方市議会議員は仕事を持つボランティアが務め手当は年間交通費などで100万円程度支給されるだけ(町長や市長は専門職のため専従).
・1983年に1.38だった出生率は2009年に1.9に改善.それには様々な子育て支援策が効果を発揮している.
・高校にも大学にもランク付けがない.将来どのような仕事に就きたいかで選択.また学費は無料で,転入なども自由なので途中で進路変更も可能.
人口が大きく違う(550万人)ので,同じ政策は取れないが,学ぶべき点は多い. -
給料の7割で国民の幸せを保障しているのが魅力。
それでも自殺率が多いのが人間の不思議さ。
老後が平等なのも良いが仕事に直結した教育というのは日本よりだいぶ進んでいる。 -
2010年刊。
高福祉・高負担の国デンマークというが、定住者から見ると実際どうなの?という視点で書かれている。
かなりぶったまげた。
本当に御伽話の国みたいだ。
「自立」「共生」の精神のもと、徹底的に格差をなくそうという試み。職業訓練を軸にした教育体制がすごく魅力的。
食糧エネルギーが豊富、北欧の一国という立ち位置にあって、国の規模は小さく小回りがきく、さらには哲学必修という特異なお国柄ゆえに成り立つところは多いと思うけど、無駄を省いた重点的税投入策や超実践的な教育制度は見習えるんじゃないか…見習え!と切実に思った。 -
幸福度調査で一位のデンマーク。日本は90位。消費税25%のデンマークに見習うことは?当然、増税の視点ではなく社会の仕組みの改革が必要である。18歳からは国が保護者になる、なんて日本でも試してみたい。(親の意識改革も必要かも)
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デンマークの国民負担率は約71%(日本は40%弱)。医療も教育も全て国費負担で無料で、世界一幸福感が高い国だと。しかし、理想の国として全面礼賛するのではなく、学歴により就ける職業がはっきりと異なり、競争が激しくて所得格差が大きく、離婚や自殺も多いなど問題点もしっかり指摘されています。
デンマークは人口わずか500万ちょっとの小国で、すべての国民が「共生」するという価値観がしっかり歴史的に根付いている、と。
日本ではそのままは到底、真似できませんが200頁もない小著で手軽に読めますのでお勧めです。 -
日本での消費税増税の件で関心を持ち軽い気持ちで購入しましたが、その気持ちとは裏腹に多くの知識と考えを与えられた良書となりました。
世界の国の幸福度調査アンケートや国家統治調査データをもとに最も幸福な国は、多くの先進国ではなくデンマークであるとの裏付けと、デンマーク国籍を取得し、数十年デンマークで暮らしている著者自身の実経験から述べられる内容です。
読み進めると、中盤までは、高福祉・高負担であることが、ひどく共産主義的であると感じていたが、国家(デンマーク王国)全体では、能力主義という矛盾する点がうまく
共存しているシステムだと感じた。
具体的には組織ではなく、職種(資格)で給料がすべて決められており、あらゆる学校は無料で誰にでもチャンスが与えられている。
給料を上げるには資格を取り職種を変えるしかない。
ただし資格の取得も簡単ではなく、試験等の難解さは日本のように単純に暗記や決められた解を答えるものではない。
例えば「貸借対照表を見てこの企業を改善する方法を述べよ」という問題で回答時間は4時間。
まるで企業経営のプロでも育成しようというのか、という問題だ。
経営コンサルでやっているケーススタディそのものである。
少し話は変わるが、この書籍を読むことで自分の中で明確となった事がひとつある。
日本では「高齢社」という60歳以上しか登録できない
派遣会社があり、定年を過ぎても働きたい人たちを再雇用している会社を知った。当然とても素晴らしい優良企業だと紹介されていた。
経営者自身ハンディキャップを抱えるも高い志をもっており、私自身は「何か別の違和感」を覚えながらも、その紹介されている企業が素晴らしいと思ってしまった。
しかし、その違和感の正体がこの書籍を読むことで明瞭となった。
日本のように定年後にも働きたいというのは、裏を返せば、仕事以外やることがないという一面もある。
ワークライフバランスを考えず、若い時に仕事ばかりで、
かつ指示待ちが大半だったことや、仕事や仕事以外で自ら新たな分野の開拓をしてこなかったツケが定年後にもまわってきているのではないか。
アーリーリタイヤや定年後の人生を楽しむという概念が薄い日本。
対して「幸福な定年のために」「家族との大切な時間のために」それを支えるデンマークの国のシステム。
国と国民のコンセンサスが得られているからこそ高福祉・高負担でも世界一幸福な国、国民となりえているのではないか。
日本に置き換えたとき、税金の割合にしろ、国の仕組みにしろ単純に良い国のマネをすればうまくいくというわけでもない。
国の問題はそれまで築き上げられてきた歴史を無視して解決できるものではないし問題の根は非常に深いだろう。
本書でも語られているが、デンマークの人口は兵庫県程(面積は九州程)この条件であるからこそ、この高福祉・高負担が成立したという。
(条件の1つに過ぎないとは思うが)
私個人では、この本を読んで、日本に置き換えての明確な解や、意見が出るわけではないが、世界の国々のあらゆるケースを知り学ぶこと自体に意義があると感じた。
すべての情報を漏れなく手に入れることなどできないが、
真に自分自身の意見、論理的思考が出来るようになるためには多くの知識を手に入れる必要があると感じた。
本の内容と少しズレてしまったが、デンマークという国を知る以外でも多くの知見を与えてくれる良書でした。 -
消費税の高さと福祉政策が
セットで注目される北欧諸国だが、
より具体的にデンマークの実状や他の制度、
数字の背景にある国民性や特徴などを
詳しくまとめてある本。
第1章 デンマークの高福祉社会
第2章 デンマークの高負担の実状
第3章 デンマークの問題点と共生社会
第4章 デンマーク史概略 -
資本主義と共産主義が混じり合ったような仕組みのようだ。保持する資格により職業が決まり、学校卒業時点で、学校で得た資格により、職種ごとの単一労組に加入する。そのため、就職できなくても失業給付が開始される。国民総背番号がかなり機能しており、アルバイトをするにも背番号をアルバイト先に登録しなければならない。しなければ、事業者の給与支払による損金算入が認められない。貧富の差は極端に小さく、大金を稼いでもそのほとんどが税金として徴収される。逆に、国民全体がそれを許容している。政治家は、ほとんどがボランティアで、副業として政治家をしている。
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デンマークに43年暮らしている著者がデンマークの高負担・高福祉の実情とデンマークが抱える問題点について記された本。
日本と全く違う社会システムの中で特に驚いたのが、下記のような医療と教育の面である。
・医療に関しては、たとえ億単位の医療費がかかっても無料。ただし命に関わらない風邪や歯科治療などは自己負担。
・教育に関しては、義務教育・高校・大学の教育費が無料。18歳以上の学生には全員に生活費として月額約7万7,000円が支給される。
・入学試験がない。
親の経済国が子供の学歴に影響すると言われる日本から見ると、貧富の差が関係なく誰にでも教育を受ける門戸が開かれていることは素晴らしいと感じた。
また入学試験がないことは、学校での授業が受験に重点を置いた教育にならないことが良いと思う。
デンマークでは全ての仕事において資格が必要となり、高校以上では学校が資格を取る場となるそうだ。
就職してからキャリアアップをしたいと思えば、無料で学校に入り、いつでもやり直しがきく環境が羨ましく思う。(しかし卒業するのは大変らしい)
また、高負担・高福祉の社会においては恩恵を受ける人とそうでない人の差が開いてしまうが、デンマークの国民の間では「みんなのお金でみんなが幸せに暮らす」という「共生」の精神が強いため、このシステムが成り立つようだ。
九州ほどの面積と、兵庫県ほどの人口の日本に比べると小さな国だが、世界一幸せな国と呼ばれるデンマークの社会システムに感心をした。
人口や土地、国民の価値観など、日本とは条件が違う部分も多いので、デンマークの仕組みをそのまま使うことはできないが、日本のアドバンテージを利用した国づくりが何かあるのではないかと思った。
もっと日本とは違う社会モデルを持つ国についての本も読んでいきたい。