息が詰まるようなこの場所で

著者 :
  • KADOKAWA
3.62
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  • / ISBN・EAN: 9784047373402

作品紹介・あらすじ

タワマンには3種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ――。
大手銀行の一般職として働く平田さやかは、念願のタワマンに住みながらも日々ストレスが絶えない。一人息子である充の過酷な受験戦争、同じマンションの最上階に住む医者一族の高杉家、そして総合職としてエリートコースを歩む同僚やPTAの雑務。種々のストレスから逃れたいと思ったとき、向かったのは親友・マミの元だった。かつては港区で一緒に遊び回り、夢を語り合った二人だったが――。
幸せとはなんなのだろう。
逃げ場所などない東京砂漠を生きる人々の焦燥と葛藤!

感想・レビュー・書評

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  • 「タワマンには三種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ」
    憧れ(?)のタワマンに住む3世帯視点のお話
    皆に読まれているということは少なからずタワマン住人モデルケースなのだろう

    皆それぞれ悩みを持ち他者と比較し一喜一憂する
    私は『持たざるもの』のサラリーマン
    高層階の住む資産家に憧れ、嫉妬し、苦悩を嘲笑う
    地権者には楽観視を蔑み、収入差にマウントする

    欲にはきりがない、子供に「好きなようにすればいい」はどの家庭も嘘で子供は期待を背負わされる

    子供といえども自分とは違う一個人
    子育てに正解はない 
    少なからず世論社会に調和できる耐性はつけてやろうと自己決定

    琴線メモ
    ■親の助けを借りず、夫婦で働きながら東京で子供を産み育てるというのがこんなに難しいとは、学校の先生も会社の人事も、誰も教えてくれなかった。

    ■子供には子供らしく健康的に育って欲しいと願いながらも、良かれと思って過酷な受験戦争に送り出し、偏差値という無機質な数字で一喜一憂してしまう。

    ■「なんだ、人数が少なくても仕事は回るんじゃないか」、人数が減った状態が常態化するようになる。結果として社員の労働負荷が高まり、残ったメンバーが心身を病む。

    ■本音で話し合ったところで、こじれた相手と理解しあえるはずがない。ならば、相手の面子を潰さない着地点を目指すというのがサラリーマン人生で学んだスキル

    ■東京って上には上がいるじゃないですか。それも無限に。仕事でも先が見える中、自分が何者でもないという現実をつきつけられて、それでも惨めな自分を認めたくなくて、自分のアイデンティティをマンションや街に投影して承認欲求を満たす人の気持ち、わからなくもない

    ■人々が欲しているのは真実ではなく、納得感のあるストーリーなのだ


  • タワーマンションに住む家族たちの葛藤が描かれている
    同じくタワマンでも高層階と低層階では天と地差がある…
    それぞれ苦悩や悩みは尽きないみたいだ

    その中で、平田健太の章に共感する
    低階層に住む平田家だが、世間では名の通った立派な銀行に勤めている
    しかし、会社は不祥事を起こし深刻な事態に…
    職場では仕事をしない上司に面倒事だけは全力で押し付けられる
    何を考えているのかわからない、やる気が感じられない若手社員の教育を押し付けられ、挙句の果てには若手社員は退職代行サービスを使いそそくさと仕事を辞める
    上司からはその後処理も押し付けられる

    家庭では息子の中学受験に力を入れる妻に嫌気を感じる
    中学受験にそこまで力を入れる必要があるのか…、妻と方向性が違うことで話し合いが喧嘩へと変わっていく

    世の中の働き盛りのお父さんはみんなこんな感じじゃないのかな〜って思ってしまう…
    お父さん達、頑張ろうー!
    (奥さん編もあるので世の中のお母さん達はそっちに共感できるかもw)

    • 1Q84O1さん
      はい!頑張ります(≧∇≦)b
      けど、お母さんも大変ですよね…
      そして、お父さんとお母さんの喧嘩が…
      我が家のように…w
      はい!頑張ります(≧∇≦)b
      けど、お母さんも大変ですよね…
      そして、お父さんとお母さんの喧嘩が…
      我が家のように…w
      2023/07/27
    • mihiroさん
      1Qさ〜ん、おはようございます(^^)
      タワマン小説、面白そうだな〜♪
      タワマンなんて低層階でも私には縁なさそうだけど笑
      この本、全然知りま...
      1Qさ〜ん、おはようございます(^^)
      タワマン小説、面白そうだな〜♪
      タワマンなんて低層階でも私には縁なさそうだけど笑
      この本、全然知りませんでした
      予約枠開いたら予約してみようかな!
      2023/07/29
    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん、どーもです♪
      私もタワマンには縁はなさそうです…
      っていうか、田舎のうちの県にはそもそもタワマンが無いかw
      物語はサクサ...
      mihiroさーん、どーもです♪
      私もタワマンには縁はなさそうです…
      っていうか、田舎のうちの県にはそもそもタワマンが無いかw
      物語はサクサク読めますのでよかったら読んだみてください^_^
      2023/07/29
  • タワマンに住む家族たちの物語。
    タワマン小説って聞くともっとカーストっぽいママ同士のドロドロ系かと思ってたけど、そういう感じではなかった。
    それぞれの悩みだとか葛藤の話だった。
    上層階と下層階に住む家族、それぞれの視点で描かれる。
    私にはなんの憧れもないけれど、タワマンに住むという事はそれだけで高いステータス性があるんだろう。
    だけどお受験やマウンティング、、見栄を張ったり仮面を被ったり、ほんと息が詰まる様な窮屈な世界だな〜と感じた。
    その煽りを食らう子供達がちょっと気の毒に感じた。

    でも程度は違えど人付き合いをするうえで、タワマンに限らずこういう見栄の張り合いとか普通にあるよな〜と思う。
    それだけに共感できるとこが結構あった。

    どんな立場であっても迷いや葛藤はある。
    周りの事は気にせずと思うけど、やっぱり隣の芝生は青く見えてしまうものだよな〜。
    身の丈に合った生活を心がけなければな〜改めて感じるお話だった。

    そして何より、ここに出てくる子供たちがみんな逞しくて良かった!
    1Qさんの投稿で知った本でした✩︎⡱
    面白かったです〜!



    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん!
      読まれたんですね^_^
      私もタワマンに憧れは…、ないです!w
      今もタワマンとは程遠いマンションに住んでいますしw
      そも...
      mihiroさーん!
      読まれたんですね^_^
      私もタワマンに憧れは…、ないです!w
      今もタワマンとは程遠いマンションに住んでいますしw
      そもそも、うちは田舎なのでタワマンというもの自体がないです(-_-;)
      2023/12/16
    • mihiroさん
      いっきゅうさ〜ん、こんばんは(^^)/
      私もタワマンとは程遠いマンションに住んでる一般ピープルです笑
      だいたい高所恐怖症だしな〜!タワマンな...
      いっきゅうさ〜ん、こんばんは(^^)/
      私もタワマンとは程遠いマンションに住んでる一般ピープルです笑
      だいたい高所恐怖症だしな〜!タワマンなんて嫌だわ。←負け惜しみ笑
      どんなとこに住んでても、それぞれに悩みはありますよね〜(ㅜ.ㅜ)
      タワマン小説面白かったです(*^^*)
      2023/12/16
    • 1Q84O1さん
      低〜い階が便利だし楽だからいいんですよ!w
      高層階だと下りるまでに時間かかるし!
      (私も負け惜しみw)
      低〜い階が便利だし楽だからいいんですよ!w
      高層階だと下りるまでに時間かかるし!
      (私も負け惜しみw)
      2023/12/16
  • タワマンに住む家族の葛藤と苦悩を描いた物語。
    全4章で、1-2章は低層階に住む平田夫婦、3-4章は最上階に住む高杉夫婦の視点で描かれる。

    収入格差による嫉妬、軋轢は、タワマンに限らずどこにでもみられるものだが、タワマンはそれがより可視化される。上には上が、下には下がいるという現実が、この作品でもしっかり突きつけられる。
    それでもタワマンに住みたくて、住人になることを自ら選んだ親世代は、酸いも甘いも味わえばいいが、親の都合で受験戦争に駆り立てられる子供たちはかわいそうだなと思った。

    "職業選択の自由すらない人間の、何不自由ない暮らし"は刺さった。

    また、本作で、タワマンには"地権者"と言われる層がいることを初めて知った。これは確かに美味しいポジションだ。先祖がそこに住んでいたから、という理由で、タワマンに住む権利が与えられるなんて、そこに住むために必死に優良企業に入ったり起業したりした人からしたら羨望と嫉妬の対象になるだろう。

    最後の隆の答辞の挨拶はとても良かった。

    正直、タワマン小説にはハッピーエンドは期待していなかったので、個人的にはそこまで楽しめなかったかな。

  • 初読みの作家さんによる「タワマン小説」。タワマン事情には疎いが、低層階と高層階の所得格差、サラリーマン、自営(開業医)といった職業の違い、更には土地の元持ち主に割り当てられる地権者住戸というものがあることも初めて知った。完全に偏見だが、タワマンを購入する人は「意識も自尊心も高い」というイメージがある。そうした人たちの集合住宅で、このような「格差」的なものに直面するのはなかなか大変だなと思った。

    本作は、四季の4章から成る連作短編集。低層階に住む銀行員夫妻の妻→夫、高層階に住む開業医の妻→開業医の夫の4名がそれぞれ主役となる。ちなみに子供が同じ公立小学校に通う同級生。それぞれの視点から見た日常生活はとても面白かった。

    他人から見れば恵まれているように見えても、誰しも手放しで自分の人生に満足しているわけではない、ということが良く分かる。隣の芝は青く、選ばなかった人生に思いを馳せる(世襲で敷かれたレールに乗ることを強いられていたり、結婚するか独身のままでいるか、子供かキャリア、都会か地元かなどなど…)。それでも、大切なのは自分の今の状況にいかに自分が腹落ちできるかということなんだと思う。そのためには、究極には(これまでその選択をしてきた)自分を信じること=自信を持つことなんだろうな…と思うに至り、色々考えさせられた。

    タイトルだけ見ると、マウンティング系の嫌な気分になる話かなと少し心配だったが、良い意味で裏切られ、読後感は爽快。
    是非色々な登場人物のスピンオフで続編が読みたいと思った。

  • タワーマンションを舞台にした短編集です。
    資産家もサラリーマン世帯も、タワマンとそこの人間関係に縛られて、それぞれがんじがらめになっています。
    特に中学受験事情は、まさに息が詰まるような苦しさを子供も親も抱えていました。
    収入も職業も異なる登場人物の中で最もステータスにとらわれていた女性は、タワマン低層界で資産家世帯の機嫌を伺いながら息子の中学受験に神経をすり減らしていました。
    タワーマンションや富裕層といった、周囲からステータスを見られがちな状況に身を置く中では、いかにそれらにとらわれないでいるかがとても大切に思えました。
    同じ組織や場所に所属していると、どうしても特有の価値観に支配されることはあるので、そのせいで苦しくならないように、私自身も気をつけたいです。
    住む場所や所属先は時々見直す方が好きなので、この小説の息苦しさには心を抉られるようでした。


  • 人が羨む人気のタワマンで暮らす家族たち。
    社会での立場や家庭での役割、それぞれが
    抱える悩みや葛藤をつぶさに描いた物語。

    他から羨まれる生活に見えるからと言って
    悩みがないわけではない。
    それぞれが生きてきた時間、積み重ねて
    きた経験の中に、その人にしかわからない
    悩みと溶かしきれないしがらみがある。

    煌びやから虚像の中で見栄と嫉妬、
    優越感と劣等感の間を行きかう、
    息が詰まるようなこの場所で必死にもがく
    人たちの物語でした。

    〜〜
    世の中には人間の数だけ地獄がある。
    それは当人でないと決してわからないもの。
    か細い繋がりの関係では決して見えないし、
    見せることもない。
    心の奥底で波立つ感情を押さえて、
    ニコニコと笑う。
    〜〜

  • みんなそれぞれ背負っていて大変。だけど隆が自分の意思で医者ではなくアメリカ留学を決めたことが、なんだか勇気もらえた。勉強って親から言われたからとか病院継ぐためとかじゃなくて、選択肢を増やすって事につながるって示してくれて、スッキリした。
    タワマンの世界の人間関係ってどうなんだろうって思って読み始めたけど、いつのまにかそれぞれの登場人物の気持ちが手に取るようにわかり、夢中になって読み終えました。
     

  • 読書備忘録750号。
    ★★★★★。

    やばい!読後時間が経ってしまい記憶が・・・。

    良いですね!こういうの好きです。笑
    タワーマンション住民のヒエラルキー構造の物語。
    住まう階層によって分断される人間関係を多分こうなんだろう・・・、というステレオタイプに描いた傑作と思います。笑

    高層階:持って生まれた環境でお金になに不自由なく暮らせる上級国民。或いは成功者!低層階を見下す。
    低層階:基本パワーカップル。共働きでペアローン35年で憧れのタワマンに住む。生活はキツキツ。高層階を憎む。
    地権者:タワマンが建つ前にそこに住んでいた住民がなんの苦労もなく住んでいる。マウント合戦の外側で生きる。

    そして登場人物の分類。
    ①女性群:妻であり母であり、そして女性である。
    ②男性群:夫であり父であり息子であり、そして社会の歯車である。
    ③子供達(男子):子供であり、少年であり、そしてアクセサリーである。

    分類ごとの習性。
    ①女性群
    全ては自己中(特に物語の前半は)。タワマンの中でマウントの取り合いに明け暮れる。
    住んでいる階層、部屋の値段、夫の職業、年収、子供の成績。これらが全て自分を着飾るアクセサリー。自分というものの価値は、全てアクセサリーで決まる。表面上の着飾りと、水面下の妬み僻みをまとう姿がグロすぎる。子供の教育という表面的には子供の為に厳しくしているように見えるが、実は「うちの息子は開成よ。筑駒よ」と言いたいことが全て。
    ⑤男性陣
    タワマンの中には全く興味がない。代々開業医の家系での抑圧されてきた長男としての人生。会社の中で頑張ってきたにも関わらず評価されないもどかしさ。
    いわゆる勝ち組、スポットライトを浴びるような人種に比して自分の人生はなんだったのかウジウジと酒を飲む。だけど、タワマンの中の男性陣はマウントという概念なく仲良し。皆でウジウジしている。
    ⑥子供達
    母親のアクセサリーとして輝け輝けと超進学塾ブリックスの最上級クラス「エス」にしがみ付かされる。朝5時から深夜まで。
    一方で、アクセサリーしがらみの無い友達とは分け隔てなく。そこはスイッチが切り替わり純真な少年になる。そして彼らも母親のアクセサリーから脱却して本当にやりたいことを見つけていく。

    物語後半は予定調和かも知れませんが、母親たちのマウント合戦からの教育合戦から、ちょっとずつ、子供たちが自分で考える将来を受け入れていく、という意識変化が起きる。これがすごく気持ちいいです。
    これがあるから★も5つになる。どろどろのままだったら読後感がすっきりしない。

    エピローグ。
    タワマン低層階、カースト下位層母親の教育DVに晒された結果慶應附属中学に合格。そこで燃え尽き、エスカレーターで大学3年まで漫然と過ごしてしまった平田充くん。就活で完全に後れを取っていることに気が付き慌てふためく姿が微笑ましい。笑
    めちゃくちゃ良いエピローグ。

    そして、カバーの裏に記された短編「高杉隆の初恋」も素晴らしい!
    タワマン最上階のペントハウスに住む高杉家の長男。開業医を継ぐというレールから自ら脱線。開成?筑駒?からスタンフォードに進学して、実は憧れ女子とアメリカで仲良く・・・と思いきや一刀両断で失恋。笑。

    頑張れ充!隆!

  • 湾岸のタワマンって、存在自体が序列を示しているようで、なんだか怖いイメージ。
    高層階、低層階、地権者…それぞれに隠れた苦悩があるのだろうなぁ。
    大人はともかく、それに巻き込まれる子ども達もなかなか大変そう。
    いずれにしても、私は住めそうにないなと思った。

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