終わりの志穂さんは優しすぎるから (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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本棚登録 : 145
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048652537

作品紹介・あらすじ

留間島。人里離れたその島で、画家として全てを懸けて絵を描く俺の前に、志穂さんは現れた。穏やかで可憐な彼女は、幽霊が見えるという。それが本当かはわからない。けれどどうやら、彼女は何かを隠しているらしい。

感想・レビュー・書評

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  • 「表紙のイラストが綺麗すぎるから」
    とくだらないことを言ってしまいたくなるほど好みの絵柄。
    加えて、作者は私と同じ札幌出身。
    そしてあらすじを読めば、どうやら夏っぽい感じだ。
    私は四季の中で夏が一番好きで、ちょうど、夏を感じ取れるような作品を読みたいところだった。

    読み終えての感想としては、もう少し夏っぽさを求めていたところではあるが、この作品はこの作品としておもしろかった。
    「どんでん返し」とか「あなたも騙される!」みたいなミステリ作品の結末はすぐ気づくくせに、こういう単純(?)なものにはすぐ引っかかる。
    伏線もうまいように思えるし、結構振り回してもらえた。
    トリックはとある有名な映画を思い出したが、それとはまた違う衝撃があった。

    ただ、ラストシーンでの志穂さんの反応がもう少しあればよかった。
    主人公も志穂さんも自分の中では想いがたくさんあるのだろうが、交流がなければ感動は生まれない。

    あと、文章がたまにくどい。
    「Aだ。まぁ、Bなのだろうが。」
    という付け足しの表現が何度も出てくる。

    もちろん、好印象のほうが大きい。
    私は人が死ぬだけのミステリは嫌いだが、この作品は人が死なないミステリ。
    ホラーといってもライトホラーで、「怖い!」となるような本ではない。
    ちょうどいい。
    誰でも読める作品だと思う。

    作者twitterによると、刊行は決まっていないものの続きはあるそうなので、それに期待したい。
    アニメになっても面白そうだ。
    なので、この作品が売れるといい。

  • 途中から、なんとなくオチが見えてしまったのが残念でしたけど、優しいお話でした。ほんとに、二人が普通に出会えていたらよかったのになぁ。

  • オチは予想できなくもなかったけど、ミステリ仕立てな優しいお話だった。重内商店のおばあさん好きです。

  • 短編にある謎解きっぽいのは少し強引というかライト過ぎるし、そもそも中盤あたりでカラクリが分かってしまったけど、そういう分かりやすさも、タイトルにある優しさの雰囲気を作る一つの要素なのかもしれない。雨の日も絵はテントに置いていたのだろうか。

  • 献本企画でいただいた本。

    最後まで読み終わって、素敵なタイトルだなと思った。
    夏の終わりの寂しさと一緒に過ぎ去っていくようなはなし。
    ホラーって苦手だけど、これくらいライトなのはすき。

  • 三部作からなる。

    公一郎と志穂、志穂の妹紫杏、商店の店主。
    これだけが登場人物。絡んでくる人たち。


    一章は公一郎と志穂のお話。
    主人公の森公一郎。
    彼が訪れている、伊豆諸島の一つ咲留間島という場所が舞台。
    そこで君一郎は画家として絵を森の中で描いている。
    出会ったのは織川志穂と出会う。
    彼女は公一郎が絵を描いている近くに住んでいるという。
    志穂は『幽霊、見えますよ』と。
    そして、蓮の花の池の幽霊の話を中心に話が進む。
    謎解きは公一郎。幽霊は志穂のひいおばあさん。
    台風の日に現れるという女性は蓮の花を思い、危険を顧みずに自ら湖に現れ、蓮の花を間引きしていた。
    絵が完成しなければ画家を諦めるつもりの公一郎。
    志穂は『必ず完成する』と言い放つ。
    何かを隠している志穂。
    隠し事をしている事に気づいてしまった公一郎。


    二章は志穂の妹紫杏が公一郎と絡む。
    夏休みの宿題をするために島に来た中二の紫杏。
    ハキハキした紫杏が『お姉ちゃんの秘密を一つ教えてあげる』という言葉に釣られて、絵の先生をする事に。
    何かを隠していると確信している公一郎はその提案に乗る。
    公一郎は、紫杏の色覚異常に気づく。
    そしてそれでも尚『生きている絵を描け』と。
    色を認識できない紫杏は、色=チューブから出した色。
    それでも絵を描くのに色を絞って書かせて。
    彼女に自信を持って絵を描く事を勧める。
    教えてもらった秘密は志穂のスリーサイズ。
    公一郎は言う。他の事は『自分で確かめる』と。


    三章で再度公一郎と志穂の二人。
    志穂が精神病院に入院している事、
    志穂の父親が今現在此処にいない事。
    公一郎の絵を描いているすぐ近くに骨が埋まってる事。
    それを聞こうとアレコレ物的証拠も見つけ。
    島の商店にアイスとドリンクを買いにいく。
    が、店主は寝ていて一筆書いて店を後にする公一郎。
    これが物語をひっくり返す。
     森は生きている。
    そう言って公一郎は筆を置く。出来上がった絵。
    それを見て泣く志穂。
    秘密を確信するために、まずは自分の手を触ってくれという志穂。
    が。
    触れない。触れられない公一郎。
    そこにやってきたのは商店の店主。
    公一郎の事が全く目に入らないで話は進む。
    そこで公一郎が気付く。
    自分が幽霊なんだと…一年前に自殺したのだと。
    志穂に公一郎は幽霊とはなんだと問いかける。
    自分が死んだ事を認識出来ないで、同じような日々を送る事だと。
    それをキチンと認識させてあげたいと思っている志穂。

    エピローグで志穂と紫杏が電話で話す。
    紫杏の『今回は長かった』と言うセリフでかなり長い事公一郎と付き合っていた事を伺わせる。


    読み終わって思った事は『胡蝶の夢』と似てるなぁって。
    一気にひっくり返されたのは小気味良い。
    あれだけどんでん返しされたのも久々でした。
    登場人物を絞ってあって、物語がスマートにまとまっている感じがする。
    しかも伏線が商店店主のお婆さんってトコロがイイ。
    『いかにも田舎』って雰囲気で。
    夢と現実はこんなにも曖昧に成り得るのだろうな…

    関係ないが、遺体発見日が兄貴の誕生日だったのに思わず笑った。
    シリアス場面なのに…。

  • 良いもん読ませていただきました。ちょっと切ないこの読後感、心地良いです。
    キャラクターも魅力的で、中でも紫杏ちゃんが特に好きです。すっごく良い子。
    姉妹を取り巻く複雑そうな背景が気になるのですけど、これ一冊で終わり…っぽいですよね綺麗に終わってますし。ううーむ。

  • 【物語は終わりにその姿を現す。儚くも美しい、ライトホラーミステリ。 】

     七月、咲留間島。東京のはるか南に位置するその島で、俺は絵を描いていた。もしこの夏の間に、画家として納得できる作品を描けなければ、その時は筆を折り、この島に骨を埋めようと覚悟して。
     そんなある日、俺は織川志穂と名乗る女性と出会う。穏やかで可憐な彼女は、幽霊が見えるのだと言った。
     その真偽はわからないまま、しかし俺は自然豊かなその島で彼女と時間を共有する。
     蓮池の女霊、ハマユリに見える少女の呪い。そして、消えた彼女の父親。
     俺はそうした謎に触れるうち、彼女が自分に何かを隠していることに気付いてしまう。

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著者プロフィール

八重野 統摩(やえの とうま)
1988年、北海道札幌市生まれの作家。立命館大学経営学部卒業後、書店員をしながら執筆。2011年第18回電撃小説大賞に作品投稿し、編集部の目にとまりデビューに繋がる。代表作に、『還りの会で言ってやる』など。

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