罪色の環 ―リジャッジメント― (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048664660

作品紹介・あらすじ

「あなたたちは裁判員に選ばれました。日給四〇〇万で疑似裁判をしてください」-音羽奏一もまたその裁判員に選ばれた一人。彼は、かつて被疑者となった「首絞めピエロ事件」で無罪になった特殊な経歴を持つ大学生である。そんな彼をはじめとして、計六名の男女が識神島と呼ばれるリゾートに集められた。その目的とは、十九年前に無罪の判決を下された強盗殺人事件の再審。だが、彼らはゲーム感覚で行われる裁判で、ある真実を知ることに…。人工島を舞台に行われるイリーガル・サスペンス開廷!

感想・レビュー・書評

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  • 死刑制度の問題を提議しているという側面ももちろんありますが、
    純粋にミステリーとして面白かったです。

    いわゆるデスゲーム系統でありながら、
    しっかりリアリティがあって各キャラに感情移入できました。
    もっと売れてもおかしくなかったのにと思う一冊。

  • 島で行われた裁判の判決は。
    罪の大小はあれど、それを裁く人間を間違えていたなんて考えるだけでもゾッとする。
    冤罪で裁かれなどしたら、生きていく事すら厳しいだろうな。

  • 日給400万円の裁判員として集められた男女6人。
    彼らは19年前のある強盗殺人事件の再審を依頼されることに。
    被告人は無罪か、それとも死刑か。
    ゲームのような疑似裁判は思わぬ真実を暴き出していきます。

    作者の仁科さんはこの後の『座敷童子の代理人』で知りました。その時の伏線の巧みさに、サスペンスを書かせたら上手いだろうなと感じていた通りの面白さ!
    法廷サスペンスということで、裁判員制度・死刑制度・冤罪をテーマに、考えさせられる部分も多い話になっていますが、基本的にはライトな読み口で、堅苦しくはないエンタメ小説になっています。

    地の文のシニカルで軽妙な言い回しは読んでいて飽きないですね。
    「まず鬱憤を吐かせなければ先に進めないのだ。アサリの下処理と同じである」
    こういう表現をさらっと入れてくるフットワークの軽さが好きです。

    また、伏線とその回収が丁寧でいいですね。
    こういう気付きがある小説はすぐ読み返したくなります。
    『座敷童子の代理人』同様、ちょっとした一言が生きてくるのも素敵。

    読み終わってみると、人が人を裁くのは難しいと改めて思わされました。
    何が真実なのかを知っているはずの当事者こそ無力だったりもします。
    真実の弱さと、嘘の強さを痛感しました。
    そして集団心理こそ最強で最悪のものかもしれません。
    作中で提案されたあるアイデアは、効果が確かなら一考の余地はあるかもしれませんね。

  • 最後までちゃんと読めば色々とつながる構成だけど、何れにせよ集合体としての人の悪意に対しては強烈に無力なわけで、その意味では、読者に課題を残す巧妙な仕掛け。もし1巻完結じゃなくて続きものだったら、精神的に持たなかったかも。共感覚ネタなくても良かったような。あと、一番の功労者が一番評価低いってのは、なんか重い。そこも著者の狙いだろうか。

  • 「あなたたちは裁判員に選ばれました。日給400万で疑似裁判をしてください。」
    6人の男女はとある島に集められた・
    その目的は無罪判決を下された強盗殺人事件の再審。
    しかし、ある真実が浮かび上がってくる。
    死刑か無罪か、究極の2択。リーガルサスペンス開廷。

    途中までは山場はいつ来るのだろうともやもやしていたのだが、真実と目的が分かり始めてくると一気に入り込んでいけました!
    キャラが立ってないことと結末は納得がいっていない部分があるけど、物凄く読み応えがある1冊です。
    MW文庫ということで挿絵がないのだが、あると人物像や雰囲気がより伝わると思うので欲しいな。

  • 表紙に騙されました。
    超怖かったたです。
    何をそんなのんきな顔して表紙飾ってんだよ!!!(笑)

    ピエロっていう設定自体が私は怖いので、余計怖かったです。

    冤罪で死刑を宣告され、法廷でそう誘導されたというところから始まりました。
    殺害現場を見た主人公に、犯人が黙ってないと家族を殺すと言われる。
    でも、黙って罪をかぶったところで家族は被害を被る。
    冤罪でも、一生「あぁ、首絞めピエロだ」そう呼ばれる。

    無罪判決から二年後、離島で裁判員のバイトという形式でつれて来られ、その中には加害者と被害者。
    当初は気づきもせずリゾート地で和気あいあい。
    でも、それが表に出だした頃、罪人を無罪か死刑かで裁くという。

    一人目の罪は、正直正当防衛。
    19年前の事件で、夫婦が不仲で、そこに息子が路上生活のおじさんを連れ込んでいた。
    丁度夫婦喧嘩をして妻が夫を殺害。
    妻が息子を殺そうとするところでおじさんが止めに入り、妻を殺害。
    息子はそのおじさんに「カレー食べて行きなよ」と言った。
    こういうのって、情状酌量の余地あり。
    なんじゃないかなって。
    どのみち、親の勝手で殺されそうになった挙句、たらい回しされた息子はたまったもんじゃないし、一生それを忘れられないんだけど。

    二つ目の罪は、有罪でいいんじゃないかな。
    兄弟が父親の車に無免許で乗車、運転。
    運転していたのは弟で、懲役7年の服役中。
    被告の兄は弟が無免許であると知りながら同乗。
    運転中の弟が居眠り。
    被告も眠っていたが、事故を起こす寸前で起き、クラクションを鳴らし、横断歩道を渡っていた老人を轢かないために、歩道を歩いていた小学生の列に突っ込んだ。
    被告はちょっとバカで、80歳の老人を轢くより、生まれて数年の子供を轢いたほうがいい。
    子供なんてまた作ればいい。そういう考え。
    人一人の命の重さは、年月だという。
    そもそもその考えは二の次で、自動車運転過失致死傷罪なんかじゃない。
    過失なんかじゃない。
    免許持ちでも事故を起こすのに、無免許が運転して事故を起こさないわけがない。
    事故を起こすことはわかりきってることじゃないか。
    故意にやったわけではない。
    そんな言葉、誰が受け入れるだろうか。

    三つ目の罪は確実に無罪。
    だって冤罪。
    この罪がこの本の本質なんだけど、とてもとても身勝手なこと。
    被害者、と言っている側が、実は加害者で、加害者と言われている側が実は被害者。
    自殺の鎖。
    よく考えたもの。
    自殺した人の名前をバトンとして腕に刻み、最終的にWe are suicide.わたしたちは自殺。そうなるようにしていた。
    のに、被害者と言われている姉が先に殺されたことで、その妹は被害者になれた。
    でも、実際は、その妹も自殺を強要され、結局実行しなかったことからそのメッセージは届かず、自殺手段として手形が残るように、血圧計で自分の首を絞め、その処理をしていた次の自殺者を目撃した主人公が首絞めピエロとなるところだった。
    本当は犯人なんていない。
    犯人は、死んだ子たち。
    結局、主人公はリゾート地では死刑を言い渡されたけれど、結局は生きていた。
    自白剤っていう薬の実験だった。

    正直、この三つ目の罪は、被害者と歌われていた妹に罪があるんじゃないかと思う。
    少なくとも、無罪だと知っていながら主人公が首絞めピエロと言われても黙っていた。
    これはある種の共犯で、幇助の罪にならないのだろうか。
    いくら姉に自殺を強要されたからといって、他人の人生を狂わせていた彼女は、もっと早く手を打つことができたはずじゃないだろうか。
    だって、姉はもうこの世にいないのだから。
    それを、他人が罪をかぶることで逃れようとしていた。
    文末にもそうあったけれど。

    私は、就職活動を通して嘘をつくことが本当に嫌になった。
    自分に嘘を付き続けることは、とても疲れる。
    それが人殺しなら尚更じゃないか。
    自分が楽になることは、他人が楽になること。
    償う意思がなければ牢獄に入る意味なんてないだろうけれど、きっと、この妹なら償うことができたはずと私は思った。
    なんの罰も受けず、自己完結するより、何かの罰があるほうが、生き生きできると思う。
    それで罪が償えるかは別だけれど、何もせず、ただ過去を悔やんで生きるより、どこかで償うこと。
    それが自分のためでもあるし、被害者のためでもないんじゃないかな。

  • 死刑か無罪かを決める裁判ゲーム。

    新人の作品にしてはなかなか面白かった。

    日本の司法制度、裁判員制度だとか死刑制度だとかが抱える問題について考えさせられる面も。

    でもなんだかんだいってエンタメ小説。
    雰囲気としてはライアーゲーム。

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著者プロフィール

広島県在住。第19回電撃小説大賞応募を経てデビュー。元警察官という異色の経歴を武器に、精緻を極めた文体と温かい人物描写を得意とする。

「2023年 『後宮の夜叉姫5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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