パララバ-Parallel lovers- (電撃文庫 し 13-1)
- アスキー・メディアワークス (2009年2月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048675185
作品紹介・あらすじ
遠野綾は高校二年生。平凡な日々を送る彼女の一番の幸せは、部活を通して知り合った他校の男子生徒、村瀬一哉と毎日電話で話すことだった。何度も電話をするうちに、互いを友人以上の存在として意識し始めた二人だったが、夏休みの終わりに一哉は事故死してしまう。本来であれば、二人の物語はそれで終わったはずだった。しかし一哉の通夜の晩、綾のもとに一本の電話がかかる。電話の主は死んだはずの一哉。そして戸惑う彼女にその声は告げた。死んだのはお前の方ではないのかと…。二人が行き着く真実とは!?出会えぬ二人の運命は!?携帯電話が繋ぐパラレル・ラブストーリー。切なさともどかしさが堪らない、第15回電撃小説大賞「金賞」受賞作。
感想・レビュー・書評
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彼が死んだこちらの世界。私が死んだあちらの世界。ふたつの世界を繋ぐ携帯電話。死の真相を探るふたり。
「会えないふたり」という王道の状況設定が、パラレルワールドを用いて功を為し、切なさをつのらせる。
謎解きのサスペンスも効いた青春物語の秀作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
山本弘の『世界が終わる前に』のビブリオバトルで紹介されていたので興味を持った。
乙一の『Calling You』を思い出した。
時間的・空間的に離れた相手と電話でつながってしまう話だ。
本作では、綾の世界では一哉が死んでしまい、一哉の世界では綾が死んでしまっているが、二人の間では電話がつながってしまう。
それぞれの死には不可解な点があり、その真相を探ろうとする。
全体としては、電撃大賞金賞なだけあって、よくまとまっている。
似たような世界にいて、同じ場所に立っているはずなのに相手がいないせつなさの描写もうまい。
でも、せっかくパラレルワールドを扱うなら、だんだんと2つの世界のズレが広がっていって、それを上手く使うような謎解きだと面白かったかも。
こっちの世界では通れない道が、あっちの世界では通れるとか。
本作では、基本的に2人とも同じ行動をとるので、答え合わせをしてズレを認識するだけにとどまっているので、もったいない気がする。
でもそれも悩みものか。
実際のラストでは急にズレが出てきて、二つの世界の変化に焦ったし。
ところで、二つの世界に分岐する原因は何だったんだろう?
描写あったかな。
恋愛の面から見ると、あんな別れ方ではなくて、二人がそれぞれの世界で前を向いていけるような、決意を固める瞬間があってもよかったのではないか。 -
ライトノベル
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SF設定を謎解き、恋物語、どちらにも効果的に使った作品。切ない消失感、楽しく進む謎解き、残酷な真実。平行世界ものとして二本軸で作られているストーリーは切なく見事。
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好きな人に好きと言えるから、生きていることは尊いんだな。パラレルワールドの恋人未満な高校生男女。一見SFのようだが設定としてあるだけで科学考証はなされない。でもそれを「会えない理由」にしているのが面白い。2人が、それぞれの世界で協調して、それぞれ世界で死んだお互いの謎を解いていく過程と、そこで葛藤する心情描写が良くできている。ミステリーとしてだと詰めが甘いが、青春小説としては素晴らしいまとめかただと思う。思いを伝えられないことは現実に多いが、伝えられる機会があることに感謝したくなる。
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高校生 遠野綾の恋人(ただし電話で話したことがあるだけで会ったことはない)の村瀬一哉が死んだ。
一哉の通夜の夜、かかってきたのは一哉からの電話。
一哉曰く、今日は綾の通夜に行って疲れたよ。
えー なにそれー?
パラレルワールドってやつですか?
ただしお互いの携帯電話だけは繋がってる?
話すうちに、お互いの死因に疑問が。
事故死かと思われていたが不審な点が?
通り魔かと思われていたが不審な点が?
さあ、二人の冒険が始まった!
というような話。
うーん。
面白く読んだけど。
作者あとがきによると、高畑京一郎の「タイム・リープ」を読んで、「一文一文が綺麗に結びついて、精密な機械を見ている」ような小説を書きたくなったんだそうだ。
まあ確かに伏線が張ってあって適当なところで回収というのがいろいろなされてはいたものの、快感がない。驚きがない。
伏線についての妙な拘りを感じてしまって、全体がいびつな印象。
これはいかがなものか、ということで★2つ。 -
”パラレル”と”謎”を中心に、控えめな主人公の恋愛と学園での人間模様がかかれています。
とてもわかりやすく、読みやすいです。
私は謎解きや推理は苦手なのですが、きちんとトリックを理解して”パラレル”と”謎”を楽しみながら読む事が出来ました。
全体的には爽やか。あと少し哀しい印象です。
最後、犯人に迫る場面の数ページは、怒りや人のもつ激しさを感じました。
最近本離れしている方や集中力が切れ気味の方も、一気に楽しめると思います。
こちらの作品に出会ったきっかけは
PSP用ゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪AllStar』カミュルート本編・メモリアル。作者が担当しています。
引力と衝撃のあるストーリーだったので、デビュー作であるこちらの作品を読んでみようと思いました。 -
すごく良い話だなと思いました。あちこち出てくる伏線もちゃんと回収してるし、何よりラストの切なさがたまらないです。自分は、かずやって本当にいるのかなーとか、いるんだとしたらこの場面ではどんな気持ちなんだろうなど想像を膨らませながら読んでました。個人的にはかずや視点での話も読んでみたいな!
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よくできていた。中盤以降、着々と真相に近づき辿り着いて問い詰めて追われて一件落着して……。
緊迫感が伝わってきてドキドキハラハラしながら読み進めた。
不運で不幸だったとしか言えない事件。
好奇心と悪意によってもたらされた事件。
せめて……彼女の将来に幸福を。
――この切なさともどかしさが、堪らない。