再生 上: 続・金融腐蝕列島

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048732567

感想・レビュー・書評

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  • 上巻読了。

    映画版の「金融腐蝕列島 呪縛」が好きなので、
    その続編ということで読む。

    舞台は、「呪縛」の事件から数年後、
    「呪縛」のACBではなく、どこか別の銀行。
    「呪縛」時代は大蔵省の接待担当、通称MOF担が威勢が良かったが、
    大蔵省への接待が禁止になり(※漫画「もふ」より)
    この「再生」の時代では、元MOF担は、出向させられたりしている。

    で、この出向先が中坊公平の、住専の債務を回収する会社
    なのだが、細かい説明はほとんどない
    (※「中坊公平・野戦の指揮官」などで、分かりやすく書いてある)

    焦点が絞られていないというか、何の話だか、よく分からないのだが。
    <呪縛>は結局、今だ切れずに、総会屋が出てくる。
    この児玉(映画版では、少しだけ出てくるが、原作版に出てくるかは
    不明)「呪縛」と同一人物なのか、よく分からないが、
    とにかくこの男がメインで脅してくる。
    主人公たちは情けなく、児玉に脅されると、すぐにマスオさんのように、
    「ひえ~」となってしまう。
    リアルといえば、リアルなのだろうが、小説的な爽快感はない。

    作者は、映画版で脚本を書いているくらいなので、
    ダイアローグは、映画並みに上手い。
    しかし、鈴木だの、佐藤だのと、個性のない名前に、
    外見描写も、性格描写もほとんどないので、
    誰が誰だか、ものすごく分かりにく。
    それぞれ、役者に当てはめて読むと、結構読める、
    ということを発見したが、
    まず中年以上で、押し出しの強い役者というのが、あまり浮かばず、
    せっかく合ったと思っても、後の描写で、年齢が全然違うことに
    気付いたりして、無駄にめんどくさい。
    人物表に、年齢くらいは、書いておいてもらいたい。
    年齢を整理して、改めて配役すればいいのだが、それほどの
    熱意も湧かなかった。
    総会屋の児玉の人物描写は上手く、脅したと思えば、
    お前の立場も分かる、といった感じで慰めたり、
    カニをふるまったり(不気味である)、いかにも、いそうな感じ。

    前半は、住専処理の会社に出向する元MOF担と、見送る主人公。
    で、妻に浮気されたり、子供に反抗されたり、
    一度治まったかと思えば、また浮気されたり、反抗されたり。
    やがて、総会屋の児玉に貸し付けた金をめぐっての、
    ごたごたに巻き込まれていく
    (住専に関連して、債権の取り立てが始まっていたので)。

    児玉は、一度激怒した後、あの金は、すべて政治家への献金に回され、
    自分が使ったわけではない(トンネルとして関わっただけで)と言い出し、
    債権をチャラにするように、迫る。
    その方法として、悪質な不良債権を100件ほどひとまとめにして、
    2、3億で買い取る男がいるので、その100件の中に、
    自分の債権も入れてしまえば分からないだろう
    (もちろん俺は、「取り立て」なんて、されないし)
    という案を出す。
    さらに、愛人がいるのいないのという、銀行幹部のスキャンダルを
    つっついたり(それとは関係ないが、幹部の娘がヤクザと結婚して、
    銀行が食い物にされたり、離婚したり)
    と、色々ごたごたする。
    主人公は、基本的に別派閥なのだが
    (児玉ともめているのは、鈴木天皇、カミソリ佐藤のラインで、
    元MOF担の男がその下にいたが、飛ばされた。
    主人公は、永井常務、という人のライン)
    佐藤に渡りを付けて、出世の糸口にするか、
    あるいは、泥をかぶって、永井をきれいなままに残すか、とか悩む。

    今のところは、経済小説というよりは、
    ただ単に銀行を舞台にしているだけで、
    ヒッチコック風の「ある男の不幸話」という感じ。

著者プロフィール

1939年東京生まれ。専門誌記者や編集長を務める傍ら小説を書き、75年『虚構の城』でデビュー。83年、退職し作家に専念。緻密な取材に基づく企業・経済小説の問題作を次々に発表する。代表作は『小説日本興業銀行』『小説ザ・外資』の他『金融腐蝕列島』シリーズ全5部作など。

「2023年 『転職』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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