- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048737760
感想・レビュー・書評
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昭和30年、伊賀の分校に新米教師の明子が赴任してきた。受け持った子ども達や村の人々との交流が温かく描かれている。淡々とした筆致から故郷の情景が思い出され懐かしい気持ちにさせられた。
季節の移ろいと共に、それぞれの子どもが抱えている問題や大人の事情が少しずつ明かされていく。
「磨いちゃいけない靴もあるのよ」と呟いた千津世先生が村を去る日。見送りにきた子ども達の姿がいじらしくて切なくなった。
明子に抱きしめられて朱根はやっと心を開くことができたと思う。
最後の数行が映像のように残る。
「楠の木の上から遠ざかってゆくバスを見送りながら、以前に豊がくれたラムネ菓子の味を口の中に思い起こそうとする」
朱根のこれから進む道が明るい方へ向かうことを願わずにはいられなかった。
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先日読んだ新聞によると、本作がかなりの国語の教科書に載っているらしい。 そういう先入観をもって読むと、たしかに教科書向きだ。 舞台は田舎の分校。新任教師と子どもの交流。いかにもだ。 もちろん多島が書くのだから、面白いに決まってるんだけど、 別に多島じゃなくても書ける小説だと思う。 最後に多島らしい仕掛けがあるかなぁと思ったら、何もなかったし。 ちょっとキャラの描き込みが足りないのも気になった。 (雰囲気は「不思議島」と似てたな) こういうノンジャンル系もいいんだけど、 もうミステリとかスリラーを書く気はないのかな。
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戦後の田舎の雰囲気が良く出ている、爽やかな本。大きなドラマはなく、淡々と進んでいく。朱根のくだりは良かった。
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1955年頃の三重県の山奥の新米小学校教師と生徒たちの話。
取り立てて大きな事件が起こることもなく、静かに物語は進む。
でも、子供たちを描くその目線が、とても温かい。
まわりの大人たちにもいろいろ事情があったり、子供たちにも様々な葛藤があったり、きっともっと深く掘り下げて書こうとすれば、もっともっと膨らませられるストーリーなのだろう。でも、私はこの、そっと手を添えるような描き方が好きだ。
子供たちを本当に愛おしく思わせてくれる、この静かな世界が多島氏の作品の醍醐味なんじゃないかと思う。
房代が幼い弟妹の面倒をみるシーン、千津世先生をみんなで見送るシーン、山奥の小屋で朱根が思いを告白するシーンがいい。
失踪した多島氏のその後を思いながら、何気なく図書館で手にしたが、せつなくて、いとおしい、思いのほか素敵なお話だった。
多島先生、どうされているのだろう。 -
物語の舞台は1955年の伊賀。山里の小さな分校に赴任してきた新米教師の明子。赴任先で明子が、それぞれ事情を抱えた分校の子供たちや分校長、同僚の千津世、営林署で働く空木などとの交流を通じて、少しづつ打ちとけ信頼関係を築いていくようすを、伊賀の山奥の豊かで美しく厳しい自然の描写と共に描いている。静謐で清潔感があって、まるで昔の日本映画を見ているみたい。方言の使い方も、味があっていい感じ。 出てくる子供という子供がみな、ヘンにすれてないいかにも子供子供してるんだな。で、天真爛漫なようで影を落とす部分があって、いじましくてけなげなんだな。明子じゃなくても思わずぎゅぎゅぎゅっと抱きしめたくなるんだな。ううううう(涙)。 これから先をもっと知りたい、空木との関係や子供たちについてももっと突っ込んで書いて欲しいと思うんですが、これで終わりなのかな?うーん。物足りないぞ。ぜひ続く物語を読ませていただきたい。
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戦後、大学を卒業したばかりの女の先生が
色々大変なことはあるけれど
田舎の学校で、がんばって行く話。 -
主軸とは別に、生徒それぞれのエピソードが章の最後に組み込まれていてそこが好きでした。
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田舎の小学校に赴任した新人教師の話。
静かにたんたんとした感じ。
生徒1人1人を深く掘り下げてくのかと思ったら、そうでもなかった。。 -
この作者の「症例A」がおもしろかったから読んでみたけど、
サスペンス的要素は特になく、
戦後日本の田舎の小学校に赴任した新人教師の話だった。
主人公の頑固な感じが好きじゃなかった。 -
読んで良かった。ほのぼのとした展開に和みつつ、最後少し泣けた。
「症例A」より読み易かった。と思う。