疲れすぎて眠れぬ夜のために

著者 :
  • KADOKAWA
3.50
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本棚登録 : 232
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048838191

作品紹介・あらすじ

新しい生き方の師範、『「おじさん」的思考』の著者が贈る最高の叡智。現代思想の最先端をゆく幸福論。サクセスモデルの幻想を捨て去り、真の利己主義を目指し、身体感覚を蘇らせ、礼儀作法と型で身を守り、家族の愛情至上主義はもうやめる-もっとも現実的な生き方の知恵。

感想・レビュー・書評

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  • 疲れすぎて眠れない事は、たまにある。

    何かをシミュレーションし始めて頭の中に台本を描いたり、過去を振り返り登場人物の真意を探ろうとしたり。疲れているのに脳が興奮し、交感神経が活発化している。いずれ寝るのだが、睡眠時間が少なくて、折角眠る時間を確保したのに残念。でも、この本はそんな科学的な話とは全く関係ない。眠れない時のお供にという趣旨だろうか。あるいは、眠くなる話ですよという謙虚さの表れか。ページを捲るとそこにあるのは、「考え過ぎないコツ」だった。

    例えば、サクセスモデルの幻想について。女性は自立すべきだと言うサクセスモデル。仕事をしていて、子供がいて、これを両方叶える事は、そもそも難易度が高い。さらに綺麗でいなければいけないとか、子供を一流高校に通わせる必要があるとか、料理が上手いとか、家が綺麗だとか、英語がペラペラだとか、アートに造詣が深いとかワインに詳しいとか、海外旅行に行ったとか。エンドレスにハードルを上げず、社会に押し付けられた幻想から自分自身を解放する事が大事。

    型にはまる必要はない。テレビも雑誌もIDカードも無く写真も無い時代には型が必要だった。自らを騙る事が容易。アイデンティティーを担保するために、型というものがあったのだと。この内田樹の言説にはハッとした。ハッとして目が覚めてはいけないのだが、なるほど。型が本性を示す時代と、名前にこびり付いた学歴や社歴などが社会的に残り、判断される現代とは異なる。とは言え、そんな過去の時代は移動範囲が広くないから、地域社会においてアイデンティティは規定されるので、型の必要性は多分、別問題。論説の欠陥に気付き、眠りに一歩近づく。

    自分探しとは自己PRであって、過去の自分を知る人には理想像を示すことはできない。自らの挙動がバレている。だからこそ、見知らぬ土地、見知らぬ人に対し、なりたい自分を主張することで、自分を探すのである。つまり悪いことをした経験も良いことをした経験も人間には混在するのだが、そのどちらかだけを引っ張り出して自己紹介する。世界を旅して、自分はこんな人間だと。自己紹介しないまでも、シチュエーションごとに、表出する態度から自分を点検するのだろう。

    なんか眠くなるような、考えさせるような、しかし至言に溢れる本ではあった。そして、結局、眠らずに読み切った。

  • なるほど。
    森博嗣のように、どこの本でも、内田樹も同じことを書いています。でも、それがいい。
    能や、落語と一緒。
    内容を知っていても、また、同じものに安心する、心地良く思う。
    よく考えると、不思議です。
    飽きないな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「よく考えると、不思議です。」
      不思議じゃないです、大切なコトは繰り返し伝える必要がありますから!
      「よく考えると、不思議です。」
      不思議じゃないです、大切なコトは繰り返し伝える必要がありますから!
      2013/01/30
  • 内田樹氏の比較的良心的なエッセイ集。この人の売れはじめのころの疲れてる人や弱っている人に向けて書かれたエッセイは結構好きだったりします。

  • 内田さんの考え方が好きだ。

  • 余計眠れななるわ

  • ☆4・5ぐらい。
    タイトルとおり、心配事が多く眠られない夜を過ごす人が読んだら、すこしは心の荷が降りようか、という本。

    2003年の本なのだが、これが発売された当時の、まだ若かった頃に出会いたかったと思わせるくらい、人生でさまざまなことを深く考えさせてくれる本。

    この人の生き方(とくに思春期の挫折)に共感するものがあった理由が本書を読んではじめてわかった。フェミにズムに対する嫌悪についても、やや納得。

    時間が経ったらもう一度読みたい。

  • 読んでると、目が冴えてきます(笑)

  • 袴の家紋はは胸に2、袖の後側に2、背中に1。つまり前面2、背面3。背後並びに背中への意識。

  • 夏のフェアで見かけて、タイトルが気になったので、図書館で借りた

    【目次】
    Ⅰ 心耳を澄ます
    Ⅱ 働くことに疲れたら
    Ⅲ 身体の感覚を蘇らせる
    Ⅳ 「らしく」生きる
    Ⅴ 家族を愛するとは

    タイトルから想像できる内容とは、少し違った
    「お疲れさま、大丈夫だよ、とにかく休みなよ」、という感じではなく、「眠れないなら、こんな考え方ができると思うんだけれど、どうかな?」というように、ゆるく、でもとことん色々なことを指摘している
    こういう本は久しぶりに読んだので、とてもおもしろかった
    「女性嫌悪の国アメリカが生んだサクセスモデル」「世代論」、「背中の意識を蘇らせる」がとくに興味深かった

  • 疲れた時にはがんばんなくていいんだよ~ってので読むのにいいのかも。何かを頑張ろうとしているときに読むと、身の丈を知って、無理せず楽に生きなさい、年相応に、女性らしくってんだから「なにお~!!」ってなるのかも。
    武士道やら能の世界の話にはちょっと惹かれるものがあった。守破離とか身体の感覚とか。ハンカチ落としゲームとか確かにすごいよね。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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