- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048850674
感想・レビュー・書評
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1986年1月、高校受験を控え、茶の間のTVをつけっぱなしにしながら、最後の追い込みをしていた直子は、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発を目にする。打ち上げ直後73秒というわずかな間の悲劇に、直子はショックを受ける。
幼い日から、「宇宙」に憧れ、一方で学校の教師になりたかった直子は、チャレンジャー号のクルーの一人で、高校の女性教師であったクリスタのスペースシャトル搭乗にひそかな関心を寄せていた。それだけに、37歳で2人の子どもを残しての彼女の死が深く胸に刻み込まれたのだった。「彼女の夢を、私もつないでいけないだろうか…」
以来、宇宙への漠然とした夢を持ち続けながら、やがて東京大学工学部航空学科へと進学。ロボット工学を学ぶためにさらに1年間アメリカに留学、東大大学院を卒業し、NASDA(宇宙開発事業団、現JAXA)に入社。念願の宇宙飛行士候補選抜試験を経て、ついに1999年、宇宙飛行士候補となるが…。
アメリカやロシアでの過酷な訓練の数々、結婚・子育てと仕事との板ばさみ、スペースシャトル打ち上げを阻む様々なトラブルなど…山崎直子が宇宙飛行士候補となってから、スペースシャトルに搭乗、そして無事帰還するまでの4088日を綴る。
読み終えたら、涙が止らない。宇宙にそんなに関心があるわけでもなければ、山崎さん夢が叶ってよかったねというのともちょっと違う。文章もそんなにドラマティックというのでもなく、むしろ感情を抑えて書いているのがわかるくらいなのに…。全く身に覚えのない涙があふれて、止らなくて戸惑いました。
宇宙飛行士候補生の試験の中身や、実際の訓練、宇宙飛行士としての活動など、詳しく記述してあるので、宇宙飛行士とはどういうものかとか、宇宙飛行士になりたいと思っている人は興味深く読めると思います。なんでこんなことを?とか、こんなことまで?とか驚きの連続でした。一方、スペースシャトル搭乗者が恒例として行うことや、暗黙のルールなど、アメリカ人特有のユーモアや思いやりなども、搭乗者ならではの経験として楽しく読めると思います。
家庭との両立なんて端からできるはずもなく、自分自身の中で、家族との(特に夫との)間でどれほどの葛藤があったことでしょう。事実調停離婚まで追い詰められていたなんて、手記には書ききれないいろんなことがあるのだろうなぁと察します。そして、それは夫である大地さんにも、むすめのゆうきさんにもそれぞれの苦悩があったことと思います。
聡明で、なんて強い人なんだろう…
宇宙から地球を見てきた人だから言える、その言葉にもぜひ耳を傾けてほしいです。 -
宇宙飛行士になるための訓練、打ち上げの様子、宇宙の記録。実際に行った人でなければ知らないような内容は興味深い。
キャリアを積み重ねていく妻と家庭を守るためにその夢をいったん諦めなければいけなかった夫。その二人の理解とすれ違いと和解。淡々と事実を書いている。その時の感情についてはあまり語られずさらりとふれられているけど、本当はもっと大変だったに違いない。 -
★★★★☆
宇宙のこと、宇宙での活動のことよりも、宇宙に行くまでの道筋・普段の家族との生活や、何よりもその心情について語られている。
(まっきー) -
宇宙飛行士に選ばれてからの山あり谷ありの生活、だんさなんとの関係などたいへんなことも抱えながらそれらを受け入れ、また腹をくくる姿などを見ると、この職業の過酷さが伝わってきました。
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世の中の最大の敵は自分の感情である
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2010年4月5日から15日間、宇宙へ飛行し、重要な任務を無事果たし
帰還した、日本人女性としては、2人目の快挙を成し遂げた
山崎直子さんのこれまでに至る4088日の道のりを綴ったものです。
1986年、スペースシャトル・チャレンジャー号が打ち上げ直後に
大爆発を起こし、尊い命が失われ、その中に初の民間人で高校教師
であったクリスタという女性は、宇宙から数百万人の子どもたちに
対して授業を行う予定だった。
この事故をTVで見たとき、クリスタの夢を受け継いでいきたいと
深く心に刻んだのが、受験間近の中学3年生だった。
やがて、国際宇宙ステーション長期滞在専門の宇宙飛行士として
選抜され、夢へと一歩近づく。
マイナス20℃の厳寒のロシアでのハードなサバイバルトレーニング
アメリカ、NASAではジェット戦闘機での訓練。
数ヶ月滞在するのを陰で支えた家族。
そんな夫との関係が、危機に陥ったことも窺える。
こうして、一つ一つの壁を乗り越えていく様子が伝わってくる。
ロシアでスタッフに使い捨てカイロをソユーズに搭載するのを推奨したり
サバイバルの現場で使う時に斧が常備されてる話など面白く読んだ。
未来を生きる子どもたち(ルビ符ってないから無理かな?)にも読んで欲しい一冊です。 -
子供の頃から思い描いたように順調に宇宙飛行士への道を邁進してきた筆者だが、10年間という長い訓練期間に、夫が専業主夫とならざるを得ない状況となり、離婚調停寸前まで行くなど家庭崩壊の危機を迎える。家庭を持つ公人女性の難しさ、また成し遂げた宇宙飛行の夢を後世に伝えていきたいという素直な願望が、素朴な文章を通してストレートに伝わってくる。