作品紹介・あらすじ
ついに始まる生徒会劇。
それは燈子にとって目的であり、
今までの自分を出し切る終着駅のはずだった。
侑の願いが込められた脚本が燈子の心にもたらすものは。
そして──そのときが訪れる。
「私だけがあなたの特別でいられたのに」
感想・レビュー・書評
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「私だけがあなたの特別でいられたのに」劇の幕間で燈子先輩を見つめる侑の表情や、表紙・裏表紙の構成等、侑の心情の変化をつぶさに感じられるシーンが多く印象に残った。第34話の表題「零れる」は、特別という気持ちを知りたいという侑の積もり積もった感情を表していると思う。ついに零れてしまった侑の本音に対して、変わらない事を望み続けた燈子先輩はどう答えるのか。
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ついに文化祭。演劇が始まる
演劇が終わって変わっていく燈子
今迄で変わってしまった気持に気づく侑
変わっていく燈子にさらに惹かれて、ついに…
あの拒絶していた同じ場所でのこの流れは良いね。変わっていく関係が気になる終わり方です
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例によって再読。
この巻マジで好き。色んなものが集約されてて。作中劇で主人公が自分のままでいようとする一連のシーンも本当に良かったけど、劇が終わって燈子は少し変わって、色んなものが変わっていく。
以前読んだときからずっと印象に残っているのは引きの上手さ。たった一つの言葉で正反対の解釈を生じさせるのもそうだけど、ここまで明確にすれ違いを提示しておいて、次に続けるなんて酷だぜ。今読み返して良かった、さっと次に行けるもの。
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この巻は、ずっと姉の念願として姉をなぞろうとしていた生徒会劇の成功により、自分自身への評価を受け、姉の呪縛を乗り越える燈子、それを見守る侑、という流れ。この巻を通じて大きく変わるのは燈子だが、それを願っていたはずの侑の視線が切ない。
侑は自分が燈子を独占する機会を捨て、燈子の成長のため、脚本を変更した。また、それは、侑自身が燈子に惹かれる気持ちを抑えきれなくなっていたことから、これは侑にとっても、燈子の成長により自らの気持ちを受け入れてもらえるかもしれないという賭けでもある。
終始、侑が良い子過ぎて読んでいて辛い。なぜあのタイミングで告白をしたのか。我慢できなくなったのか。フェアでありたいと思ったのか。
次は、これまで侑に頼り切ってきた燈子が答えを出す番だろう。
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劇中劇は、なかなか良かった。
しかし、表現に限界があることがわかってしまった。高校生だし、こんなもんかな。何分くらいの劇だったんだろうか?
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作中劇すらも出来が良い。そしてついに、来るべくして来る展開。
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雑誌「月刊コミック電撃大王」で連載されている仲谷鳰の「やがて君になる」の第6巻です。2018年にはアニメ化されました。ついに生徒会劇の幕が上がります。周りの人との関係や生徒会劇を演じる事によって燈子は姉の澪との関係をうまく再構築するきっかけになったようですが、ついに侑が自分の気持を抑えられなくなりました。変わらないと思っていた侑の気持ちに、燈子はどう応えるのか。ここで次巻に続くとか辛すぎます。そして修学旅行回へ…次は沙弥香が動く番かな。2019年5月に舞台化が決まりましたが、今から楽しみです。
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内容を読み終わってから、表紙イラストを見返すと様々な感情が恐ろしい程に心に湧き上がってくる。
明るい舞台の上で目を見開きしっかりと立つ燈子が大きく描かれた表表紙、舞台袖の暗い場所で垂れ幕を掴み振り返る侑の姿が小さく描かれた裏表紙
この巻で描かれた二人の有り様を端的に表しているように思える
本編は生徒会劇を中心として描かれているが、ここまでしっかり描写されるとは思わなかったな。一応、生徒会劇の内容はあらすじの形でどのような物語なのかは事前に示されていた。
だから劇本番はダイジェストのような描かれ方をするのだろうと予測していただけに2話もかけて劇の内容全てが描かれるとは思わなかった
こうしてページ数を割いて描かれるということは、こよみと侑によって作られたこの劇は本当に燈子の内面を反映したものになっているのだろうな
劇中において記憶を無くした女の子はそれぞれの登場人物からバラバラの人物像を話される
記憶を持たないために拠り所を持たない女の子は自分がどんな人間か判らない。だから他人の話す自分になろうとする。でも、それぞれが話す自分の像があまりにも繋がらないから、結局拠り所にはなり得ない
演じる燈子もその女の子に少し似ている。姉になりきるために燈子が参考にしたのは、きっと大人たちが話す優等生の姿や、幼かった自分が見ていた憧れの姿。だから姉は特別で完璧な人間であったと考え、燈子はそのとおりに生きてきた。でも、それは自分の生き方ではないから裏では緊張で震える程、不安になることも有った。
そして市ヶ谷によって全く知らない姉の別の姿を知り燈子は混乱してしまう。自分が見ていた姉の姿と市ヶ谷から見た七海澪の姿が繋がらない
燈子は劇中の女の子と同じようにどうすれば良いか判らなくなっていた
女の子は過去の自分にアクセスする為にスマホの解除パスワードを求める。辿り着いた答えはどれか一つだけが本物であると示すようなものではない。パスワードはそれぞれの大切な日を足し合わせたものだったし、中の写真はそれぞれから聞いた話を否定するものではなかった。結局人物像はバラバラのまま
実際の燈子はそういった段階で、それでも自分が目指す姉になりきるしか無いと決めつけて、他の選択から目を逸してしまった。それに憤った侑が考えた「全く別の道だけど、全てを無かった事にするわけじゃない道」が展開されるのが第31話
第31話では人が話す過去の自分を演じ、強がろうとする女の子に対して侑が演じる看護師がまるで女の子ではなく燈子に語りかけるようにして言葉を投げかける。誰かが思い描く自分になるのではなく、自分がなりたい自分になれと
それぞれと改めて向き合う中で、又、退院を迎える際に女の子は新しい自分を手にしていく。これは演技であっても燈子が発する言葉。練習を通して何度も発せられてきた言葉はまるで燈子自身が改心したかのように映る
劇が終わり、万雷の拍手の中で涙を流した燈子は劇中の女の子のように新しい自分を手にできたのだと思えた
ただ、それは同時に侑にとって喪失を意味してしまう。燈子は「特別」な立ち位置を持ちながら、侑にだけは「普通」の顔を見せていた。その関係性は二人だけの「特別」だ。
でも、今回の劇を通して燈子が自身が目指す「特別」に拘らなくなり、表面的にも「普通」になってしまったら、侑との絆も「特別」ではなくなってしまうかもしれない
侑から見れば新しい燈子は少しだけ特別性を失っている。だからこれまでよりも侑の中で目覚めた「特別」を受け入れてくれそうに思える
燈子の中で侑の立ち位置は変わらない。自分が「特別」であっても「普通」であっても受け入れてくれると無条件に思ってしまっている
そういった想いのすれ違いが河川敷での誤解と別れに繋がってしまったのだろうね
遂に想いを告げた侑。侑はきっと燈子が「特別」でも「普通」でもきっと好きで居てくれる。しかし、「特別」な存在で居る時間が長すぎた燈子はそれに確信が持てない。だから変わってしまう自分を侑が受け入れてくれるか自信が持てなくて、走り去る侑を追えない
ここに来てすれ違いが生じてしまった二人の関係性はどうなってしまうのだろう?
仲谷鳰の作品