テイレシアスの檻(2) (電撃コミックスNEXT)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049151800

作品紹介・あらすじ

理想の肉体とはいえ、女の体になったことに戸惑う元男子の千駿。親友の和奏に告白されたり、同級生女子・里中に惹かれたりの慌ただしい日々を送る千駿の前に、和奏の元カノ・長谷川が現れる。真面目な優等生という雰囲気の長谷川だが、実は性に対して奔放! 千駿は彼女にとともに男たちが待つカラオケボックスに連れ込まれ……。

感想・レビュー・書評

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  • 里中が良い子すぎる。この子とちゃんと結ばれたのはいいね。
    あとは和奏と長谷川はアウトだな。あれはダメだ…。

    2巻で終わりにはなったけど、竹葉さんの絵は非常に好みなので、次回作にも期待。

  • シーソーゲームがぶっ壊されて、跳ね飛ばされて五点の着地。

    かなり期待していたのですが、露骨な打ち切りを食らったか、全二巻にて終了です。
    ならば、遠慮は抜きというものでネタバレ前提で以後のレビューをお送りしていくことにいたします。
    作品の前提部分は一巻のレビューで書き連ねておきましたのでそちらもご参照いただければ幸いです。

    ではさっそく結論から入っていきます。
    説明不足なことをさておけば、きちんとまとめ上げられていると思います。
    馬鹿な男の子が神様に与えられた試練を乗り越えて、人間として一回り成長したというオチは実に神話的でした。結局は男という元鞘に落ち着くところを含め、元ネタの「テイレシアス」に忠実かと。

    「TSF」としては邪道よりかもしれませんが男に戻れた結末は悪くはなかったと思います。たぶん勘のいい方なら予想できた、こう着地するんだろうなというところに結末が落ち着いたので、読後感も良かった。
    いい意味で奇をてらっていない、ほろ苦いけれど青春の一ページとして締めくくれる話でした。

    もっとも、過程がかなり抜け落ちていることは抜きにすればの話ですけどね。
    一巻のレビューでも申し上げたましたが、私はこの作品の結末よりむしろ過程の方に期待を寄せていました。
    よって期待の内、その過半は置き去りにしたのかなあというのが正直なところでした。
    極端なことを言ってしまえば、一話と最終話だけ読めば十分なストーリーに仕上がりましたので。

    おそらく、最終回自体はなかば既定路線だったのでしょう。一巻が出た時点で打ち切りが決まったので急遽そちらのストーリーラインに乗せるために、新キャラを投入して無理やりな路線変更を図った。

    ――というのが私なりの舞台裏の予想なわけですが、しょせんは邪推です。話半分に聞き流してください。
    あとは主人公が現状を受け入れた反応がポップだった一方、作品中に散見された陰湿な雰囲気がどうにも噛み合わない。それに加えて男を過剰に粗雑に描き過ぎるなど、一部展開に不快な部分も垣間見えた。

    ……などといった点が敗因として挙げられるかもしれません。
    必要に迫られた部分もあると思うので、いろいろ勘案して私自身は星四つの評価ですけどね。
    いずれにせよ、最終回単独と、そこに至る流れ、どちらかに重点を置くかによって評価はかなり変わってきそうです。展開に引っかかりを感じて評価を下げる方の意見もなんだかわかる気がしました。

    ただし、もう一、二巻分の尺さえあれば男女間の危うい変則三角関係からのシーソーゲームを丹念に描くことができ、この結末が評価されたと思うと惜しい。
    尺さえあれば、溜めが足りないまま最終回に向かう怒涛の展開に面食らうこともなかったのでしょう。

    シーソーゲームとはなにかって?
    すなわち、主人公「桂木千駿」を巡っての、一見穏やかだけど危険な男子の幼馴染「河村和奏」と、強気だけど健気で世話焼き女子の「里中環奈」。ふたりが主人公をどっちの性別に引き寄せるかという駆け引きです。予期せぬ第三極、河村の元カノのアブない女子「長谷川藍香」が乱入したことで壊されちゃいましたけど。

    そう、ここから話がどう展開していくんだろうという場面で長谷川がもたらしたのは、ハイペース、言い換えれば乱暴といえる急転直下な展開でした。それは早期のうちに連載を畳むことを求められたためか。
    は? いきなり貞操奪われるの? 駆け引きとか、水入りなしで? なんか周囲の反応も軽くない? 
    その後、主人公の反応が重い方に傾いているのでしっかり奪われてるんだなってわかりましたけど。

    長谷川の本来のプロットにおける役割なんですが、事態を動かすための起爆剤だったと予想します。本来ならば主人公に対して双方打つ手がなくなり、千日手の膠着状態に陥ったタイミングで投入されたのでしょう。

    が、実際の長谷川の動きを喩えるならば、ダムの決壊点を爆破し、その勢いのままに一気に話を本来想定される漂着点にまで押し流すという感じでした。実に乱暴に運用される形になったわけです。
    私自身が連載でリアルタイムで追っていたこともあり、長谷川に半ば呆然とさせられたと記憶しています。

    そして、長谷川は一方的にシャレになってない理不尽を主人公に対して押し付けたあと、特に報いを受けるわけでもありません。しれっとした悪気のない態度のまま物語から去っていきました。
    彼女の行いが報いを受けずに、うやむやにしてしまえる作風にも好みは分かれそうですね。

    もっとも、私はアリだと思いましたが。トリックスターとしてのポテンシャルを感じましたし。
    一見さらっとしているくせに、ドロリとした情念が渦巻くこの漫画らしいともいえましたから。
    長谷川が第三極として存在感を示せた反面、河村が当て馬に終わったところは個人的に「否」寄りですけど。

    以上の通り、読者目線からすれば露骨な打ち切りを食らったことで発生したマイナス点がどこまで評価に響くかといったところでしょうか。
    運命の辻褄合わせ的な意味合いはあるんでしょうが、ラストのトラックはどうかなあって感じましたし。
    最後、男の子あらため女の子が走って、女の子に追いつくところで終わっても良かったと思うんです。

    主人公が成長する動機付けの決定打としての、臨死体験につなげるために必要かと言えばそうなんですけど。
    ちなみにこの際、世界観についての補足説明が物語の立役者である女神様の口からされています。
    けれど断片的なものであり、全体像の類推はできても確固たる答えは出せないといったところでしょうか。
    その辺の説明はビターだけど一応のハッピーエンドを彩るうえでは不要として廃されたのかもしれません。

    消えた可能性の問題なんて、深堀りすると嫌な感じしかしませんし、ページも圧迫するので匂わす程度で十分と言えば十分です。SF的な要素について掘り下げに多少は期待していなかったと言えばウソになりますが。

    あくまで主人公一個人の心の問題に帰結させ、ありえた可能性を追体験させるという形でまとめ切ったのはいいと思います。ミニマムに話が終わってしまった感も否めないとはいっても、風呂敷は一応たためてます。

    よって、ページ数から逆算すればきっと作者はベストを尽くされた。
    ゆえに、及第点は差し上げたいと考える所存です。それに、一巻にも増して扇情的な表紙絵は好きでした。
    じめっとして、絡めとられるような不快感を、喪失感はあるけれどからっとした最終回の感触で上書きしてくる感じも好きでした。

    理想を言えば結末は同じでもいいので一巻からの延長線で、円満に着地させる路線こそ見てみたかったんですけどね。それはそれで、結末に修正を加えてきた可能性があるので悩ましいところですが。

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