- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784059041474
作品紹介・あらすじ
成長著しい若手社員・辻沢朋之を見守る自分の目に、親愛以上の思いが生まれたことを自覚してしまった阿久津敬吾。妻もあり地位も築き、中年の域に足を踏み入れた男が初めて知る狂おしい愛に、朋之もまた…。表題作「殉愛」に加え、2人の男の10年にわたる愛執の果てを描く「メビウスの環」も収録。ストーリー・テラー綺月陣の魅力の原点が詰まった幻の作品集。
感想・レビュー・書評
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表題作「殉愛」と「メビウスの環」の中編2作収録。1990年代の作品の再録ということで、BLというよりJuneでした。June時代にはこういう悲劇に終わるお話が多かったですよね。表題作は、既婚者なのに同性の部下にどうしようもなく惹かれてしまう中年会社員の話。もう1作は、惚れられている相手を利用して成り上がろうとする医者が大きなしっぺ返しを受けつつも真の愛に気づく話。結末が気になってページをめくらずにはいられませんでした。悲劇でありながらも、愛を確かに感じられる終わり方が素晴らしかったです。<s>
タイトルと本の裏表紙のあらすじを読んだあたりで
ラブラブ幸せ!なお話ではないのだろうなとは思っておりましたが、
想像以上に報われないお話でした。
性別はどうであれ浮気や不倫にあてはまってしまうので
報われてはいけないものではあるのですが、
基本的にシリアス目であっても最終的にはハッピーエンドな
お話が大半なのでラストが衝撃的でした。
最近ではあまり見ない形のお話でしたが、
表題作はすんなり読む事が出来ました。
同時収録の作品もやはり幸せなお話ではなく、
どちらかといえばBLよりも軽めのサスペンス小説を読んでいる様な、
そんな感じのするお話でした。
最初は状況がつかめなくて、少し読むのに苦労してしまいました。
読解力が欲しい。
ネタばれとなりそうなのであまり深くは書けませんがどちらも死ネタ、
そして奥さんであったり妹さんであったりと、
女性が凄くキーポイントになっている一冊だなと思いました。
特に表題作の攻めの奥さんが凄く良い意味で古風な奥様で
個人的には凄く好きなキャラクターでした。
その分ラストの衝撃も大きかったのですが。
そして表題は最初から最後まで攻め視点で話が進んでいくお話でした。
多分初めて読んだのではないかなと思います。
慣れるまでに多少時間がかかりましたが、凄く新鮮でした。 <t>詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作「殉愛」と「メビウスの環」の2作品収録。
えーっと…どちらもタヒネタです^^;
苦手な方はご注意を
どちらの作品も重い…
究極愛と言うべきかな
タヒネタだけど涙腺崩壊とはならず…^^;
BLではなく JUNE ですね。
メビウスの環 はサスペンス小説で
先が気になって気になって読む手が止まらなかった -
読み終えたあと、涙が止まりませんでした。言葉に尽くせないほど悲惨で救いのない物語なのに、心が嘘のように浄化されるのはどうしてだろう。綺月作品に嵌まると中毒になって抜けられない。。極めて依存性の高い毒だと思う。献身、無償の愛。そんな言葉でも言い足りないものがある。シェークスピアのロミジュリみたく、あまりにも身勝手で自分たちのことしか見えてないふたりなのに、最後まで彼らが「愛しくて」たまりませんでした。この本は村上H氏の「風の歌を聴け」に次ぐ、私の愛読書になりそうです。
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ケナゲ受け様のために、攻め様家族を捨てます。 2作品入っているのですが、死ネタですので、お好きでない方は避けた方がよいかも。
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うっかり踏んでしまいましたよ。BADで痛い。
寝る前に読んで綺月さんには時々うなされる。上手いからだと思いますけど。
体力のあるときにお勧め。
2本目は別なお話です。 -
1998年雑誌掲載の2編収録。どちらも、今のBLではNGになりそうな世界。2編とも鬱展開であり、重い余韻の残るエンドですが、こういったお話も好きです。たまに読むならば、という条件付きで(笑)『殉愛』…20歳も年下の男に溺れていくオヤジが、切なくもあり哀れでもあった。純愛ゆえの殉愛だったかと。『メビウスの環』…捩れて閉じた環を巡る攻と受、究極の執着が産んだ結末といった印象。両作品ともに読後感は重いけれど、どちらの話も愛に殉じているので、バッドエンドではないとも思える。読み応えもあり、満足でした!
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究極愛の世界が2編収録。衝撃作です。ハンパなく痛い話ですが、押し付けがましくただ痛いわけじゃありません。どちらのcpも精神面での愛の成就がしっかりあります。
「殉愛」は、長年連れ添った妻もいる43歳の部長が、ふとしたきっかけから部下の青年と愛し合うようにあってしまうのですが、その部下である朋之はもうすぐ結婚する身で、しかも上司である阿久津が仲人をつとめることに…という話。そして、朋之が結婚しても関係を密かに続け、妻に浮気を疑われても止めずに、挙句の果てに友之を単身赴任させ二人きりの世界を構築しようとします。もうドロドロのBL版W不倫!
両方の妻が登場して、阿久津側は不妊、朋之側は懐妊で阿久津の妻が浮気相手を誤解するという、お昼のメロドラマもびっくりなストーリー展開です。
男同士で忍びあう恋を、ここまで現実的に泥臭く描いたものを読んだのは初めてです。阿久津が朋之にどんどん溺れていって、エスカレートしていく気持も、ごくふつうのリーマンだった朋之が阿久津との逢瀬を重ねるごとに淫乱になっていく様も、とても切なくて衝撃的。恋愛で人生が一変して、どんどん深みにはまっていく過程がリアルです。この二人を馬鹿だと一笑するわけにはいきません。愛が激しすぎて、最後はBEですが彼らの姿には納得がいきます。
究極愛といえば「メビウスの環」の方がさらに象徴的です。
不幸を恨み、貧乏を恨み、医者になった雄一と、生まれながらにして医者の家庭に育った秋生の10年愛はいびつで、残酷です。野望に燃える雄一は秋生を捨てて、彼の妹夏実と結婚しようと画策します。でも、雄一が目覚めるとベッドの隣で夏実が遺体になっていて、覚えのない殺人事件の犯人となってしまいます。
雄一は一番近くにあった愛に気付くことなく、大切なものをないがしろにしてしまったた罪を犯しています。最後の最後の土壇場でそれを自覚する雄一と、報われない愛に全てを捧げた秋生に涙です。
愛と憎しみは表裏一体、まさにメビウスの環のようで深く考えさせられる話です。
2編とも驚愕させられるしBEで読後の疲労感は相当です。しかし、シビアな究極愛、男同士の執着愛がこれほど胸に迫る作品はBLでは珍しいと思うので、死にネタBE敬遠派の方にも一読をおすすめします。