秋の終りの旅 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061313286

感想・レビュー・書評

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  • 性愛小説を中心に、著者の初期作品五編を収録しています。

    「秋の終りの旅」は、ガンを患い半年ももたないとされた39歳の稲村幸造と、学生時代からの友人である辻本・宗任の三人が、北海道旅行に出かける話です。みずからの病状を知らない稲村を思いやる辻本と宗任の二人は、今度の旅行が最後になるかもしれない彼をいたわります。ところが、彼らの運転する車が事故を起こしてしまい、稲村ではなく宗任が先に命を落とすことになります。辻本は、そんな両者の運命の皮肉を間近に見つめながら、ままならぬ人の命に思いをめぐらせます。

    「流氷の原」は、槇村末子が岡富信哉と再会する話です。末子は岡富に好意をいだいていましたが、彼が好きだったのは末子ではなく、彼女の親友の宮川裕子でした。ところが、十年前に末子とともに北海道旅行に出かけた裕子は、流氷のただよう海に落ちて命を落としてしまいます。彼女は、かつての岡富への想いと、自分が裕子を死なせてしまったのではないかという罪の意識との板挟みとなります。

    「玉虫厨子」は、上原佐久子という女性が、かつて夫の同僚だった汐見という狷介な男と久しぶりに再会し、すっかり消え失せたと思っていた情熱をよみがえらせる話です。「奈落の底」は、性に対して貪欲な宮村あき子という女性に惚れた一人の男が、彼女が子宮の全摘手術を受けていたと知り、女の性の底知れなさに身震いする話です。

    「ガラスの結晶」は、堕胎手術を受けた律子という女性が、医者に頼んで胎児の遺体を引きとる話です。子どもの父親は、家柄のちがいのために律子と結婚することができず、彼女に手術を受けさせて他の女性と結婚することになります。そんな彼のもとに、律子は子どもの遺体を送ることを思いつきます。

    とくに優れた作品集とも思えませんが、後に『失楽園』や『愛の流刑地』といった作品を刊行することになる著者の性愛観の元型が示されており、そういう意味では興味深く読みました。

  • 5つの短編集。

    表題の話が、やけに印象的な最後でした。
    そういうつもりではなかった。
    けれど、本当の事を言うわけにもいかない…ジレンマ。

    別の意味で怖い最後が、最期の話。
    そんな関係だから、とそこで辞めておけばよかったのに
    双方ずるずるとしていたからこそ…。
    いや、さっさと立場をはっきりさせておかなかった
    男がいけないのか?
    どちらにしろ、そんなものが届いた日には
    驚きと叫びしかないかと。

  • 渡辺淳一の30年も前に書かれた本。
    5編の短篇集だが性描写も少なく、高校時代の同級生の友情が「秋の終わりの旅」に時代を懐かしく思い出させてくれる。
    自宅の本棚にあった本だが昔の本を読み直すのもなかなかいいもんだ。

  • 久しぶりの渡辺淳一。
    最後の、ガラスの結晶が
    プチ怖かった・・・。
    女の狂気。

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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