- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061385993
作品紹介・あらすじ
90年代ポップ・ミュージックの「始祖」、ジャネットの「凄み」とは
90年代以降のポップ・ミュージックを革新し、シーンに影響を与えた最大の立役者とは誰か? それはジャネット・ジャクソンである。本書は、その成功の巨大さ、自然さゆえに、もはや誰もそれを「ジャネット的」と認識できないほどの彼女の音楽的革命を、歴史的事実に基づきながら丹念に解き明かす。さらにジャネットのライバル、マドンナ、ホイットニーなど希代の歌姫(ディーバ)たちの生き方も対比列伝的に描く。音楽家として一線で活躍を続けてきた著者が「洋楽著書シリーズ」の最終作と宣言する本作は、読み終えたすべての方々に新たなる音楽世界と生きるビジョンを贈ることを約束する。
感想・レビュー・書評
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“ファンタジーからリアルへ”
たしかに80'sは〈We Are The World〉をはさんで、ヒップホップの台頭もあり、リアルに転向した
85年の三大イベントのひとつ〈サン・シティ〉は知らなかった…
ジャネット ジャクソンの功績は過小評価されてた感がある、スーパーボウルの“ポロリ”がお粗末すぎた
偉大すぎる兄マイケルに導かれ、ものすごくシャイでキュートな印象だったけど、『janet.』でその殻を破りR&Bディーバに
マイケル亡き現在は、彼の意志を継ぐ正統な継承者へ
〈We Are The World〉に呼ばれなかった顛末からプリンスのミネアポリス・サウンドに接近、その後のジャネットの金字塔は誰もが知るところ
マイケルもジャネットに影響されたんだ
タイトルに「〜80'sディーバたち」とあるけれど、マドンナとホイットニーだけってのは寂しい…わかるけど詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【例えば、食材で言うなればマイケルやプリンスの個性は「カレーのルー」とか、「キムチ」に似ていて、それを入れてしまうと何もかもその味になってしまう。】
【マイケルやプリンスを先ほど「カレーのルー」や、「キムチ」だと喩えました。それで言えばジャネットは「昆布出汁」を発明したような人ではないか、と僕は思うのです。どんな料理にも入っているけれど、わざわざその出汁の風味について誰も指摘したり感じたりしない。少なくともカレーやキムチほどには……。しかし、もしも出汁がなければ、世の中の料理はまさに「味気ない」ものになっているはず。ジャネットは、驚くべき大きな味覚変革を86年以降のポップ・ミュージック界にもたらしました。】
と、ジャネットジャクソンのすごさについて論じていくのだが、本当に面白かった。洋楽についてさっぱり知らなくても、楽しんで読める。安室奈美恵が影響ってのを読んで、Rhythm NationのPVみたら、ほんとだなあと感心した。宇多田はどんな影響の仕方なのだろうか。安室大好きな男友達がいたのだけれど、洋楽にも確かにめっちゃ詳しかった。
あと、ホイットニーヒューストンとその娘の悲劇。マドンナの常識に縛られない生き方。シンディーローパーの親日っぷり。ボビーブラウンのモテっぷりというよりも、今ものうのうと生きている鬼畜っぷりがすごい。ジャネットが最初の男から学んで「ボビーとは結婚するのはまずい」と避けたのは賢い選択だった。日本のR&Bしかしらないので、「小学校や中学校や高校のクラスに一人はいた、海外アーティストにあこがれる女の子が聴いていた女性」「安室とか知念里奈とかスピードにいた黒人みたいな女性を妙に応援していたクラスの男子がたまに話題にだしていたアーティスト」の正体がやっとわかった気がする。 -
Janet のエッセンスが出汁のように
当たり前にあるということ...私も気がつかなかった。
All For You のイントロを
真似しながら笑い転げた中学校の昼休み、
今思い出しても微笑ましいなあ。 -
《モリッシーとマーが、BBCラジオ国営第一放送を聞いていると、ディスクジョッキーがチェルノブイリ原発事故の大ニュースを伝えた。そのすぐ後に彼がワム!の能天気なポップ・チューン〈アイム・ユア・マン〉を選曲したことにモリッシーとマーは落胆したというのだ。チェルノブイリが大爆発した後に、何くわぬ顔で呑気にワム!かよ、と……。彼らは英国のメイン・ストリームの音楽の軽薄さにあきれ果て、その憤慨こそが〈PANIC〉創作の発端となったと説明したのだ。この逸話を聞き、ワム!にあこがれる若者が一人でもいるだろうか。
これこそ、まさに「フィクションから、ノンフィクションへ」。「ファンタジーから、リアルへ」という「1986年のルール改正」が如実に現れた事件だと思う。》(p.90-91)
《1980年代後半から今に至るまでの基本形である「歌って踊って考えて発信する」女性エンターティナーの姿は《コントロール》で初めて確立された。ジャネットこそが「女性アイドル」を「アーティスト」にしたのだ。ポーラ・アブドゥル、TLC、ビヨンセ(ディスティニーズ・チャイルド)、リアーナ、ブリトニー・スピアーズなど、ヒップホップ的感覚を下敷きにした女性メガスターは、意外かもしれないがジャネット以前には見当たらないのだ。あたかも1960年代初頭、イギリスから来たビートルズが、オリジナル曲を作って演奏する「ロック・バンド」のフォルムによってそれまでのアメリカ芸能界的な「アイドル」を駆逐したように。20歳のジャネットと、20代後半のジャム&ルイスの覚醒こそが「私にも出来る」「俺にも!」という夢を同世代、次世代に与えたのだ。そして「アイドル概念」の腐食と崩壊は、海を越えて日本にも伝播する。アメリカのトップ「アイドル」であるジャネットが楽曲作りにコミットしているのに、我々は与えてもらうだけで良いのか、と。「フィクションから、ノンフィクションへ」「ファンタジーから、リアルへ」という「1986年のルール改正」は少し遅れて日本のアイドル界にも及ぶ。バンドブームと、女性アイドルの「アーティスト」化。1989年9月28日に「ザ・ベストテン」が終了するなど、すべての時代の空気の変化は「ファンタジーから、リアルへ」という言葉で説明できる。》(p.154-155) -
1985年1月28日の「ウィアーザワールド」に声がかからなかったジャネットとホイットニー・ヒューストン、マドンナの3名。彼らが参加しなかったことがこの時点でまだブレイクしていなかったという理由そのものなのだが、その後の彼らの人生に大きく影響していく。とりわけジャネットが単にジャクソン5(就中マイケル)の妹というだけでなく、ミネアポリス・サウンドのプリンスからも間接的に影響を受けたという彼女の存在の大きさを改めて痛感する。兄マイケルにまで影響を与える大きな存在になっていった80~90年代。それは日本では安室奈美恵、宇多田ヒカルへの影響でもあった。
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20161225
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一気読み。相変わらず同世代の西寺郷太の洋楽観にはドはまり。さあ、ジャネットジャクソン、ホイットニーヒューストン、マドンナを聴きまくろう。